ソーシャルスキルトレーニング(社会的技能訓練)

社会的場面でうまく適応できないのは、適切な社会的技能が習得されていないためだととらえ、欠けている技能の習得を目指すのが、ソーシャルスキルトレーニング(社会的技能訓練)です。

社会的場面で要求される技能は複雑で微妙なものですが、それを具体的で個別な技能に分解することで、修得することを可能にするのです。

社交場面であれば、挨拶するスキル、話をつなぐスキル、葛藤を避けるスキル、葛藤を解決するスキル、自分の感情をコントロールするスキルなどが考えられます。

人付き合いの苦手意識が強い人は、独特なソーシャルスキルを習得しています。

とくに顕著なのは、多様で巧みな回避行動です。

たとえば、同僚と一緒にならないように退社時間をずらすとか、出たくない会合のある日に別な用事を入れるなどです。

こうした回避行動は適切なソーシャルスキルではないので、適切なソーシャルスキルに修正するのです。

ソーシャルスキルトレーニングの手順

ソーシャルスキルトレーニングは、一般に次のような手順で進められます。

1.問題の明確化

問題となるのはどのような場面で、それはいかなるスキルに問題があるためであるかを明らかにします。

たとえば、「会話が続かなくて、気まずい雰囲気になってしまう」ということであれば、「会話するスキル」の問題ということになります。

2.スキルの分析

上記で問題となったスキルを、さらに下位スキルに分析します。

この場合、「話す内容を蓄積する」「話を始める」「話を展開する」「相手に話させる」「場を和ませる」「聞き方」などの下位スキルが考えられます。

3.修得するスキルの選択

問題を改善するのに有効なスキルは何かを考えて、習得するスキルを決めます。

4.スキルの練習

上記のスキルを、メンタル・リハーサルしたり、実際の場面で試してみることで習得していきます。

聞き上手になる

上の例でいえば、「話を始めるスキル」「話を展開するスキル」などは、そう簡単に身につきません。

また、人付き合いの苦手意識の強い人はソーシャルスキルの欠如というよりも、自我のあり方が大きく影響しています。

ですから、話し方のスキルの向上を目指すよりも、聞き方のスキルを向上させることを選択するほうが賢明です。

上手な聞き方さえ習得すれば、会話の場でのストレスを減らすことができます。

このために、聞き上手になるスキルを紹介しておきます。

1.防衛せずに自然体で接する

人と話すとき、何か気の利いた話をしなければ相手が承知しないわけではないのです。

あなたが面白い話をしないと、相手があなたを嫌いになるわけではないのです。

ですから、ゆったりとした気持ちで、身体の力を抜いて接することです。

2.相手の話に関心を向けて聞く

会話がストレスになる人は、無意識のうちに身構えてしまっています。

次に何を言おうとか、こんなことを言ったら馬鹿にされるのではなどと、相手の話に関心を向けるのではなく、自分に関心を向けてしまっているのです。

そうではなく、会話は相手への思いやりです。

相手の話に集中することです。

誰にでも誠実に向き合おうとすることです。

取って付けたような誠実さでは相手の心に届きません。

2.あいづちをうちながら聞く

あなたが「うん、うん」と面白そうに話を聞いてくれるだけで、相手の人は自分が大切にされていると感じ、心地よく、満足なのです。

視線は無理に相手に向ける必要はありません。

あいづちをうちながら、ちゃんと聞いていれば、それが相手に伝わります。

3.自分の枠組みで結論をすぐに下さない

相手の話を聞いて、「それはムリ」だとか、「誰々が悪い」などと、即座に結論を出してしまわないことです。

結論を控えて、カウンセリングでいうところの共感的理解をしようと試みることです。

すなわち、相手の身に置き換えて、その人自身がどう感じているのかと、追体験しようとしてみるのです。

自分の枠組みではなく、相手の枠組みで感じ取ろうとすると、相手の話からたくさんのことを学ぶことができます。

相手の話に誠実に耳を傾け、相手のうれしい心、悲しい心、怒る心に共感しながら聞くことは、自分の心の幅を広げることにもなります。

4.自分が感じたことを素直に表現しながら聞く

上記のような姿勢で相手の話を聞いていると、相手が話すことそのものに関心が集中します。

すると、自然に話に引き込まれ、いろいろなことを感じます。

それを、素直に「ほー!」「わぁ、すごい」「えー!」「なるほど」「そうだよね」「そうなんだ」などと、表現することです。

5.自分の素直な疑問を質問する

相手の話をしっかり聞こうと心がけていると、いろいろな疑問や、話を進展させるような質問が湧いてきます。

それを「どうして?」「そうしたら?」「それから?」などと、率直に質問することです。

また、相手が具体的に話を展開できるような質問をすることです。

「そのときのことを聞きたい」「そのとき、〇〇さんは、どう言ったの?」などと。

6.場合によっては、相談するという形での質問が有効

たとえば、「今度、仕事で〇〇をやることになったのですが、初めてなので、なんだか心配で。

どんなことに注意すればいいですかね?」などと、相手への尊敬や信頼を伝えるような質問です。

こうすると、相手がその道に詳しい人であるほど、有益な情報を与えてくれます。

むろん、一方通行でなく、こちらも何か相手の人に役立ててもらえるような情報を仕入れる努力が求められます。

いつでも一方通行では、単なる甘えになってしまいます。

以上のような姿勢で人に接すると、安らかな心で対応できます。

相手の人と通じ合っているという感じがして、共感の時間をもてたことに喜びを感じます。

会話が苦手という人には、きっと役立つスキルだと思いますので、試してみて下さい。