求められていないことは言わない

安全基地に求められる応答性とは、「求められたら応える」ということを基本にする。

ということは、それは同時に「求められていないことには応えない」ということでもある。

愛着関係が成立する最初のステップとして重要なのは、授乳を介した母親との結びつきである。

その場合も、母親が自分のペースで、そろそろ時間が来たからと、子どもに母乳やミルクを与えるという方法は、安定した愛着を育むのには好ましくない。

赤ちゃんがお腹を空かせ、自分からオッパイやミルクをねだったときに、与えるというのが望ましいのである。

求めたら応える、しかし、求めていないのに、こちらから勝手に与えることは慎む。

そうすることによって、赤ちゃんは自分の欲求やペースに従って生活することができ、そうした状況を与えてくれる存在に、安心や信頼をもちやすい。

ところが、まだお腹が空いていないのに、無理に飲ませようとしたり、求めてもなかなか与えてもらえなかったりすると、世話をしてくれる存在に対して、違和感や不快さを感じてしまう。

それが、積み重なると、外界や他者全般に対する違和感や不愉快につながり、理由もなく生き辛さを抱えてしまうことにもなる。

求められていない時は与えない、言わないという原則は、安全基地となる上で、とても大切である。

自分を、良い親、献身的な支え手と思っている人に起きがちな過ちは、この原則を破ってしまうことである。

求められていないのに、口出ししたり、与えたりすることは、本人の主体性を侵害することで、安全感を損なうことになるだけでなく、本人が主体的に行動できるように成長することを妨げる。

結局、悪い存在を生み、自立を邪魔してしまうのである。

子どもは、そんな親に依存しつつ、自分をそんなふうにしてしまった親に対して、鬱陶しさや怒りを覚えるようになる。

反発しているのに、依存しないとやっていけないという矛盾した状況が、さらに本人を苛立たせ、周囲に対しては攻撃的や暴力にもなり、自分自身に対しては自己嫌悪や自己否定、そして、そこからくる落ち込みになる。

※参考文献:愛着障害の克服 「愛着アプローチ」で、人は変われる 岡田尊司著