”「決断と諦念」で自分の人生を生き始める”

何よりも自分の過去を受け容れること。それが決断であり、人生最大の業績である。

どういう親を持つか、そういう人間関係の中で育つかはあなたの責任ではない。

しかし、それを自分の運命として受け入れないのは、あなたの責任である。

人生の業績は誰にとっても同じではない。

人はそれぞれ違った運命を持って生まれてくる。
だから、人生の業績は人によってそれぞれ違う。

ある人にとっての人生の業績は、社会に対する貢献である。
革命の指導者になる運命を背負って生まれて来た者は、政治的貢献が人生の業績である。

しかし、別の運命を背負って生まれた人にとっての人生の業績は、また別のものである。
たとえば、具体的には何もできないでも、心静かに一日をおくることができれば、
それが偉大な業績かもしれない。
不幸な人間関係の中に生まれた人が、心の葛藤を持つのは当たり前である。
それなのに心静かに一日を送れたのであるから、それはたいへんなことなのである。

子供を産めない人が「産めない」という運命を受け容れる。
産むことを断念する。
それが子供を産むということの価値を相対化するということであると、実存分析のフランクルは言う。

同じように、自分の脳は幼い頃からの長期にわたるストレスで生きにくくなってしまっている。
自分は、この脳で生きて行こうと決心することが、正常な脳で生きることを断念することである。
そして、正常な脳で生きるという価値を相対化することである。

「決断と諦念」といってもよいし「決断と断念」といってもよいが、その決断を通して初めて、自分の人生を生き始めることができる。
いつまでも生きやすい脳に執着していれば、人生は最後まで幸せにはなれない。

対人恐怖症、社交不安障害を克服するには、自分の運命を正面から受け入れることである。

参考文献:自分の受け入れ方 加藤諦三著