シャイネス

”シャイネス”とはどういう意味か、ということについてフィリップ・ジンバルドーの『シャイネス』という本にいろいろとあげてある。

シャイネスであるというのは臆病さ、警戒心、不信感ゆえに近寄るのが困難ということのようである。

シャイネスな人は用心深く、特別な人やものに出会ったり関係したりするのを嫌がる。

シャイネスな人は用心して口をきく。

シャイネスな人は自己主張など気がひけてできない。

シャイネスな人は過度に内気で引っ込み思案である。

シャイネスな人は懐疑的な性格である。

シャイネスな人は他人の前で居心地がわるい。

もとの言葉は「uncomfortable」である。

『シャイネス』という本からいろいろとシャイネスについて引用したが、本当に言いたいのはシャイネスそのものではない。

『シャイネス』のこれらの箇所を読みながら考えられることは、これはうつ病の病前性格というものにあたるのではないかということである。

うつ病の病前性格というと、精神科医の下田光造の執着性格や、同じく精神科医のフーベルトゥス・テレンバッハのメランコリー親和型などが出てきて、日本とドイツの専売特許のようになっている。

しかしうつ病の病前性格をシャイネスな性格といってもよいのではないか。

うつ病の病前性格というとすぐに几帳面とか強い正義感とか、他人の拒否を恐れて善意にふるまうとか、自己主張ができないとか仕事熱心とか、いろいろでている。

しかしこれらのことは、裏を返せば用心深いことであり、たいへんに臆病なことであり、心の底では懐疑的であるということではないだろうか。

シャイネスはよく言えば、几帳面だとか責任感が強いということになるが、わるくいえば用心深く臆病ということであろう。

心の底の底で懐疑的なシャイネスな人が、その疑い深さを抑圧することで意識的に正義にこだわるのではないだろうか。

自己主張ができないということについては『シャイネス』についてもまさにそのとおり、「shrinking from self-assertion(自信が持てずに委縮している)」と書いてある。

つまりうつ病になりやすい性格の人というのは、表面上は几帳面であったり責任感が強いように見えるが、実は臆病で懐疑的で自信のないシャイネスな人なのであろう。

シャイネスな人は不信感から用心深くなっているということである。

ジンバルドー自身、シャイネスはそのもっともひどい状態においては心が麻痺して、結果としてうつ病になると書いている。

『シャイネス』はさらに、その積極的な面として遠慮深さ、引っ込み思案、控えめ、謙虚さなどを挙げている。

これはまるで日本人の美徳について書いてあるような気さえする。

つまり、シャイネスな人は孤独で自分が好きになれず、人を恐れている。

シャイネスな人は人と一緒にいても楽しいというよりどこかぎこちない人々なのであろう。

シャイネスな人は心の底で人に好かれたいとは願うが、誰も自分を好いてくれないのではないかと思ってしまう。

これは対人恐怖症の人の特徴である。

それにしても「寡黙で控えめなことを美徳とする」、このようなシャイネスな日本文化は恐ろしい気さえする。

なぜならシャイネスというのは、やはり基本的には人生の早い時期に解決すべきものが解決できないまま残されていることから生じている。

シャイネスな人が解決できないのはまさにこれらの美徳に負うところが大きいように思えるからである。

シャイネスな人は攻撃性や性的欲求は心の中で禁止されている。

しかし決して消えてはいない。

つまりシャイネスな人は心の中で葛藤がある。

シャイネスな人は子どもの頃、母親の愛や注目や関心を独占したかった。

しかしシャイネスな人はその願望は満たされなかった。

シャイネスな人はこの根源的欲求が抑圧されてしまっている。

シャイネスな人はそこから生じてくる葛藤がある。

控えめなこと、謙虚なことはわるいことではない。

しかしそのような人の心の底に敵意と恐怖感があるとしたら、そのことを文化の一つの価値として推賞できるだろうか。

抑圧の結果として誘発されるシャイネスの症状を文化的価値とするならば、人々が欲求不満に陥っても何の不思議もない。

シャイネスはたしかに日本人に中には、一見立派な人だけれど、どこか心の底に不満をこびりつかせているような人が多い。

そしてそのような心の底の不満が、社会生活への不満の表明となって現れてくる。

※参考文献:「いい人」をやめたほうが好かれる 加藤諦三著

 

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