成長と共に、内に秘めた自分の心と外に出す自分とのギャップが拡大していきます。

とりわけ思春期以降にこのギャップが大きくなります。

そして、外に出す自分は「偽りの自分」でしかなく、内に秘めた自分こそ「本当の自分」だと感じるようになります。

こうした心理をもたらす最大の要因は、抽象能力の飛躍的な発達であり、また、性に関する諸体験です。

内面への気づき

中学生になると、自分についての感覚や思考能力が急速に高まります。

このために、表出を抑えられた感覚、感情、衝動、欲求、願望などに敏感になります。

また、外界に適応している自分は、ある部分で自分を裏切っているという感覚を持ちます。

本来の自分をねじ曲げなければならない屈辱的と感じられる体験をすることもあります。

あるいは、自らの汚い部分にも敏感になるために、良い子としての自分を自己欺瞞と感じたりします。

さらにこの時期には、自分の能力や容姿について、優劣という明白な事実に直面させられます。

こうしたことに対して感じ、考えることが多くなり、内面が豊かになっていきます。

しかし、この時期の内面は、空想や夢など現実の裏付けを欠いたイメージが大部分です。

そのために、内面をそのまま外に出すことができません。

相手や場所など、自分なりにチェックしつつ、その一部を表出するに過ぎません。

このようにして、外面と内面とのギャップが拡大していきます。

思春期になると、男女とも性的衝動が強くなり、性的願望を持ち、アダルト・ビデオを見る、アダルトサイトにアクセスする、オナニーする、セックスするなど、いろいろな性体験をするようになります。

昔と比べたらずいぶん開放的になったとはいえ、家庭において性はなお禁じられたものです。

少なくとも、秘めるべきものとされています。

このために、子どもは性的体験を親に隠します。

友達でも、親しい友達でなければ秘密にします。

このように、性に関わって秘密にすべき世界が拡大していきます。

おそらく男子よりも女子の方が、この時期、内面と外面とのギャップを強く感じるようになります。

その理由の一つは、生理という体験です。

生理中はいつでも「隠している。偽っている」という感覚から抜けられないと語る女子生徒がいます。

隠していても、臭いで男子に分かってしまうのではないか、という不安を語る女子生徒もいます。

第二の理由は、女性の方が純潔を期待されているためです。

自分の性欲に戸惑いを感じる女子学生がいます。

オナニーによる性器の黒ずみを心配する女性もいます。

女子はこうしたことを、男子のように友達とフランクに話すことができません。

「隠している。偽っている」という感覚から、女性にはとくに「本当の自分」を知られることを恐れる心理があります。

このように外に出す自分と秘めた自分とのギャップが大きくなり、前者を「偽りの自分」と感じ、後者を「本当の自分」と感じるようになります。

※参考文献:「いい人に見られたい」症候群 根本橘夫著