親の不在や養育者の交替が、愛着に傷跡を残すことは否定しがたい。

しかし、養子になった人が、すべて不安型の愛着スタイルを示すわけではないし、親がいなくても、親代わりの人に育てられ、安定した愛着スタイルを育む人も少なくない。

逆に、実の親によって育てられても、不安定な愛着スタイルを示す場合もある。

むしろ、昨今増えているのは、そうしたケースである。

特別に問題のありそうにないふつうの家庭で育った子どもでも、三分の一が不安定型の愛着パターンを示し、大人のおよそ三分の一にも、不安定型愛着スタイルが認められている。

こんなにも多くの人が、幼い頃に親との離別や死別、あるいは養育者の交替を経験していないことは明らかであるし、虐待を受けていたとも考えにくい。

では、いったい、そこには何が関わっているのだろうか。

それについて、わかってきたことの一つは、親の愛着スタイルが子どもに伝達されやすいということである。

愛着スタイルは、さまざまな対人関係に影響するが、ことに、親になったときに、子どもとの関係において覿面にあらわれやすい。

数多くの研究によっても、親の愛着スタイルが子どもの愛着パターンに大きく影響することが裏付けられている。

つまり、不安定型の愛着スタイルをもつ親に対して、子どもは、不安定型の愛着パターンを示しやすいのである。

ことに、母親の愛着スタイルと子どもの愛着パターンは密接に関係し、母親が不安定型の愛着スタイルをもつ場合、子どもも母親との間に不安定型の愛着パターンを示しやすいことが明らかとなっている。

また、養子となった子どものケースで、実の母親と養母のそれぞれが子どもにもたらす影響を比べてみると、実の母親の愛着スタイルよりも、養母の愛着スタイルの影響の方が、ずっと大きいのである。

つまり、実の母の愛着スタイルが不安定型であっても、育ての親が安定型ならば、子どもの愛着パターンも安定型となりやすい。

逆もまた真なりである。

繰り返しになるが、遺伝的要因よりも養育環境の影響が大きいのである。

もちろん、母親の愛着スタイルがもっとも影響が大きいものの、父親の愛着スタイルやその子の養育に関わった他の人物の愛着スタイルも影響を及ぼす。

父親と母親で愛着スタイルが異なっている場合には、安定型の愛着スタイルをもつ方の親との関係が、不安定型の方の親との間に生じやすい不安定型の愛着パターンを補ってくれることもある。

また、その後出会う人との関係によって、修飾や修正を受け、十代初めごろに愛着スタイルとして固定していく。