不安型愛着スタイルの特性と対人関係

「なぜ、あの人は、気ばかりつかうのか」

終始周囲に気を使っている人がいる。

プライベートはもちろん、仕事の場でも、相手の顔色を見ながら機嫌をうかがったり、馬鹿丁寧にあいさつばかりする。

そのとき、少しでも相手の反応が悪かったりすると、嫌われているのではないかと不安になって、肝心の仕事どころではなくなってしまう。

この過剰な気遣いこそが、愛着不安の表れなのだ。

そして、気遣いばかりが空回りするのが、不安型愛着スタイルの人の特徴でもある。

不安型の人は、相手の表情に対して敏感で、読みとる速度は速いものの、不正確であることが多い。

ことに、怒りの表情と誤解してしまうことが多々ある。

そうなってしまうのも、不安型愛着スタイルの人にとって一番の関心事は、「人に受け入れられるかどうか」「人に嫌われていないかどうか」ということにあるからだ。

不安型愛着スタイルの人は、自分が相手に送るメッセージに、相手が大きな関心をはらっていると思い込みがちである。

「相手によく思われたい」という自分の努力に対して、相手も同じくらい気を留めてくれていると期待するのである。

しかし実際には、周りの人は、本人が気にするほど相手のことを気にしておらず、送られてきたメッセージにさえ気づかないことが多いのだ。

不安型愛着スタイルの人は拒絶や見捨てられることを恐れる

不安型愛着スタイルの人は、「愛されたい」「受け入れられたい」「認めてもらいたい」という気持ちが非常に強い。

対人関係で何が一番大事かと問われると、愛情や思いやりの大切さを強調する。

そのため、拒絶されたり、見捨てられることに対して、極めて敏感である。

少しでも、相手が拒否や否定の素振りをみせたりすると、激しい不安にとらわれ、それに対して過剰反応をしてしまいやすい。

拒絶されるかもしれないという考えが頭に忍び込むと、その不安をなかなか消し去ることができない。

そのため、何度も相手に確認しようとすることもある。

相手の顔色をうかがい、それに合わせて行動するということにもなりがちだ。

その結果として、不安型愛着スタイルの人では、相手に逆らえないということにもなりがちだ。

その結果として、不安型愛着スタイルのひとでは、相手に逆らえないということが、しばしばみられる。

明らかに不当なことを要求したり、自分のことを都合よく利用しようとしている相手に対してさえも、それをはっきり拒むということが難しい。

太宰治も愛着不安の強さから、相手に迎合してしまう傾向を抱えていた。

「また自分は、肉親たちに何か言われて、口ごたえした事はいちども有りませんでした。

そのわずかなおこごとは、自分には霹靂の如く感ぜられ、狂うみたいになり、口ごたえどころか、(中略)自分にはその真理を行う力が無いのだから、もはや人間と一緒に住めないのではないかしら、と思い込んでしまうのでした。

だから自分には、言い争いも自己弁解も出来ないのでした」(『人間失格』)

だが、愛着不安は、従属的なタイプの人ばかりでなく、支配的なタイプの人でもみられる。

その場合、愛着不安は、相手が自分を欺こうとしているのではないか、裏切ろうとしているのではないかという猜疑心に姿を変える。

不安型愛着スタイルの人は、他者というものを、自分を傷つけたり、非難したり、うっとうしく思う存在としてみなす傾向がある。

また自分自身についても、取り柄のない、愛されない存在と思いがちである。

そのため身近な人に依存し、その人から自分が必要とされていることを保証してもらうことで、どうにか自分の気持ちと折り合いをつけようとしている。

不安型愛着スタイルの人はすぐ恋愛モードになりやすい

対人関係は、その目的によって、大きく二つに分かれると考えられている。

一つは、愛着関係であり、愛着対象に接近し関わりをもつことで、愛情や安心を手に入れようとするものである。

もう一つは、連携関係であり、愛着とは無関係に、作業や課題をこなすために、一緒に協力したり、協議したり、プレイしたりする関係である。

愛着関係は、情緒的なつながりであるが、連携関係は、利益や目的で結びついた、便宣的で合理的なつながりである。

愛着関係は持続性をもち、状況が変わってもそう簡単に解消されることはないが、連携関係は状況次第で、すぐに解消される。

社会生活において、対人関係をうまくやりこなすということは、まさに、この愛着と連携関係のバランスをうまくとるということでもある。

個人の愛着スタイルは、このバランスに微妙な影響を与える。

安定した愛着の人は、時と場合に応じて、愛着関係を強めたり、連携関係に徹したりすることができるが、愛着の不安定な人は、そこの使い分けができず、どちらかに偏りがちになってしまう。

