自分のニーズを満たすためには、限界と境界を設定することが必要になります。

問題を抱えた家族で育ったということは、子ども時代に境界を尊重されず、物事の限界を教えられなかった、ということを意味します。

こうした中で生きてきた結果、私達は境界を設定する方法を身につけていなかったり、限界を超えて何かにのめりこんだりします。

また、他人の境界を尊重できずに侵入してしまいがちなのです。

境界とは、あなたを他の人から独立した存在として区別するためのラインです。

私たちは一人一人、皮膚によって区切られていますが、それだけではなく、どこまでが心理的・身体的に安全な領域かというラインがあります。

情緒的な境界は、まさに私達自身を形づくり、私達の考え方や感情や自分の価値を決めるものです。

感情の境界を設けるとは、他の人が自分をどんなふうに扱うことを許すのか、選択することです。

スピリチュアルな境界は、私達の魂の奥深くにある真実にまつわるものです。

私たちの魂の成長は、内なる自己によってもたらされます。

その道筋を知っているのは自分だけです。

性的な境界や限界は、何が安全で適切な性的行動かを教えてくれます。

誰と、どこまでの性的な関係を持つかは、自分で選ぶことなのです。

人間関係の境界もあります。

私達が人間関係上でとる役割は、どれぐらいの深さで他人とつながるのが適切かを決めるものです。

知的な境界は、学んだり教えたりすることを楽しむ機会を与えてくれます。

この境界があってこそ、好奇心を抱いたり知的に刺激されることが可能になるのです。

身体的な境界は、私達が安全と健康を保つために必要なものです。

私達は不健康な境界の中で育ったために、自分を傷つけるような境界の持ち方がふつうのことになっていたり、境界のねじれに気付かないことが多いのです。

次にあげるのは、さまざまな種類の境界への侵害と、健康な境界の在り方です。

感情を否定される。
こう感じるべきだと言われる。
激しい怒りをぶつけられる。
人格を非難される。
軽視される。
期待を向けられない。
恐怖を与えられる。
情緒の境界がおかされた状態
ありのまま感じることを許される。
感じ方を強制されたり指示されない。
怒りは言葉で伝えられ、激怒をぶつけられない。
具体的な行動の指摘を受けるだけ。
価値ある存在として扱われる。
関心を注がれ期待を伝えられる。
安全を感じられる
健康な境界が守られた状態
自分を曲げて他人に迎合させられる
運命は残酷だと信じ込まされる
精神的な導きが得られない
祈りや感謝を教えられない
スピリチュアルな境界がおかされた状態
自分にとって大切なことを守れる
希望を信じられる
自分を高め、磨くためのものが得られる
祈りと感謝が自分の中に育っている
健康な境界が守られた状態
男/女として生まれたのを喜ばれない
性について間違った情報を与えられる
性的な批評や興味の対象にされる
性が他人を喜ばせるため利用される
性的な境界がおかされた状態
男/女として生まれたことを祝福される
健康な性の情報を与えられる
他人からの批評や好奇の目にさらされない
性を自分のものとして大切にできる
健康な境界が守られた状態
他人の要求に応じなければならない
他人の意見に従わなければならない
他人が察してくれるのを待つ
近づいてくる人とすぐ恋に落ちる
人間関係の境界がおかされた状態
いつでも要求に応じる必要はない
自分で判断して意見を言える
自分の望みを言葉にできる
どれだけ親密になるか自分で決められる
健康な境界が守られた状態
情報を与えられない
間違うことを許されない
質問することを歓迎されない
愚か者扱いされる
親の夢をかなえるよう推励される
知的な境界がおかされた状態
情報を与えられ自分で判断できる
間違いから学ぶことができる
質問したり意見を求めることができる
自分の考えを持った人として扱われる
自分の価値観を育てられる
健康な境界が守られた状態
健康維持の方法を教えられない
なでてもらえない
嫌なのに触られる
殴られたり、押しのけられたりする
身体の境界がおかされた状態
健康な日常生活の方法を学べる
愛情や励ましをこめてなでてもらえる
望まない時は触られるのを拒否できる
身体を大切に扱われ、決して暴力を受けない
健康な境界が守られた状態

