ありがとうを言おう【大切】

しかるのでもなく、ほめるのでもない。
では、他に具体的にどんな選択肢があるか。

子供ではなく、対等なパートナーがあなたの仕事を手伝ってくれた時のことを考えれば、答えはおのずと出てくるでしょう。
たとえば友人が部屋の掃除を手伝ってくれた時、あなたはなんと声をかけますか?

そう、仕事を手伝ってくれたパートナーに「ありがとう」と、感謝の言葉を伝える。
あるいは「うれしい」と素直な喜びを伝える。
「助かったよ」とお礼の言葉を伝える。

これが横の関係に基づく勇気づけのアプローチです。

いちばん大切なのは、他者を「評価」しない、ということです。
評価の言葉とは、縦の関係から出てくる言葉です。
もしも横の関係を築けているのなら、もっと素直な感謝や尊敬、喜びの言葉が出てくるでしょう。

ほめられるということは、他者から「よい」と評価を受けているわけです。
そして、その行為が「よい」のか「悪い」のかを決めるのは、他者の物差しです。
もしも誉めてもらうことを望むなら、他者の物差しに合わせ、自らの自由にブレーキをかけるしかありません。
一方、「ありがとう」は評価ではなく、もっと純粋な感謝の言葉です。
人は感謝の言葉を聞いたとき自らが他者に貢献できたことを知ります。

他者から「よい」と評価されても、貢献できたとは感じません。

これは今後の議論にもつながってくるところですが、アドラーはこの「貢献」という言葉を非常に重く考えます。

たとえば、どうすれば人は”勇気”を持つことができるのか?アドラーの見解はこうです。「人は、自分には価値があると思えた時にだけ、勇気を持てる。」

劣等感について語り合った時

これは主観的な価値の問題なのだ、という話をしました。
「自分には価値がある」と思えるか、それとも「自分は無価値な存在だと思ってしまうのか。
もしも「自分には価値がある」と思うことができたなら、その人はありのままの自分を受け容れ、人生のタスクに立ち向かう勇気を持ち得ることでしょう。
ここで問題になるのは、「いったいどうすれば、自分には価値があると思えるようになるのか?」という点です。

それはいたってシンプルです。
人は「私は共同体にとって有益なのだ」と思えた時にこそ、自らの価値を実感できる。これがアドラー心理学の答えになります。

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共同体、つまり他者に働きかけ「私は誰かの役に立っている」と思えること。

他者から「よい」と評価されるのではなく、自らの主観によって「わたしは他者に貢献できている」と思えること。

そこではじめて、われわれは自らの価値を実感することができるのです。
いままで議論してきた「共同体感覚」や「勇気づけ」の話も、すべてはここにつながります。

いま議論は核心に迫りつつあります。しっかりとついてきてください。
他者に関心を寄せること、そして横の関係を築き、勇気づけのアプローチをしていくこと。
これらはすべて「私は誰かの役に立っている」という生の実感につながり、回り回ってあなたの生きる勇気につながるのです。

対人恐怖症、社交不安障害を克服するにはありがとうを言おう。