回避している状況は、砦の中にこもっているのに似ている。

周囲に高い壁を築き、その中にいることで自分を守っているつもりだが、実際にはそこから出られなくなっている。

傷ついた心が生み出した恐怖の幻影によって、壁が乗り越えがたいものとなっているのである。

もっと具体的に言うと、みんなから無視されるのではないか、冷たい眼で見られるのではないか、また失敗して怒鳴られるのではないかといった不安に身がすくみ、立ち向かう勇気を奪われてしまう状況である。

だが、その状況から目をそむければそむけるほど、恐怖はいやますことになる。

幻は目をそむければそむけるほど、ふくらみやすいからである。

そういう場合に有効な方法は、一番恐れている状況を、勇気を出して思い描いてみることだ。

誰からも声をかけてもらえず、白い目で見られることを恐れているのなら、その状況を想像してみる。

失敗して、みんなから笑われたり馬鹿にされたりする状況を恐れているのなら、敢えてその状況を積極的に思い浮かべてみる。

そして、その状況に陥ったとき、どれほどつらい気持ちになるのか、どれほど悲しい気持ちになるのかを、生々しく想像し、それを味わってみる。

そのつらく、苦しく、惨めで、プライドがズタズタになって傷ついた気持ちを、感じ続けようと努力してみる。

そうやって、最悪の状況で一番恐れていたことが起きたとして、それがどれくらいつらいかを、自分から味わってみるのである。

実際に、そうしたエクササイズをやってもらうと、最初は苦しさや悲しさに圧倒されそうな気持ちになり、「悲しくて辛いです」と語る。

しかし、思い描き続けてもらううちに、「それほど怖いことではないのかもしれない」「すごく怖いことのように思っていたけれど、実際は、大したことではないのかもしれないという気がしてきました」と語ったりする。

こうした心理的な操作は、エクスポージャー(曝露療法)といって、不安や恐怖といった囚われを克服して、回避を突破する技法の一つだ。

回避のワナに陥った人は、不安な想像に囚われている。

それは予期不安とも呼ばれ、現実にはまだ起きていないことを心配するのが特徴である。

エクスポージャーは、予期不安と結びついた状況から逃げるのではなく、自分からその状況に飛び込んでいくことによって、自分の想像が生み出した恐怖を乗り越えようとするものである。

その場合、まずその状況を想像し語ることから始めると、心の準備をしやすい。

傷が深く、回避が強い場合には、語ることだけでも最初は苦しくてたまらなくなったり、平静でいられなくなったりするが、その場合も、本人を励ましながら、その気持ちから逃げずに、その気持ちを感じ続けるように促す。

本人が逃げずに向き合うことができれば、恐怖や不安は薄らいでいき、克服に向かっていく。

※参考文献:回避性愛着障害 絆が稀薄な人たち 岡田尊司著