物事への対処は、グズグズ引き延ばすほどストレスが増大していきます。

あれこれと家事がたまってしまうと気が重くなるし、仕事が進んでいないと会社に行くのがつらくなります。

グズグズするほどつらくなるのは、時間がたてばそれだけ内容の完成度が求められるからです。

メールなど返信が必要な場合には、遅れたことで相手が気分を害しているのではないかという心配が生じるからです。

さらに、「自分は逃げている」と、自己嫌悪の気持ちも心を重くします。

このように自分で生み出した苦痛によって、物事が進まない状態がグズなのです。

グズを抜け出すためには、自分で決意を固めて、とにかく実行するしかありません。

そのために役立つ、いくつかのコツを紹介します。

「とりあえず」をモットーにする

グズには怠け者のグズと不安性のグズがあります。

人間関係がつらい人は、不安性のグズである場合が圧倒的です。

あれこれ考えてしまうことで実行できず、グズになってしまうのです。

ですから「とりあえず」をモットーにして、とにかく実行してしまうことです。

細かい内容や水準はさておき、迅速にすませることです。

たとえば、メールを受け取ったとき、いろいろ考えてしまうとなかなか返事ができません。

そんなとき、「メール受け取りました。ありがとうございます」と、とりあえず返事をしておくことです。

内容のある返事を求められている場合は、「検討のため少し時間を下さい」とつけ加えておけば、相手の気持ちは満足します。

内容についての返事が多少遅れても、さほど気にせず待っていてくれます。

上司に気分を害するような報告をしなければならないときなど、とくにストレスフルなものです。

こうしたときも、まずい事態が起きているという報告だけでも「とりあえず」済ませてしまうことです。

そうすれば、その後の責任を自分一人で全面的に負うという事態を免れることができます。

うまくいけば上司がアドバイスしてくれるかもしれません。

不安性のグズの人は、完璧主義の罠にはまっています。

他の人が自分に対して完璧な水準を求めていると勘違いして、立ち往生しているのです。

でも、完璧などありえないし、他の人はそれを求めてはいません。

ですから、「80対20の法則」を念頭に置いて、「とりあえず」をモットーに行動することです。

この法則を、全体の仕事の80%は費やす時間の20%ほどで達成されてしまうが、残り20%を仕上げるには全体の80%もの時間がかかってしまうと、解釈するのです。

最初の20%でほとんど仕上がった、と判断して、どんどん処理していくことです。

とにかく、あれこれ考えているときが一番ストレス。

思い切って「とりあえず」の精神で処理してしまうことです。

行動から入る

グズグズ延ばしから抜け出るコツの一つは、行動から入ることです。

最初の一歩の行動を起こすことが大事で、最初の一歩が出れば、慣性の法則とでもいうべきものが働いて、二歩目、三歩目が比較的楽になります。

これは、車を押して動かすときに、最初はとても重くても、ちょっと動けば、後はどんどんと楽に動くようになるのと同じです。

ある人は電話が苦手で、ベルが鳴っても自分で受話器をとることはほとんどありません。

電話をかけるのはもっと苦手。

それで、用件がたまってしまうことがあります。

そうしたとき、とにかく思い切って一カ所かけると、次をかけるのがそれほど苦痛でなくなり、三件目はほとんど苦もなくかけられます。

ある人は、執筆がどうしても気乗りしない時があります。

さぼりたくなることがあります。

そんなときも、とにかくパソコンを立ち上げ、キーをたたき始めます。

最初は遅々として進みませんが、いつのまにか執筆に集中しています。

とにかく最初の一歩の行動を起こしてしまうことです。

各個撃破で処理する

いろいろとすべきことがたまってしまって気が重い。

そのために、なにも手がつかずグズになっている。

こんなとき、各個撃破戦術でいくと、最初の一歩が踏み出しやすくなります。

各個撃破とは、当面の対象を一つに限定して、次々と処理していく方法です。

このためには、次のような手順をとります。

1.やらなければならないことを付箋一枚につき一つずつ書きます。

2.自分で対処すべきものを選択します。

頭のなかでは「やらなければならない」と思い込んでいますが、その中には、「やらなくても問題ない」ものが含まれていることがあります。

それらは、「実行しない」と決断して、その付箋紙を破ってしまいます。

また、他の人に頼めば済むことも含まれているかもしれません。

それらは、しかるべき人に速やかに依頼します。

こうして、自分がどうしてもやらなければならないことだけを残します。

3.簡単に済むことを上にして、一つの山に重ねてしまいます。

やるべきことを書いた付箋紙を机の上やボードに広げて貼っている人を見かけますが、それだと「いろいろとしなければならないな」と、かえって気持ちが重くなってしまいます。

