我々は低い自己評価に打ち勝つために権力を要求することがある。

権力を得ることで、低い自己評価を回復しようとするのは、政治学者のラスウェルの言葉を借りれば、「政治的タイプの人間」である。

しかし、人々は、このように積極的な努力によって心の底の低い自己評価に対処しようとするばかりではない。

もうひとつの対処の仕方は、人間関係へアクティブに参加することから退くことであると、ラスウェルはいう。

ただこの場合、自分一人が人間関係から身を引いて対人恐怖症、社交不安障害やうつ病のようになっているのなら、その人自身の問題である。

しかし、この人が家庭の中にその問題を持ち帰ると、妻子の精神の歪みの原因になっていく。

分裂病患者を生み出す家庭の父親は、外の世界で男として自信喪失し、家人に不断の称賛を要求するからである。

自分の低い自己評価について、人がどのように反応するかということは、その人をとりまく条件や、その人の性格によって異なろう。

いかに、権力をえることが、低い自己評価を補完するのに有効であるからといって、臆病な人間が、そのような努力をするはずがない。

その結果、おそらくは、家人に不断の称賛を要求するということになるだろう。

しかしいずれにしても、これらの方法によって、低い自己評価から高い自己評価に変わることはないであろう。

低い自己評価を本質的に解決するためには、ありのままの自分を受け容れてくれる人を探すことである。

実際の自分を心から受け入れてくれる人を見つけることは、対人恐怖症、社交不安障害を克服したい人にとって、巨大な権力を得ること以上に、自己評価を高めるのに有効である。

そして、これこそ心の底の低い自己評価から生じる、さまざまな悩みを解決する最良の手段である。

※参考文献:自分を嫌うな 加藤諦三著