演技性や反社会性とともに、人を惹き付ける上で力を発揮するのが自己愛性である。

自己愛性の本質は、自分を神のように感じる誇大な自己意識とそれを裏付けるための強い自己顕示欲求である。

万能の神であるがゆえに、どんなことでも達成できるような自信と、堂々とした揺るぎない態度も特徴である。

それゆえ、自信のない人や判断を頼りたい人から見ると、とても信頼できる存在に思える。

「任せなさい。私があなたを救ってあげましょう」と確信をこめて言われると、お願いしようかなと心が動くのである。

自己愛性の人は、自分のことを大変な重要人物だと思っているので、自らそうした態度を取る。

すると、不思議なもので、周囲もそれにいつのまにか合わせて、その人を重要人物として扱うようになる。

あんなに偉そうにしているのだから、偉いに違いないと思ってしまうのだ。

態度の大きさに気圧され、周りはつい平身低頭してしまう。

当然のごとく要求されると、応じるしかないという錯覚に陥り、言いなりになってしまう。

押しが強く、強引で、逆らいでもすれば、怖い顔で、とんでもない大罪でも犯したように罵られる。

気の弱い相手は、蛇ににらまれたようなもので、体がすくんで何も言い返せない。

自己愛性の強い人が、相手に接近しようというときも、その特徴がよく出る。

自己愛性の人は、興味をもった相手には、小細工など弄さず、堂々と近づいていく。

しっかりと相手を見据え、近すぎるくらいまで接近する。

そのまなざしは、親密さというよりも、どこか見下したような、つまらないものでもみるような尊大さやあざけりを含んでいる。

相手が凝視に堪えきれず、戸惑い、不快に感じて目をそらしたりすれば、もう術中にはまりかけている。

このタイプの人にとって、相手のプライドをくじくことが、最初の勝負に勝つことなのである。

相手は、この人は何者だと思い、自分が軽くあしらわれたように感じ、そうした扱いをする存在が気になってしまう。

そうして近づいてきた相手から、褒められるにせよ貶されるにせよ、影響力を及ぼされやすくなるのだ。

言い当てる技術

親しみや信頼を獲得するうえで原則となるのは、応答性である。

相手の話によく耳を傾けるとともに、相手の反応に的確に反応していく。

それによって、相手に自分のことを受け止めてもらえていると感じさせることである。

そうした原理とも関係するが、マインドコントロールの基本的な技法に、イエス・セットと呼ばれるものがある。

それは、相手が「そうです」「そのとおりです」とイエスで答えるほかないようなことを、こちらが言えば言うほど、相手の信頼が高まり、親密さが生まれるという経験則に基づく技法である。

基本的なことを守れば、誰にでもできる技法だ。

相手が間違いなく、イエスと答える質問をするためには、相手が言っていることを、そのまま質問文にすればよい。

たとえば、相手が、あることを好きだと言っていたとする。

それに対して、「〇〇がお好きなんですよね」と言う。

すると、相手は、「そうです」と答えるほかない。

肯定的な答えが返ってくることで、こちらも、さらに質問を投げかけやすくなる。

「どうして〇〇がお好きなんですか」と言った具合に、話しを深めていきやすくなる。

いきなり立ち入った質問をされても抵抗が生まれるが、自分がイエスと答えてしまってからだと、つい答えてしまう。

イエスと答えるのが、もっと積み重なると、さらに相手に対する信頼度や好感度が増しやすい。

相手が話していることや、相手の表情を注意深く見守りながら、相手がイエスと答えそうな質問を慎重に投げかけていく。

これが親密な関係に入っていくのに有効な基本的技法なのである。

あらかじめどこかで本人について情報を入手できれば、”言い当てる”ということもできる。

「もしかして、〇〇がお好きなのでは?」
「ええ、そうです。よくわかりましたね」
「実は、私は××によく行っていたんですよ」
「本当ですか。私も××にはよく行きました」

といった具合に、偶然の一致があると、特別な出会いに思えて、親密さは一段と高まる。

逆に、相手が何か言うと、それにすぐ異を唱える癖がある人がいる。

「でも」とか「というか」とか、「そうかな」とか、「ちょっと違う」とか、違いの方を自分から強調してしまう人は、相手に拒絶や否定のメッセージを送っているということを自覚しよう。

あまり意味もなく、言ってしまっている場合は、とても損な口癖である。

印象を悪くし、知らず知らず信頼も親密さも壊してしまっている。

少し違っていても、同じところを見つけて、「~と言われたけど、私も同感です(その通りだと思います)」と同じ点を強調するようにした方が、人間関係はずっとうまくいく。

※参考文献:対人距離がわからない―どうしてあの人はうまくいくのか― 岡田尊司著