一つの山にしてしまえば、当面「やるべきことは一つ」なので取り組もうとする意欲が湧いてきます。

4.上からどんどん処理していきます。

簡単にできることを済ませてしまえば、加速度がついて、その勢いに乗って気が重いことにも取り組みやすくなります。

場合によっては、「ただ一つやるとしたら、何をするのが一番有効か」と考えて、それに取り組むことを最初の一歩とする方法もあります。

「これを処理してしまえば、気持ちが楽になる」というものを最初に処理してしまうのです。

ルーティン化する

ベルトコンベアー式の流れ作業のように製品ができたらおしまいというのではなく、現代の多くの仕事には際限がありません。

「これで完了」と自分で決めないと、その仕事をいつまでもずるずると引っ張り続けることになります。

ところで、仕事は大きく分けて、二つのタイプがあります。

第一のタイプ:大事ではないけれども、速やかに処理しなければならないこと

第二のタイプ:緊急性はないが大事なこと

第一のタイプの仕事の典型は、メールへの返信、提出書類の記入、出張報告書の作成などです。

これらに手をつけると、それだけで一日の大半を費やしてしまい、本来力を入れるべき第二のタイプの仕事を後回しにしてしまうことになります。

これを防ぐためには、時間を決めておき、ルーティン化することです。

たとえば、メールのチェックと返信は昼食後の15分以内、その他の雑事は終業直前の20分間とするなどです。

これによって、緊張ではなくとも本来力を入れるべき大事な仕事により多くの時間と精力を使うことができます。

小説家や芸術家はインスピレーションが湧いてくるのを待って、それが得られたときに一気に仕事をするというイメージがあります。

しかし、実態は違っていて、多くの小説家や芸術家はルーティン化して仕事をこなしているそうです。

たとえば、直木賞受賞作家で日本推理作家協会理事長も務めた逢坂剛氏は、会社員時代と同様に朝仕事場に出勤し、定刻まで仕事をするということです。

ヘミングウェイは、平日には毎朝四時間を執筆に当てていたといいます。

時間を決めてルーティン化することで、「速やかな処理を要する大事でない」仕事に振り回されず、本来の重要な仕事に精力を集中させることができます。

物事を処理する三つの方法

処理しなければならないことが、手に余るほど大きな問題に思われるときには、いっそうグズの虫に悩まされます。

そうした大きな問題は細分化することが一つのコツです。

小さな課題に分ければ、容易に処理できそうな気がしてきます。

ところで、物事の処理の仕方には、三タイプがあります。

<サラミソーセージ法>

これは上記に述べたように、問題を小さく区切って、一つずつ処理していくやり方です。

細分化して、それぞれを実行するための期限を決め、スケジュールを立てます。

このスケジュールを手帳なり、カレンダーに書き込むことで自分を駆り立てます。

<スイスチーズ法>

これはもともと時間管理コンサルタントのアラン・ラーキンが時間管理術として提唱したものです。

スイスチーズとは、あちこちにボコボコと穴が開いているチーズのことです。

この方法は、その仕事に本格的に取り組めなくても、5分とか10分などちょっとした空き時間に、できることをできるときに進めておくというものです。

この方式で本を書いている人もいるそうです。

とにかく書ける部分をどんどん書いていき、さいごに全体をまとめるというのです。

ですから、「あとがき」が早々に仕上がっているというようなこともあるそうです。

<チキンレッグ法>

オーブンで焼いたチキンのモモ肉に大口でかぶりつく、というイメージです。

こまごまとやらず、ドカッと集中的にまとめて処理する方法です。

このやり方をとって効率的に仕事をこなしている人がいます。

プレゼンの原稿など、締め切りぎりぎりまで手をつけず、直前になって徹夜をしてでも仕上げてしまいます。

切羽詰まっているときの方がエネルギーが湧いて、効率的に進められるのです。

もっぱらこの方法で対処している人のなかに、自分を「グズ」だと思っている人がいます。

そうではなく、自分にあった方法でやればよいのです。

課題の性質によっては、細分化して組織的に進めるサラミソーセージ法よりも、つまみ食い的に処理するスイスチーズ法や、一気にこなしてしまうチキンレッグ法の方が有効なことがあります。

逃げ道をふさぐ

グズグズすることは一種の回避行動です。

私たちはいろいろな逃げ道によって回避行動をしています。

自分が用いている逃げ道を明らかにして、そこに逃げられないようにすることで、グズから逃げ出すことができます。

たとえば、インターネットで長々と時間をとってしまい、本来の仕事の開始が遅れるという人は少なくありません。

こうしたときは、インターネットの時間をあらかじめ限定しておくことです。

タイマーで設定しておくと、インターネットを切断する後押しをしてくれます。

また、他のどうでもいい用事をすることで、本来しなければならない仕事から逃げるという人がいます。

この場合、端から見ると忙しく働いているかのようであり、また、本人も働いていると思うことができます。

そのために、よく用いられる回避行動です。

あれこれ忙しくしているのに、いっこうに仕事がはかどらない人にこのタイプが多くみられます。

こうした人は、「今、本当にしなければならないことは何か?」と確認して、「やるべきことから逃げない」と決意することです。

さらに、「どうしてもやる気が起きないから」と気持ちの問題に逃げる人もいます。

「とても仕事できる状態じゃない」と、うつ的な気分に逃げ込む人もいます。

こうした人は、それが回避行動であり、気分のせいにするのは言い訳に過ぎないという事実をしっかりと確認することです。

その上で、これまで述べてきた技法を使って、グズを抜け出す努力をすることです。

自己強化法をうまく使う

「走り終わったら冷たいビールが待っている」と思えば、走るのが楽しみになります。

気が重いことでも、このように楽しく対処できれば最高です。

そのためには、自分へのご褒美を与えることです。

心理学ではこれを自己強化法といいます。

自己強化を上手に使うことも、グズを抜け出すコツです。

「これが終わったら、美味しいものを食べよう」

「この仕事がまとまったら、ゴルフに行こう」

「この計画を達成したら、旅行に行こう」

こんな風に、自分へのご褒美を用意するのです。

グズな人は、一般的に気持ちの転換が上手ではありません。

ですから、思い切ってご褒美を先に与えてしまうことが効果的なこともあります。

それによって、グズの沈殿した心の状態から、活動的な心へと転換することがあります。

●まとめ

たまった仕事は「とりあえず」をモットーにやってしまおう。

そのために、行動から入る、ルーティン化する、各個撃破する、三つの方法で処理する、逃げ道をふさぐ、自己強化法などが役に立ちます。

※参考文献:「つらい人間関係」がぐっと楽になるヒント 根本橘夫著