攻撃性の置き換えとそのアプローチ

「外で子羊、家で狼」の人には、裏にさまざまな心理があるが、その一つは「攻撃性の置き換え」である。

攻撃性の置き換えとは、本来攻撃性を向けるべき対象を恐れて、自分にとって危険のない対象に攻撃性を向けることである。

攻撃性の置き換えで「母親を叩きたい少女は、そのかわりにいつも兄の欠点を見つける」(ジョージ・ウェインバーグ)

攻撃性の置き換えで「外づらがよくて、内づらがわるい夫」も、ときに同じで「上司や同僚を叩きたい夫は、そのかわり妻につらく当たります」。

攻撃性の置き換えで外では気が弱くて自己主張ひとつできないくせに、家では凶暴な夫になる。

彼は自分の父親を憎んでいるか、母親を憎んでいるか、それとも友達を憎んでいる。

しかしいずれの人にしても、その人への怒りを自覚するのが怖い。

そこで攻撃性の置き換えで自分を見捨てない配偶者にその怒りを置き換える。

そして攻撃性の置き換えで家で狼になる人は、本当は自分がわるいのに、「家の者がけしからん」と思っている。

そこが恐ろしいところである。

攻撃性の置き換えで外で極端な自己犠牲タイプの夫が、ひとたび奥さんに対すると、極端な攻撃的自己主張型に変わる。

敵意や怒りを自覚するのはそう誰にでもできるというものではない。

自分が自分にとって頼りないという人には、敵意や怒りを自覚することは困難である。

法学者であり政治学者であり偉大なモラリストであるカール・ヒルティーは「他ならぬ大声の非難や嘲笑の中には、内心の動揺に対して自己を守ろうとする意図しかないことがしばしばある」と述べている。

ヒルティーは、一般的な話をしているのであろうが、これは内づらがわるくて外づらがよい夫にもあてはまる心理過程である。

攻撃性の置き換えでなんで外ではやたらと人にペコペコと迎合するのに、いったん家に帰るとあそこまで横暴になるのかという疑問を持つ妻は多い。

もちろんときには夫と妻が逆のパターンもある。

ただ心理過程は同じである。

攻撃性の置き換えの例で次のようなことがある。

「私は三十六歳で主人と私の母と娘(中一)と暮らしていますが、家族の者が私の思い通りにならないととても腹が立つのです。

たとえば私がどこかへ行こうというと、ウン行こう!とすぐ賛成しないと気に入りません。

また家族の者が人に対して私の思うように接してくれないと腹が立ちます。

主人に対しても完璧を求めてイライラします。

そのくせ自分は他人の目ばかりが気になります。

相手の何気ないしぐさで、その人の思っていることを自分なりに解釈してしまうのです。

そして相手に合わせるばかりなので人と会うとすごく疲れます」

昔から内弁慶をあらわす言葉があったが、これはどちらかというと子どもについていっている。

「外で子羊、家で狼」という夫や子どもの言動は、外化という心理的課題で説明できる。

外化とは心の中でおきていることを、そとで起きていると思うことである。

精神分析学者のカレン・ホルナイによると、自分に対する怒りはまず第一にイライラとなってあらわれる。

第二がおびえや増大する従順であり、第三が体の不調である。

攻撃性の置き換えで内づらがわるくて外づらがよい夫は、「外」では第二の特徴のおびえがあらわれ、「家」では第一の特徴のイライラがあらわれているのである。

攻撃性の置き換えで家では怒りが外に向かってあらわれ、いつもイライラしている。

外では、自分の弱点が相手を怒らせるのではないかと恐れて、いつもビクビクしている。

他人が自分に怒っていると感じる。

そして何でもかんでも相手のいうことに「そう、そう」といって迎合していく。

従順な子羊になることで相手の怒りから自分を守ろうとする。

狼も子羊も《自分へ向けられた怒り》の外化という同じコインの表と裏なのである。

イライラが家での狼の心理状態で、増大する従順が外での心理状態である。

家で狼になるのは、そうなることで心の葛藤を解決しようとしているのである。

そして同時に「外で子羊」も、子羊になることで心の葛藤を解決しようとしている。

狼と子羊は症状としては反対であるが、本質は心の葛藤という同じ心理状態である。

自分が自分の欠点に怒っているように、他人も自分の欠点を怒っていると思う。

自分が自分に課した基準を他人も自分に課していると思う。

小さいころは本当にすごい基準をかせられていた。

父親が自分に高すぎる基準を課した。

大人になっても他人は同じように自分に高すぎる基準を課すと思う。

そこで他人を恐れる。

その結果が増大する従順である。

小さいころから権威主義的親をはじめ周囲の人への敵意を抑圧したことで、同僚のいいなりになっていた。

主張すべきことを主張できなかった。

自分の権利を守れなかった。

そのおかげで、権威主義的な上司に気に入られて出世できて「結果としてはよかった」という人も中にはいるかもしれない。

しかしいいなりになったことでいよいよ自分の内づらは弱くなった。

攻撃性の置き換えでそのイライラを戦わない人に向ける。

攻撃性の置き換えで抑圧した敵意を弱者に置き換えていく。

それが「家で狼、外で子羊」である。

「親子の役割逆転」という言葉がある。

精神科医のジョン・ボールビーのいう概念であるが、親のほうが子どもに甘えている心理状態のことである。

その「親子の役割逆転」をする親も、子どもに同じ態度で接するわけではない。

たとえば、攻撃性の置き換えで姉には子羊、弟には狼になる。

しかし「親子の役割逆転」をする親は、迎合している姉を信頼しているのではない。

いじめている弟を信頼している。

歳をとったときにどちらを頼りにするかといえば、いじめている弟のほうである。

つまり内づらがわるくて外づらがよい人は、外でペコペコと迎合しているからといって、そういう外の人たちを信頼しているわけではない。

内づらがわるくて外づらがよい人は、内づらがわるい世界の人たちのほうを頼りにしている。

要するに内づらがわるくて外づらがよい人は、意気地なしで卑怯で、身近な人に甘えているのである。

攻撃性の置き換えをしてしまう人は、情緒が成熟した人と付き合い、内づらと外づらを一致させることでそれを解消できるのである。

※参考文献:「いい人」をやめたほうが好かれる 加藤諦三著

 

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