挫折感・コンプレックスを共有しない

●挫折感・コンプレックスを共有しない

”わざとらしさを見抜く”

何か独特の雰囲気をもった集団というのがある。

何か不自然な人々の集まりで、妙に高慢なところがあったりする。

ウェインバーグの「プライアント・アニマル」に、次のような家庭の例が出ている。

「ある男性は、家族を神聖なものと思い、他人の危機は単なる夕食の話題と思っている家庭で育ちました。

”我が家は一番であり、他の人々は愚かである。一家のために必要な時、嘘をつけないのは家庭への裏切りである。

また必要なら家族のために死ねないのは反逆行為である。

私たちはすべてそうできるはずだ”」

このような家庭の人というのは、外から見ると、どうも”わざとらしさ”が眼につくのである。

家庭であっても、宗教的な集団であっても、その他のグループであっても同じである。

その人たちのわざとらしい明るさに、人々は何か不自然さを感じる。
何か”ゾッ”としたものを感じる。

これらの集団の人は、コンプレックスを共有しているから、なかなか自らの抑圧に気が付かない。

われわれが”ゾッ”として背筋が寒くなるのは、冷たい人間にあった時ではない。

心の冷たい人間が、いかにも温かそうに振る舞っている、そのわざとらしさに気付いた時である。

そういうわざとらしい振る舞いはとにかく嫌だ、という気持ちになるのは、その人が能動的だからである。

コンプレックスを共有していないからである。

依存心の強い人は、そもそものわざとらしさに気付かないで、自分は温かい人間だと思っているのである。

その人とコンプレックスを共有しているからである。

能動的になると、他人の抑圧を見抜ける。

相手が、冷たい自己のイメージを抑圧しているということを感じ取れる。

しかし、自分も抑圧していると、相手の抑圧に気がつかないのである。

そして、相手を立派な人だと判断違いし、コンプレックスを共有して、お互いに高慢になったりする。

楽しそうにしている人を見ていると気持ちがいい。

また、楽しそうに演技していると自分で知っている人をみているのは、それはそれでいい。

耐えられないのは、楽しめない人間でありながら、自分を抑圧して、いかにも楽しそうにしている人を見ることである。

それには耐えられない。

そうしたわざとらしい楽しさを見せる人も、初めからそんな感情と無関係な人間にとっては、可哀そうな人となるだけだろう。

しかし、そのわざとらしい人と深く関わり、大事な人生を犠牲にした人には、そんな単純な感じ方でわりきることはできない。

能動的であればあるほど、そのわざとらしさがとにかく嫌だということで、無関係になろうとするだろう。

しかし、相手への依存心が強い人は、そのわざとらしい楽しさの底にある虚無感を見抜けず、いいなあということになる。これもコンプレックスの共有である。

コンプレックスを共有してしまうというのは、相手が自分はこんなに楽しいんだぞと自分と他人に見せているだけなのに、それが見抜けないことである。

自分自身にまで、こんなに楽しいんだぞとみせなければならないのは、その人が不愉快さと虚無感を抑圧しているからである。

なぜ自らの不快さと虚無感に眼を背けなければならないのか。それは不快さと虚無感を認めることが、人生の基本的なことでの挫折を認めることにつながるからである。

たとえば、男として挫折し、仕事の世界を批判して「あんな世界はくだらぬ」と言い張っている以上、家庭の中で、レジャーで、俺はこんなに楽しいんだぞと、自分自身に見せなければならない。

わざとらしい楽しさや、わざとらしい明るさは、自分の人生の基本的なところの挫折から眼を背けたところからでてくるのである。

自分の人生の基本的なところの挫折から眼を背けた人間は、他人の人生を食いものにして生きていく。

食い物にされた人間が憎しみの炎に包まれるのはしかたないかもしれないが、やはり、憎しみをもつことは結局相手にしはいされつづけることであり、食い物にされ続けることである。

あのわざとらしい笑い声の底にあるずるさに私はもう耐えられない、といって無関係になる人間は、少なくともそれ以後の人生を自分のものにするであろう。

対人恐怖症、社交不安障害を克服するには人間にとっての基本的な、挫折感やコンプレックスから眼を背けないことである。

※参考文献:自分を嫌うな 加藤諦三著

 

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