イラッとすることとイライラすることは異なる

私たちは生活上のいろいろな場面でイラッとすることがあります。

例えば、コンサートに聴き入っているときに誰かの携帯が鳴ったりすると、「どうして電源を切っておかないんだ」とイラッとしますね。

ここでイラッとするのは、人間としてごく当たり前のことです。

「イラッとする」のは、強い違和感を覚えるということ。

本来あるべき状態と違うことが起こると、違和感を覚えますから、イラッとするのです。

これは、人間が生き物である以上、当然の現象で、心身を守るために備わった防御本能とも言えるものです。

「本来あるべき状態と違うこと」にセンサーが働かなければ、危険から身を守ることができないからです。

そのような状況でイラッとするのは、何かを踏んづけたときに「痛い!」と感じるのと同じこと。

本来あるべき状態と違うことが起こったときに、何のセンサーも働かなければ、心身を守ることができないのです。

こう考えてみると、イラッとするのは、ごく原始的な感情だということがわかります。

「何かよくないことが起こっているかもしれない」と知らせてくる、身体に備わったセンサーなのです。

それ自体に人格を疑われるような意味はなく、単なる原始的な装置に過ぎません。

ですから、イラッとしたら、何が起こっているのかを確認し、何ともなければ安心し、改善が必要なことを見つけたら改善すればよいだけなのです。

イライラすることは、自分の中から生み出している感情

「イラッとする」のは状況に対する原始的なセンサーなのですが、「イライラする」ということになると話は違います。

イライラしているときというのは、自分の中で、その状況を何度も思い出したり、「どうしてあんなことが起こったんだ」と繰り返し考えたりしているものです。

例えば、コンサート中、誰かの携帯に同じようにイラッとした人であっても、「まったく仕方がないなあ」「まあ本人が誰よりも赤面しているだろう」と思ってすぐにその感情を手放す人もいます。

一方、「コンサート中に携帯の電源を切るくらい、常識中の常識だろう」という思いをずっと抱え続けて、「いったいどういう神経をしているんだ」「大切なコンサートを台無しにされた」「あそこで携帯さえ鳴らなければ」と、いつまでもイライラし続ける、という人もいるのです。

後者は、「イライラの生産を自ら続けている」と言えます。

つまり、簡単に言えば「イラッとする」のは外からの刺激に対して起こる自動的な反応(「外から来る」と言ってもよいもの)、「イライラするのは内から生み出される感情、ということになります。

「イラッとする」ところまでは、人間が生き物である限り100%は手放せない反応ですし、生き延びていくための反射神経のようなものですから、無理に手放す必要もないでしょう。

しかし、「イライラする」ことについては、選択の余地があります。

イライラにつながる思考を手放す、というもう一つの選択肢があるのです。

ここがポイントです。

イライラは我慢すると膨張してしまう

そうかわかった、ではイラッとしたあとにイライラしないように我慢すればよいのだな、と思った人がいたら、それはやめてください。

イライラは、我慢すると膨張する感情なのです。

小さなイライラであれば、我慢しているうちに忘れてしまったり、他のことに注意が移って気持ちが切り替わったりすることもあるでしょう。

でも、それ以上のイライラについては、我慢によって簡単にコントロールできるどころか、かえって悪化するところに特徴があるのです。

ポイント:「イラッとする」を「イライラする」に変えるかどうかは自分の思考

イライラし続けるとイラッとしやすくなる

「イラッとする」のは人間に自然に備わった反応と言えるのですが、「イライラしている人はイラッとしやすい」という特徴もあります。

なぜそうなるのかと言うと、イライラしてばかりいると「イラッとする」センサーも敏感になってくるからです。

「本来あるべき状態」と違うことが起こるとイラッとするわけですが、いつもイライラしていると、「本来あるべき状態」の幅がだんだんと狭くなってくるのです。

つまり、現実に対する要求水準が高くなってくる、とも言えるでしょう。

いつもイライラしているということは、「現実はこうあるべきではない」という思いをいつも抱えていること。

すると、いつも抱えている「現実はこうあるべきではない」という思いに底上げされて、ちょっとしたことでも「これもおかしい」「まったく、理不尽なことばかり」と感じやすくなるのです。

イライラしていないときであれば「イラッとする」センサーが働かない程度のことであっても、イライラして「現実はこうあるべきではない」という思いを抱えているときには、何を見ても、「本来あるべき状態」と違う、という感覚が働きやすくなります。

つまり、「イラッとするのは確かに原始的な反応なのですが、そのセンサーの「基本設定がどこにセットされているかによって、「イラッとする」頻度や度合いが変わってくると言えます。

いくら原始的な防御反応とは言え、危険なジャングルでサバイバル生活をしているわけではないのですから、「イラッとする」頻度もできるだけ減らしたいものです。

「イライラ」を手放すことによって、「イラッとする」ことも必要最低限に減らしていくことができます。

ポイント:イライラし続けると、「イラッとする」センサーも敏感になる。