ことに不安型愛着スタイルの人は、利害に基づく連携に過ぎない関係を、愛着関係と錯覚してしまうことが起きやすい。

仕事上の関係が、すぐに恋愛関係に発展してしまったりするのも、不安型愛着スタイルの人に多い。

不安型愛着スタイルの人では、相手から愛され賞賛されたいという願望だけでなく、相手を理想化したり、相手と合体したいという無意識の願望が認められるという。

法外な値段の商品を売りつけようとしているセールスマンに良く思われようと、気前よく契約書にサインしたり、自分を利用している人物を特別な存在と思い込み、一生懸命尽くそうとしたりするのも、愛着不安に発する行動である。

不安型愛着スタイルの人はべったりとした依存関係を好む

不安型愛着スタイルの人は、距離が保たれている限り、とても優しく、サービス精神があり、接していて心地良い。

不安型愛着スタイルの人の脆さや厄介な面が、明確に表れるのは、親密な関係になったときである。

急激にもたれかかってきて、相手のすべてを独占したいという傾向が顕著になるのである。

親密になればなるほど、急速に自分と他者の境界が曖昧になり、相手を自分の一部のように思い込んでしまう。

「見捨てられる」という不安が強いため、自分が愛されていることを確かめようとする過剰確認行動も認められやすい。

また猜疑心や嫉妬心が強く、相手の行動を縛ったり、監視したりするということも起きる。

やむを得ない事情で相手が自分をかまってくれないことさえも腹立たしく思い、裏切られたと感じて怒りをぶつけたりする。

そのため相手は次第に重荷に感じるようになる。

通常は、24時間いつでも相手をしてもらえるような恋人やパートナーが、愛着対象と同時に依存対象となって、不安型愛着スタイルの人を支えることとなる。

不安型愛着スタイルの人はネガティブな感情や言葉が飛び火しやすい

不安型愛着スタイルの人は、不満や苦痛といったネガティブなことを、つい口にしてしまう傾向がみられる。

言い出すとどんどんエスカレートして、そこまで思っていないことまで言ってしまうこともある。

ネガティブな感情が燃え広がりやすいのである。

相手に見捨てられることを恐れる一方で、激しい言葉や、相手のプライドをズタズタにするような言葉を、わざわざ投げかけてしまうのである。

その背後には、相手が自分のことをおろそかにしているという被害感がある。

しかし、それは、相手からすれば妥当性を欠き、献身的に関わってくれている相手は、まったく思ってもみない言い草に当惑することになる。

その結果、支えになってくれていた相手が、離れていってしまうこともある。

また、否定的な感情にとらわれやすく、些細なことをいつまでも引きずりやすい性向は、怒りをじくじくと長引かせやすい。

見捨てられることへの恐怖や認められたいという欲求が強力であるだけに、それをないがしろにされたことに対する怒りは、そう簡単には収まらない。

パートナーや恋人の浮気や裏切りを、ねちねちと何年も責め続ける人は、こうした典型だが、仕事などにおいても、自分を拒否した人に対して、否定的な評価を下すようになることはしばしばみられる。