境界は、私達が何を望み、何を望まないかという宣言でもあります。

そして他人が私たちに何をしてもよくて、何をすることは許さないかという線引きの役目もします。

子どもだった頃、あなたは境界の侵入から自分を守るすべを持っていませんでした。

侵入を受け―つまり利用され、虐待され、暴力にさらされて―、自分には価値が無いし、人間ではなく誰かの所有物のように扱われていると感じたかもしれません。

きちんと主張できない自分がいけないんだとか、弱虫なんだと思いこんだかもしれません。

けれど今、おとなになったあなたは、境界をつくって補強することができるし、それは内面的な強さを与えてくれます。

健康な境界を確立するための準備運動として、これまで受けてきた境界の侵害を振り返っておくことが役立ちます。

●子ども時代のあなたにとって重要な役割を演じていた人々を思い浮かべて、その一人一人について、六つの分野の境界がどうなっていたか、振り返ってください。

あなたが体験した健康な境界や不健康な境界について書き出しましょう。

●同じ作業を、今のあなたの生活で重要な位置を占める人々についてやってみましょう。

不健康な境界に気づくことは、より健康な自分になるため境界を見直すのに役立ちます。

健康な境界とは柔軟で、何を自分の中に入れて何は入れないことにするか、場合に応じて選択できるものです。

そして限界は、境界を守るための具体的なスキルです。

たとえば、人間関係の境界を守るためには、特定の相手に対してどれだけの時間とエネルギーを使うか限界を決めることが役に立ちます。

境界は、他人を締め出すような固い壁である必要はなく、柔軟なほうがいいのです。

どこに境界を設定するかは状況に応じて変わり、たとえば見知らぬ人は中に入れないし、親しい人なら迎え入れるというように、適切に対応すべきものです。

自分らしさを損なわれないようにしながら、一方で新しい考え方もオープンに受け入れる必要があります。

健康な境界とは、孤立することなく自分を守り、縛られることなく自分を適度に抑えるものです。

境界は、私達の生活に秩序をもたらしてくれます。

境界があってこそ自分のニーズを満たせるし、これ以上、自己否定感を心にとりこまずに済むようになります。

境界を育てることは、あなたが身体的・心理的に心地よく感じるエリアを発見することであり、何が好きで、何が嫌いかを発見することです。

境界がしっかりするにつれ、自分がどんな人間で、周囲とどんな関係をつくっていきたいかが明確になるのです。

拒絶されることへの怖れや、人から承認されたいという思い、怒りへの怖れは、境界や限界をつくろうとするときに立ちはだかる大きな障害です。

境界設定のスキルを練習したのに、実際にはうまくいかないという場合は、この課題に焦点を当ててみてください。

つまり自己確認の練習をしたり、怒りという感情について子ども時代からもう一度振り返ってみることです。

境界を確立する練習は、さらに別の課題にも気づかせてくれるでしょう。

それは「ノー」と「イエス」を使い分ける力です。

多くの人にとって、子ども時代にノーと言うことは安全ではありませんでした。

自由にノーと言う事が許されない状況では、イエスは非常な怖れと無力感をともなうものであったり、あるいは承認され愛されるための必死の努力でした。

中には、ノーという言葉がイエスの意味だとみなされる家庭で育った人もいて、そんな場合、おとなになっても周囲の人のノーに耳を貸すことができません。

問題を抱えた家庭では、ノーとイエスの使われ方をめぐって、しばしば苦痛と混乱が生じていました。

その痛みに気づくことが必要です。

これまであなたが何度も何度も、ノーと言いたいのに言えなかった(そのたびに怖れからイエスと言っていた)ことや、それにともなう怒りと痛みを、繰り返し語って下さい。

相手にノーと言ってもらうことが必要だったのに、あなたが聞いたのはイエスだったという体験がどれぐらいあったかも、確認しておく必要があります。

たとえば、自分や相手を傷つけるような行動をきちんと指摘してほしかったのに、何も言ってもらえなかったことなどです。

アダルトチルドレンからの回復の中で、あなたはノーという言葉が自分を守る仲間となってくれることに気づくでしょう。

それはあなたに選択肢を与えてくれるのです。

ノーを使い慣れるにつれて、他人の境界も意識できるようになります。

私達はみな、ノーとイエスを使い分ける力と権利を持っています。

イエスという言葉が怖れや承認の必要性で口に出されるのではなく、自由に行使できる権利となることを私は願っています。

そして、私達がノーと口に出す時、本当は自分自身に向かってイエスと肯定していることを願っています。

限界を設けたり境界を確立することに回復の4ステップを使う例をあげておきましょう。

ステップ1.あなたが子ども時代に体験した、健康な境界と不健康な境界とを書き出してみましょう。

その体験にともなう痛みを止めずに感じてください。

ステップ2.こうした子ども時代の体験が、今のあなたにどんな影響を与えているか、書いてみましょう。

ステップ3.限界を設けることや境界を確立することについて、あなたが心の中に取り込んだ信念を見つけ出してください。

こうした信念は、今のあなたにとって害になっていますか、助けになっていますか?

あなたが手放したい信念と、これからも持ち続けたい信念とを分けましょう。

ステップ4.さまざまな境界のうち、あなたがもっと強めたいものと、柔軟にしたいものとをあげて下さい。

その課題を、一番安全(やさしい)と感じるものから難しいものまで順番にリストアップしてください。

最も安全なものから始めましょう。

一歩進むたびに、自分を大いにほめてあげてください!

※参考文献:子どもを生きればおとなになれる<インナーアダルト>の育て方 クラウディア・ブラック著 水澤都加佐監訳