エインワースは、愛着タイプの分類をおこなうとともに、そうした愛着が生まれる要因について、母親の接し方がカギを握っていることを解明していった。

その後わかってきたことも含めて、各タイプの要因や背景について整理しよう。

「安定型」の子どもの母親の特徴は、先にも触れたように、高い感受性をもって子どもに応えることである。

これを「応答性」という言い方をすることもある。

つまり、子どもの危険な兆候を読み取り、泣くとすぐに抱っこして優しく慰めるが、同時に、子どもが求める以上には抱き続けることはせず、子どものニーズに合わせて対応を臨機応変に変える。

一言でいえば「子どもの安全基地」となることができていたのだ。

これらの母親は、授乳をはじめとしたスキンシップを楽しむ傾向も見られた。

一方、「回避型」の子どもの母親の特徴は、拒否と無関心だった。

子どもたちが泣いたり、悲しそうな表情になると、母親の方から強く拒否してしまったり、自分の殻の中に引きこもってしまうのだった。

体を触れ合うことにもむしろ嫌悪感を抱いてしまう。

子どもの側としては、求めても無視されて応えてもらえないという状況を何度も味わううちに、求めない反応が身についてしまうと考えられる。

しかしときには、母親に拒否されることに怒りの反応を示すこともある。

彼らが将来示すことになりやすい、「普段はクールなのに、突如キレる」という反応を思わせる。

ただ、回避型の要因や背景としては、近年、もう一つの養育パターンも原因となることがわかってきた。

それは、「拒否・無関心」型の親とはまったく逆に、「過保護・過干渉」な親に支配されて育った場合である。

本人の主体性やニーズに関係なく、一方的に与えられ、指図され続ける境遇におかれると、その子は猿回しのサルのように、主体性をもつことができなくなる。

その子にとって親は、安全基地というよりも心理的支配という虐待をおこなう存在になってしまう。

親から心理的支配を受けて育った人は、他人というものを自分の自由を邪魔する煩わしい存在だとみなすようになる。

そのため、周囲の人と物理的、心理的に距離をとることで、自分の安全と自由を確保する、という行動パターンを身に付けてしまいやすい。

こうした境遇で育った人では、親が決定権をもちすぎたために、自分の気持ちや意志に従って行動することができない。

自分の気持ちや意思が自分でもわからない、ということも起きやすい。

本来の回避型の子どもが、早くから自立し、人に頼ろうとしないのに対して、心理的支配を受けて育った回避型のケースでは、親密な関係や情緒的なつながりをもつことを好まない一方で、親には依存し、良い子であろうと周囲の顔色をうかがうなど、回避型と両価型が混じった「恐れ・回避型」と呼ばれる愛着スタイルを呈しやすい。

三つ目の「両価型」の子どもの母親は、気まぐれなところやムラがあり、子どもの求めに過剰なまでに反応するかと思えば、他のことに気をとられて上の空で、まったく反応しなかったりする。

また、過剰反応するときも、子どもの本当のニーズとはズレを起こしやすく、見当外れな方向に暴走して、かえって子どもを不安にしてしまう。

甲斐甲斐しく子どもにかかわっていた母親だったのが、下に子どもができたり、夫婦間に問題が起こったことで、その子にあまりかかわれなくなり、愛情や世話に急な落差が生まれることもある。

こうしたことも、子どもを不安にし、母親が応えてくれるまで過剰に求めようとする反応が身につきやすい。

「無秩序型(混乱型)」はいうまでもなく、虐待される子に典型的なもので、被虐待児の八割以上にこのタイプの愛着が認められたとの報告もある。

しかし、虐待されていないはずの子にも、少数ながらこの愛着パターンが認められる。

その要因として、心理的虐待の存在が推測されるが、それ以外にも、親自身が子育てを非常に負担に感じて、親の方がこどもから脅かされているように感じていたり、また親が心に傷を抱え、そのことにしばしばとらわれてしまうような場合にも、子どもは確固とした安心感をもてず、いつか親という支えがなくなってしまうのではないかと、予測がつかない状況で暮らすことになり、無秩序型に陥る危険があると考えられる。

※参考文献:愛着障害の克服 「愛着アプローチ」で、人は変われる 岡田尊司著