反抗期に進路変更ができないと、期待された役割を生きる自分の延長線上にしか、自分を形成できなくなってしまいます。

自分の思いとは裏腹に期待された役割を生き続け、その結果、期待された役割を生きる自分をますます強固に完璧にしていくことになります。

その一方で、内的衝動や内面の屈折した思いが強まっていきます。

このために、内的自己こそ「本当の自分」と感じ、内的自己に救いを求めるようになります。

内的自己によって、自分が価値ある存在だという感覚を得ようとします。

こうしたことで外面と内面のギャップがますます拡大していきます。

このギャップに対して残された対処の道は、イギリスの天才的な精神医学者レインのいうところの絶縁と離断ということになります(R・D・レイン著 阪本健二他訳『引き裂かれた自己』みすず書房)。

絶縁

絶縁とは、自分を外界と切り離すことです。

すなわち、外界は「本当の自分」とは関わりのない世界とみなすことです。

たとえば、物事に感情的に入り込まない、何かを感じようとはしない、物事は関与することではなく、ただ処理すべきものとして受けとめるなどです。

「本当の自分」とかかわりが無いのなら、外界では何が起きても、自分が脅かされることはありません。

外界の出来事で傷つくこともありません。

感情を揺るがされることもありません。

こうして外界に参加はしても、そこでの出来事が現実的なものとして自分に影響することがないようにするのです。

絶縁は心理的作用として生じますが、じっさいに外界との接触を狭めたり、接触を断つという行動として表れる人もいる。

たとえば、親しい関係を作らない、孤立する、馴染みにならない、自分からは何もしない、生活を狭く限定するなどです。

「本当の自分」は自分の中にこそあるのであり、外界は自分が存在する場所ではありません。

期待された役割を生きる自分で対応する外界は、偽りの世界であり、したがって、そこでの生活は偽りの生活でしかありません。

一方、「本当の自分」と信じている世界は、外界と切断されており、実在するものではありません。

こうして、絶縁は自分を保持し、取り戻そうとする試みではあるのですが、現実には自分を失うことになります。

そのうえ、親への回帰を導き出し、かえって親に取り込まれることになります。

なぜなら、外界こそが親に束縛された自分を解放してくれるものだからです。

友達に支えられ、友達と結託して、子どもは親に対抗し、親から自分を取り戻し、自分を作っていくものなのです。

離断

離断とは、「本当の自分」と「偽りの自分」との間を切り離すことです。

すなわち、他の人に見せる自分は自分ではないなら、自分に起こったどんなことにも耐えられます。

他の人には見せない内面の「本当の自分」だけが自分なのであり、外界に適応する「偽りの自分」は、もはや自分とは関係のない存在となります。

こうなると、適応して生活している自分の価値は失われ、内に秘めた自分だけに価値があるということになります。

こうして、「本当の自分」と「偽りの自分」とは、ますます乖離した存在になります。

しかし、離断は、適応した生活を捨てさせることにはなりません。

逆に、「偽りの自分」をより徹底するようになるのが通常の姿です。

それは、私たちは現実に生きていかなければならない存在だからであります。

そこで、「本当の自分」も期待された役割を生きる自分も、それぞれがある程度の自立性を持って機能し、発達していくのです。

絶縁や離断は、心中密かに実行され、期待された役割を生きる自分での生活は、「本当の自分」を隠蔽して他の人から「本当の自分」を見透かされないように営まれます。

そのために「偽りの自分」の提示は完璧で強迫的なものになっていきます。

こうした人は、自分ではなく、役割を生きていることになります。

そのために、役割が不明確な場面や、どのような役割を演じればよいのかが分からない未知の場面におかれると不安になるのです。

一方、「本当の自分」の自律性は、自分の心の中の価値を実現しようとする傾向が強くなります。

たとえば、自分の考えに対して誠実であることや、理想的自分を追い求めることなどを、厳しく自分に求めます。

このために、徹底的に自分を客観的に分析しようとしたり、自分自身に対して過度の理想主義を押しつけたり、完璧主義に陥ったりする傾向があります。

こうした内なる秘密の「本当の自分」は、「偽りの自分」を憎んでおり、また恐れてもいます。

なぜなら、「本当の自分」とは異質な「偽りの自分」が、つねに「本当の自分」を脅かすからです。

また、「偽りの自分」が、「本当の自分」の欺瞞性を暴露してしまう危険があるからです。

こうして、「偽りの自分」と「本当の自分」との分裂はますます深まり、自分のなかで統合しがたいという思いが強くなっていきます。

※参考文献:「いい人に見られたい」症候群 根本橘夫著