私達を過去に縛りつけているものは、家族の秘密だけではありません。

子ども時代から家族の中で演じてきた役割も、あなたの人間関係を一定の枠に閉じ込めています。

自分に割り当てられていた役割を変えることで、あなたは他の人との関わり方を変えることができます。

家族内での役割については、さまざまな専門家がさまざまな名づけ方をしています。

ここでは、次のように分けましょう。

◆リスポンジブル・チャイルド(責任を負う子、ヒーロー、一家の柱、小さなおとな、優等生)

◆アジャスター(順応者、ロスト・チャイルド、忘れられた子、いないふり)

◆プラケイター(なだめ役、世話焼き、家庭内ソーシャルワーカー)

アクティング・アウト(問題児、行動化する者、スケープ・ゴート、いけにえ)

人は皆、生き抜くための強い力をもって生まれてきます。

私たちの子ども時代には、まさにこの力が必要でした。

周囲が安全でなく、しっかりとした枠組みや秩序が存在せず、次にどうなるか予測がつかないとき、少しでも安全を確保するために子どもはできる限りのことをするのです。

これが生き延びるための役割の土台となります。

どの役割も、その子どもにとって、そして家族にとって、何か得になる面を持っています。

責任を負う子は、家族の混乱状態に秩序をもたらすため、物事を一生懸命管理しようとします。

そうすれば次に起こることが少しは予測出来るようになり、生活は少しは安定したものになります。

たいていは学校の成績もよく、周囲から評価が得られます。

順応者はもっと受身の役割を取り、気配を感じさせないことで家族の安定に貢献します。

何かを願ったり要求したりせず、自分の周囲には感情を通さないバリアを張ります。

そのことによって過酷な状況に順応し、火の粉をかぶらないですむよう身を守るのです。

なだめ役は他の家族の情緒的なニーズに応え、苦痛を軽減しようと努めることで、少しでも自分の安定を保とうとし、自分の痛みから目をそらします。

人にやさしくすれば周囲から好かれるし、良い意味で関心を向けてもらえます。

アクティング・アウトは家族に代わって「助けて!」「自分たちを見て!」と声をあげる役目を果たします。

アクティング・アウトはそのことで自分にとって得になるのは、声をあげることで注目してもらえることです。

アクティング・アウトは悪いことをすれば悪い意味で注目されるわけですが、それでも多くの子どもは、まったく関心を持ってもらえないよりましだと感じるものなのです。

多くのおとなは自分を振り返ってみて、ひとつの役割ではなく、いくつかの役割を組み合わせて演じていたことに気づくものです。

たいていの人は、主となる役割があり、何かの状況では別の役割で行動します。

たとえば自分はアクティング・アウトだった気がするけれど順応者でもあったかもしれないという人もいるでしょう。

なだめ役であると同時に責任を負う子でもあったという人もいます。

自分の役割について探っていくには、あてはまると感じるそれぞれの役割を、別々に見ていくことが役に立ちます。

組み合わせで考えるよりも、役割の特徴がはっきりしやすいからです。

人はおとなになっても、子ども時代の家族の役割を引きずっています。

子ども時代にずっと責任を負う子を演じていた人は、おとなになっても同じように行動していることが多いでしょう。

アダルトチルドレンを抱えていたモナがまさにそうです。

彼女は非常な努力の末にロースクールを優等で卒業しました。

三十二歳の時にはもう弁護士として個人開業していました。

ただし彼女が個人で事務所を持ったのは、チームとして働くことができなかったからなのです。

いつもすべてを自分で管理していないと気が済みませんでした。

人の言う事を聞けなかったし、決断を下す上司の存在は怖かったのです。

その頃には、彼女の三度目の結婚は暗礁に乗り上げ、女性の友達は誰もいませんでした。

彼女が自分の役割を頑固に守り続けた結果がこれだったのです。

自分が順応者だったと感じる人は、今でも誰かに物事を決めてもらいたがっていることでしょう。

アダルトチルドレンを抱えたスティーブは将来について漠然とした希望や夢を持っていますが、自ら決断を下すのが怖くてたまりません。

どんな過酷な状況にも適応するため、大きな会社で働くのが自分には向いていると感じています。

上司に命じられれば、彼は何でもその通りにやります。

彼の部署では三年の間に、部長が三回も代わりました。

同僚たちはパニックになりましたが、彼は明日をも知れぬ状況に順応しました。

結婚して三年になる妻は、最初のうちこそ彼が熱心に話を聞いてくれることや、「柔軟」なところが気に入っていましたが、やがて彼にとっては恐ろしいことを要求するようになりました。

自分の信念で行動しろ、考えをきちんと口に出せというのです。

彼はあまりに人のいいなりでした。

短い間に何度も転勤を命じられて夫婦で引っ越しを重ねましたが、最後に妻は一人で残ることを選び、彼は単身、別の市へと移ったのでした。

なだめ役はおとなになっても、周りの人達の情緒的なニーズの面倒をみ続けます。

アダルトチルドレンを抱えた三十ニ歳のエミリーは、今でも家族の仲裁をしています。

彼女は昇進の機会を二度もふいにしましたが、それというのも自分が町を離れたら「誰がママを守るのよ?」という理由からなのです。

こうした役割は、子ども時代には明らかな利点があったのですが、弱点が姿を表わすのはおとなになってからです。

アクティング・アウトは何らかの直接的な介入を受ける可能性が最も高くなります。

アクティング・アウトは若い時に社会的なトラブルを起こしやすいからです。

そして病院や刑務所といった場所に放りこまれることが多くなります。

アクティング・アウトはアルコールや薬物の乱用はよく見られる行動で、依存症になる人もたくさんいます。

アクティング・アウトの四十五歳のパティは、いまだに怒りを不健康な行動で表しています。

大学を出ているのに、専門分野での仕事をだめにし、酒場の仕事で生活を支えています。

けんか腰の態度で有名で、権威ある人とみれば誰にでも、警察官から自分の雇い主にまで、突っかかっていくのです。

そのためアクティング・アウトのパティがいるのを喜ぶ人はほとんどいなくなり、彼女は自分でも嫌われているとわかっています。

もちろん、酒や薬物をやめて回復している人はたくさんいるし、すべての問題児が依存症になるわけではありません。

自分の傾向をむしろ生きる上での強みに切り替えて、社会で活躍している人達も多いのです。

※参考文献:子どもを生きればおとなになれる<インナーアダルト>の育て方 クラウディア・ブラック著 水澤都加佐監訳