未解決型愛着スタイルと「愛着の傷」

未解決愛着スタイルとは、親などの、その人にとって重要な愛着対象との関係において、大きな傷を引きずっており、その傷が他の対人関係にも影を落としているタイプである。

愛着の傷となった出来事は、通常、物心がついた後に起きているので、思い出すことができる。

親の死去、離別、離婚、親からの虐待、親の病気、経済的事情などによる親の不在、無関心、世話の不足などが良く見られるものである。

それ以外のことに関してならば、平静に語ることができる場合でも、愛着の傷が関係していることに触れられたとたん、急に動揺して涙ぐんだり、混乱したり、怒りをあらわにしたリ、不安定な面を見せる。

そのことについて、冷静に語ることができない。

あるいは逆に、冷静すぎる、感情を伴わない語り方をする場合もある。

未解決型愛着スタイルの人に伴いやすい問題としては、解離症状や依存症(的行動)である。

未解決型愛着スタイルの人は、心にクレバスを抱えているようなもので、意識や人格の統合が脅かされる瞬間がある。

それは、自分を傷つきから守るための手段でもある。

不快な現実や記憶に向き合うことを避けるために、意識や記憶を飛ばしてしまうのである。

目の前に迫っている不愉快な現実を忘れるために、我々が常々頼る手段といえば、飲酒や食べることで気持ちを紛らわしたり、ギャンブルやゲーム、買物やセックスに夢中になることだったりする。

ことに未解決型愛着スタイルの人は、こうした依存症になりやすいといえる。

未解決型愛着スタイルの人は、いっぱいいっぱいになりやすく、自分を振り返る余裕がない

未解決型愛着スタイルの人は、エンジンの一つにトラブルを抱えた飛行機のようなものである。

もう一つのエンジンで、一見すると問題なく飛行できているように見えるが、余力がない。

負荷がかかってさらに出力を必要とするようなときに、抱えている脆さが露呈する。

急に失速したり、飛行が不安定になる。

慌てて、もう一つのエンジンを吹かそうとすると、火を吹いてしまう危険もある。

無傷の状態であれば、やすやすと対応できることも、いっぱいいっぱいになっているためコントロールを失ったり、爆発してしまうこともある。

愛着の安定化のためには、振り返る力や相手を思いやる力を高めていくことが大事なのだが、未解決型愛着スタイルの場合には、目の前のことを考えるのがやっとなため、短絡的な判断や行動をしてしまいやすい。

そのことが、関係の安定化よりも悪化をもたらし、支援することを難しくしてしまう。

助けようとしている人を攻撃したり、拒否したりしてしまうことも起きやすい。

そうした反応にも振り回されない、熟練した専門家のサポートが必要である。

未解決型愛着スタイルの二つのタイプ

未解決型と呼ばれるタイプにも、大きく二つのサブタイプがある。

一つは、未解決型愛着スタイルととらわれ型愛着スタイルが同居しているケースで、未解決な心の傷が絡んだ部分以外の対人関係全般においても、傷つきやすく、過剰反応しやすいタイプである。

しかし同時に、孤独には耐えらえず、依存できる人を求めていて、実際、依存対象である人物にすがって生きている。

にもかかわらず、思い通りにならないと、自分が依存している相手を攻撃するという行動パターンをとる。

親との関係は不安定で、表面的にいい親子関係を装っている場合でも、親と会うたびに自分が愛されていないと感じて落ち込むことが多い。

もう一つのサブタイプは、未解決な愛着の傷を引きずりながら、人と距離をとることでバランスをとろうとするタイプで、未解決型愛着スタイルと回避型愛着スタイルが同居するタイプである。

