回避型の人は、たわいないおしゃべりをしたり、身の上話をしたり、社交のための社交をしたりということは苦手である。

そうした単なるつきあいには関心をもちにくいが、趣味や関心を共有できる仲間とのつきあいなら、このタイプの人にとっても入っていきやすく、楽しめる場となる。

回避型の人が、豊かな人生をもつ上で、同好の士との交歓の場をもてるかどうかが、一つの重要な要素になるように思える。

三十代男性のFさんは、専門的な資格をもっているものの、職場での対人関係でつまずき、仕事に出られなくなってしまった。

彼を特に悩ませたのは、女性の同僚からの非難や陰口で、彼は、すっかり自信をなくし、職場に足を踏み入れただけで、体調が悪くなってしまうところまで追い詰められた。

その結果、引きこもりがちな生活になり、将来に対しても悲観的になってしまった。

元来Fさんは、頭脳優秀で知識も豊富であるが、人付き合いが苦手なタイプで、電話の応対や接客で苦労することが多かった。

特に、相手に批判をされたりすると、どう切り返せばいいか、言葉に詰まって、頭が真っ白になってしまうのだ。

Fさんの回避型の愛着スタイルは、生来の自閉症スペクトラム的な遺伝的気質に加えて、対人関係での失敗や否定的な体験を積み重ねる中で、悪化していったと思われる。

Fさんの趣味は将棋だった。

そこで、同好の士が集まるような場に出てみてはどうかと勧めてみた。

そのうち、彼は、近くのコミュニティーセンターで、毎週、将棋の集まりがあることを調べてきて、そこに参加し始めた。

年配のメンバーが多く、若手が来たというので、彼はとても歓迎された。

Fさんも、相手が女性や同年代の人だと緊張するが、年配の人だと安心感をもつことができた。

二、三年の間、ほとんど母親としか会話をすることもなかったFさんが、毎週、将棋の集まりに通い、メンバーたちとしだいに冗談を言ったり、気楽な会話を交わしたりするようになった。

そのうち、対人関係に対する自信のなさも薄らいできて、また働いてみようかと口にするようになった。

同年代や女性の割合が少ない職場に的を絞り就職活動をした結果、みごと面接にも合格できた。

再就職後も、以前にはないスムーズさで、職場に溶けこんでいる。

将棋クラブで、自分を受け入れてもらえた体験は、社会的スキルの訓練にとどまらず、傷ついたプライドを癒やし、Fさんの自己肯定感を回復する上でも、とても重要な役割を果たしたと言えるだろう。

回避パターンに陥っている場合、まず、その人を受け入れてくれる集まりがないかを考えてみることは、回復への重要な手がかりとなる。

※参考文献:回避性愛着障害 絆が稀薄な人たち 岡田尊司著