また不安型愛着スタイルのもう一つの特徴は、怒りや敵意の矛先が他者だけでなく、自分自身にも向けられやすいという点だ。

自分を批判したり責めたりして自己嫌悪に陥り、その結果、うつにもなりやすい。

不安型愛着スタイルの人の怒りには、相手に向かう部分を自分に向かう部分の両面が入り混じりやすいのだ。

不安型愛着スタイルの人はパートナーに手厳しく、相手の愛情が足りないと思う

とくに不安型愛着スタイルの女性の場合、不満やストレスを、パートナーに対して強くぶつける傾向がみられる。

それは、不安型愛着スタイルの人が、パートナーに対して不満を強く感じたり、パートナーは自分に何もしてくれていないという思いを抱きやすいことと関係しているだろう。

このことは、不安型愛着スタイルの女性が、産後うつ病になりやすいことにもつながっている。

不安型愛着スタイルの女性は、パートナーのサポートが不十分だと感じることで、余計ストレスを感じやすいのである。

パートナーの男性にしてみれば、不安型愛着スタイルの女性に強い不満をぶつけられて、助けてあげようとする気持ちを余計に失ってしまう、という悪循環にも陥りやすい。

不安型愛着スタイルの人は、愛着対象に対する期待がとても大きい。

子どもの頃、愛着対象から、条件付きの不安定な愛情しか与えられなかったことで、愛情に対する飢餓感が強いのだ。

そのため、本当はパートナーに愛され、支えられている場合でも、それを不十分なものと感じてしまう。

こうした受け止め方は、言葉や態度の端々に表れることになる。

不安型愛着スタイルの人の、パートナーに対するネガティブな評価は、パートナーのモチベーションを低下させてしまう。

実際、相手の愛情やサポートに対するネガティブな評価は、相手の愛情やサポートを減らしてしまう。

「思いやりも、支えも少ない」と思って不満を抱いていると、本当に、相手の思いやりも支えも少なくなってしまうということが起きる。

不安型愛着スタイルの人は両価的な矛盾を抱えている

不安型愛着スタイルは、子どもでは両価型と呼ばれるように、両価的な傾向を抱えやすい。

ここでいう両価型とは、求める気持ちと拒絶する気持ちの両方が併存している状態のことである。

不安型愛着スタイルの人は、幼い頃から養育者に、過保護に甘やかされる一方で、親の意に沿わないと、強く拒否されるといった、極端さのなかで育っていることが多い。

そのため、甘えたい、愛情を求めたいと願う一方で、またいつ手痛い仕打ちが待っているかもしれないという気持ちも抱いている。

愛情が無条件のものではなく、状況が変われば見捨てられるという思いを消せないのである。

大学生を対象にした研究によると、不安型愛着スタイルの人では、親や恋人に対して、肯定的な態度と否定的な態度が強く併存しており、両価的な傾向が強かった。

不安型愛着スタイルの人では、期待や賞賛に対しても、うれしい反面、もし相手の期待を裏切ったらと考えて、むしろプレッシャーになってしまう。

ある実験では、魅力的な異性が、自分にあからさまな関心を示している場合と、示していない場合で、課題に取り組ませたときのパフォーマンスの違いを調べた。

その結果、安定型愛着スタイルの人は、関心を示された方がパフォーマンスが高まったにもかかわらず、不安型愛着スタイルの人は、逆にパフォーマンスが低下する傾向がみられた。

安定型愛着スタイルの人は、自分に向けられた関心が自信や意欲を高めることにつながるが、不安型愛着スタイルの人は、逆に両価的な葛藤を引き起こし、集中力に悪影響を与えてしまうと考察されている。

恋愛をすると俄然頑張れる人と、逆に駄目になってしまう人がいるが、不安型愛着スタイルの人の場合、後者の状態が起こりやすい。

不安型愛着スタイルの恋愛、愛情

不安型愛着スタイルの人がセックスに燃える時

不安型愛着スタイルの人にとって、自分が愛されているかという事は、非常に大きなウエイトを占める。

その重要性は、回避型愛着スタイルの人には想像できないほどである。

回避型の人は、愛情をそれほど必要とは感じないし、ましてそれを口に出して表現することは、芝居でもさせられるような、馬鹿げたことに思えてしまうからだ。

不安型愛着スタイルの人は、パートナーが自分をどう評価してくれているかによって、自分自身に対する評価も左右されてしまう。

愛されていると感じると、自分は価値のある存在だと思えるが、愛されていないと感じた途端に、自分が無価値になったように感じやすい。

パートナーから素っ気なくされたり、否定的なことを言われたりすると、急に自信がなくなり、落ち込んでしまうということも起きやすい。

それは、自分に対する評価だけでなく、パートナーに対する評価にも跳ね返ってくる。

不安型愛着スタイルの人は、自分を大切にしてくれていると感じる存在に対して、同じだけの愛情を返そうとする。

しかし、それが与えられないとなると、もはやパートナーはその存在自体が無意味になってしまうのである。

そうした心理状態は、セックスにも反映する。

デイビスらの研究によると、不安型愛着スタイルの人がセックスに対して積極的になるのは、それが、パートナーの愛情や献身のバロメーターとして感じられたときである。

逆にセックスに乗り気がしなくなるのは、パートナーの機嫌を損じたり、拒絶に遭ったりしないために、パートナーの要求に渋々応じていると感じたときであった。