恐れ・回避型愛着スタイルと呼ばれるタイプに、おおむね一致する。

誰にも気持ちを許せないし、甘えることもできないのだが、回避型愛着スタイルとは違って、他人の反応に無頓着というわけにはいかない。

他人の顔色が過度に気になってしまう面も持つ。

他人とかかわると、また嫌な思いをするのではという不安や恐怖のために、他人と親密な関係をもつことができない。

本来は回避型愛着スタイルではなかった人が、愛着の傷を受けて、回避的戦略をとるようになったと考えられる。

それゆえ、相手が自分を受容してくれる存在だと確信できると、このタイプの人は、心を開き、つながりをもつことができる。

一口に未解決型愛着スタイルといっても、特性が大きく異なるので、両方のタイプに分けて論じた方が有益だろう。

1.未解決・とらわれ型愛着スタイル

未解決型愛着スタイルととらわれ型愛着スタイルが併存するタイプでは、些細なことがきっかけで、気分や態度が変動する情緒不安定な傾向と、自分を損なうような行動をわざわざしてしまう自己破壊的行動が特徴的である。

それが強まって、生活が破たんしてしまった状態が、「境界性パーソナリティ障害」であるが、境界性と診断されるほどではないものの、そうした傾向を抱えている場合には、未解決・とらわれ型の愛着スタイルがベースにあることが多い。

2.未解決・回避型愛着スタイル

未解決型愛着スタイルと回避型愛着スタイルが併存するタイプである。

不登校や引きこもりのケースに少なくない。

親や家族が安全基地とならず、逆に本人を傷つけたり振り回したりして、力を削いでいる。

過度の支配によって、やりたいことをやらせてもらえず、やりたくないことをやらされたという状況も多い背景である。

また、イジメなどの体験が、さらに愛着にダメージを与え、人に対する安心感や自己肯定感を脅かしていることも多く、殻に閉じこもることでかろうじて自分を守ろうとする。

夫婦間の争いや離婚問題で、本人が傷ついていたり、親(配偶者)の病気や死によって、強い不安や衝撃を受け、そのつらさを克服できていない場合もある。

問題に向き合うことができず、何事もないかのように問題に蓋をしてバランスをとっているが、無気力や、人生に対する消極的な態度が見られることが多い。

トラウマとなる傷・愛着への手当て

未解決型愛着スタイルの人では、心の傷となっている体験を引きずっている。

ときには、その傷は現在進行形で、今も同じ状況が続いていることもある。

過去のトラウマとして終わっておらず、今もトラウマを生み続けているのである。

親子関係や夫婦の問題が絡んでいる場合には、こうしたことが起きやすく、本人の状態が安定し、前向きに変化していくためには、過去の傷への手当てにもまして、まずこれ以上傷を生み続けないように、現在の親子や夫婦間の愛着関係に手当てをすることが必要不可欠となる。

不安定な母親に振り回されてきた愛着障害の高校生のケース

高校二年の男子生徒が、欠席が続き、家から外に出ることもなくなって、ひきこもりがちになっていると、母親と共に相談にやってきた。

母親は、学校で何かあったのではないかと疑っており、実際に愛着障害の少年は中学のときには、いじめを受けて学校に行けなくなっていた。

また、最近よく耳にする発達障害かもしれないので検査もしてほしいと希望された。

愛着障害の少年にはたしかに軽度な発達の偏りはあるものの、それ以上に気になったのは、エゴグラムという検査で、AC(Adapted Child)という指標が突出して高いことだった。ACは、「親の顔色を見て合わせる子ども」の部分であり、親に支配されて育った、いわゆるアダルトチルドレンでも高いことが知られている。

愛着障害の本人の口から、母親のことが語られたのは、少し元気になった頃のことであった。

母親は愛着障害の少年が小学四年ごろより不安定になり、落ち込んだり、死にたいと言ったりするようになった。

愛着障害の少年が中学の頃からはとくにひどくなって、最近もそうしたときがあるとのことだった。

愛着障害の彼は母親のことが心配で、学校にいても気が気でなく、また帰るときは、母親がどうなっているかと思うと、はらはらしてしまうという。

愛着障害の彼が学校に行きづらくなった要因として、母親の不安定な状態に振り回されていた状況も見えてきたのである。

その後、母親へのサポートにより、母親が安定したことで、愛着障害だった本人の状態も落ち着いていった。