「つらい体験をよく思い出しますか?」

子ども時代のネガティブな体験(悲しい、腹立たしい、不安な)を思い出すように言われたとき、思い出すのにかかった時間(潜時)を比べると、回避型愛着スタイルの人は、ネガティブな体験の回想に長く時間がかかる傾向がみられた。

逆に不安型愛着スタイルの人は、ネガティブな体験はすぐに思い出すことができるのに、楽しかった記憶を思い出すように言われると時間がかかった。

安定型愛着スタイルの人は、ちょうどその中間の潜時を示した。

つまり、回避型愛着スタイルの人は、ネガティブな記憶へのアクセスが抑制されていると言える。

逆に不安型愛着スタイルの人は、ネガティブな記憶が過剰に活性化され、逆にポジティブな記憶へのアクセスが抑えられている。

安定型愛着スタイルの人は、どちらの記憶にも同じようにアクセスすることができる。

さらに、不安型愛着スタイルの人は、悲しい体験を思い出すように言われると、怒りや不安といった他のネガティブな感情も掻き立てられる傾向がみられた。

安定型愛着の人は、そうしたネガティブな感情の波及があまりみられなかった。

しかし、安定型愛着スタイルの人でさえも、ネガティブな体験を思い出すと、作業能率に影響したが、回避型愛着スタイルの人にはあまり影響しなかった。

というのも、回避型愛着スタイルの人が思い出す「悲しい」体験は、あまり悲しくない、底の浅い体験だからである。

本当に「悲しい」体験を思い出し、語ることには、強い抵抗を示すのである。

回避型愛着スタイルの人は、ネガティブな体験の想起に対して強力な防衛が働く。

グループセラピーなどの場で、自分の体験を話してもらうと、この違いは顕著である。

不安型愛着スタイルの人は、母親が自分を見捨てて出て行ったときのことを生々しくカミングアウトしたり、親友が事故で亡くなった体験を涙ながらに語るのに対して、回避型愛着スタイルの人は、もっと悲惨な体験をしているにもかかわらず、飼っていたカメが逃げ出して干からびて死んだ話をしてみんなを笑わせたりする。

傷ついた体験に向かい合うのを極力避けようとするのである。