境界性パーソナリティ障害は、見捨てられることへの過敏さ、強い自己否定、自己破壊的行動などを特徴とする深刻な障害だが、近年、身近でも急増しているものである。

障害と診断されるレベルではないが、その傾向をもつ人は非常に多く、そうしたタイプを境界性パーソナリティと呼ぶ。

見捨てられることへの過敏さは、親密な関係になったときにスイッチが入るため、距離を置いた関係のときには、そうした問題はほとんど目立たず、とても感じのいい魅力的な存在であったり、とても勤勉な努力家であったり、内気でおとなしい、目立たない存在だったりする。

ところが、親密な距離にまで近づいた瞬間、状況が一変し始める。

がらがらと、それまでの状態が崩れ始める。

まるでスイッチが入ったように、見捨てられるのではないかという不安が生じ、情緒不安定になると同時に、しがみつこうとする行動や愛情・関心を確認しようとする行動が激しくなる。

見捨てられるという思い込みから、思いつめた行動に走ったり、相手を独占しようとして、あの手この手で縛り付けようとする。

その最たる手段が、「死ぬ」と言って脅し、そばにいさせようとしたり、すぐに自分のもとに来させようとしたりすることである。

せっかく楽しく過ごしても、別れ際になると、急に不機嫌になったり、困らせるようなことをして、楽しかったことまで台無しになるように振る舞ってしまう。

そんな反応に、相手は戸惑い、どうすればいいのかわからなくなる。

ときには、手を焼いた末に、疲れ切ってしまい、関係を終わらせようとすると、そこから、激しい攻撃が始まったり、ストーカーのようになったりしてしまうこともある。

こうした反応は、理解不能に思われるのだが、その根底には、両価型(不安型)と呼ばれる不安定な愛着が絡んでいることが多い。

両価型とは、相手を求めている気持ちと、攻撃したり拒否したりしてしまう反応が同居している愛着タイプである。

そうした反応になってしまうのは、求める気持ちが強すぎて、自分を愛してもらえないことへの怒りにとらわれているためである。

そして、そんな反応に陥ってしまうのは、過去に受けた心の傷が関係している。

愛情をもとめながら、愛してもらえなかったり、見捨てられることで受けた傷が、再びうずきだすのだ。

境界性パーソナリティについての認識がなければ、相手にただ翻弄されることになる。

自分が翻弄されるだけでなく、相手もどんどん不安定になっていく。

一生懸命支えようとすればするほど、ひどい状態になって、侮辱や攻撃を受けた挙げ句、捨てられてしまうこともある。

このタイプの人は、捨てられることを恐れているのだが、捨てられないためには、自分の方から捨ててしまうのが、一番なのである。

ただ、そうしたドラマチックなケースよりも、実際に多くを占めるのは、むしろ愛されていないと不安や不満を感じつつも、相手にしがみつき続けるケースである。

一人の人に長くしがみつき続け、パートナーも支え続けたケースでは、時間とともに安定することが多い。

自分が捨てられないということを、身をもって実感し、人との関係を信じられるようになったと言えるだろう。

ただ、そこにまでたどり着くまでには、相当な時間を要すると覚悟する必要がある。

※参考文献:対人距離がわからない―どうしてあの人はうまくいくのか― 岡田尊司著