まず、主張行動を攻撃的行動と区別することを注意します。

じっさいにはしばしば攻撃的なニュアンスを含まざるをえないこともたしかです。

こうした場合に攻撃的ニュアンスを避ける一つの方法は、主語をあなた(You)ではなく(I)で語る方法です。

主語を「あなた」とすると、「あなたがそうしたから」とか「もともとはあなたが」などと、相手を責めることになります。

これでは、相手の人がたとえ自分の非を認めていても、素直には受け入れられなくなります。

これに対し、「私はいまとてもつらい気持ち」とか「私がそうしたのは、×××と考えてのことだったの」などと、私を主語にすると、相手を責めるニュアンスがなくなります。

むしろ、拒絶されて自分が傷つく可能性があるのに内面を語ってくれたということで、相手は誠実さを感じます。

そのため相手も冷静に自分を反省し、有効なコミュニケーションが成立する可能性が高くなります。

なにか行き違いが生じると、お互いによそよそしい態度になります。

自分の行動は状況のせいにして、他の人の行動は悪意に帰しやすいというのは、心理学の帰属理論における法則です。

ですから、こうした場合、コミュニケーションしないと、どんどん疑心暗鬼がつのっていきやすいのです。

こうしたときこそ、心を閉ざすのではなく、勇気を持って主語をI(私)にして語りかけることです。

次のような事例を考えてみましょう。

Aさんが友達のBさんと話していたら、他の友達が話しに加わってきました。

そのうちに、Bさんは「私、携帯電話買ったの。電話して」と他の友達に電話番号のメモを渡しました。

Aさんは、「自分と話している時は、携帯電話買ったなんて言わなかったのに」と面白くありません。

その上、Aさんにはメモを渡してくれません。

Aさんは、「Bさんは自分には電話番号を教えたくないのだ。電話して欲しくないのだ」と思ってしまいます。

こうしたときは、Aさんは素直に「私も電話したい。私にも教えて」と言えばよいのです。

すると、だいたいは「あら、ごめん。まだ教えてなかったっけ」と、なんでもないことで終わります。

主張行動ができない原因はいろいろ考えられますが、一般に次のような否定的な心理傾向にとらわれていることが影響しています。

1.低い自己価値観

自分に価値がないと感じることです。

すなわち、自分を低く評価してしまう傾向です。

自分に価値を実感できないので、自分の考えを相手が聞いてくれるとは思えません。

自分の感情、願い、考えなどは相手に伝えるほどの価値がないと思ってしまうのです。

また、自分に価値がないので、相手に頼んだり、依存したりするのは「申し訳ない」と思ってしまったり、負債を背負う感じになってしまうのです。

2.問題を過大視する傾向

一人で思い悩んでいると、問題がどんどん深刻化して、悩みが膨らんでいきます。

そのために、他の人にとって重要でないことが、さも重要であるかのように思い込んでしまいます。

たとえば、電車のなかで座っている人が座席に荷物を置いているために座れないとき、「(荷物をどけて)座らせて下さい」と言うと、相手がひどく感情を害するだろうと思ってしまいます。

相手はうっかりそのことに気が回らなかっただけなのに。

あるいは、店員がお釣りを間違えたときに、「間違っていますよ」と言ってしまえば、「あ、ごめんなさい」で簡単にすむのに、ついつい深刻なやりとりになるのでは、と先回りして考えてしまって言いそびれてしまうのです。

先の携帯電話の例でも、Bさんは電話番号を教えたと思い込んでうっかりしているだけなのに、Aさんは意図的に教えてくれないと誤解し、事態を深刻にしてしまっているのです。

3.嫌われるのがこわい

自分を主張できないのは、相手に嫌われるのがこわいという心理も影響します。

相手を傷つけるのではないかと心配するのも、実は突き詰めていくと、自分が嫌われることをおそれているのです。

自分を主張したら嫌われるのではないかというおそれは、無力感と深い人間不信が背後にあります。

人はそう簡単に自分の周りの人を嫌わないものです。

周りの大部分の人は優しく信頼に値する人達です。

そう信じて、相手のふところに飛び込んでいくことです。

自分の価値をもう一度、実感してみてください。

そのために、誉め言葉を素直に受け入れてみましょう。

「私なんか」などと謙遜せずに、「ありがとう」と言う事です。

「すみません」という言葉をできるだけ言わない努力をしてみることです。

こうした細かいことでも、自分に価値があると感じることができるはずです。

※参考文献:人と接するのがつらい 人間関係の自我心理学 根本橘夫著