”人のまねをして自分らしさを失わない”

外側から見れば同じことでも、心の世界ではそれぞれ違っている。
そして、その違いの中にあなたの固有な人生が見えるのである。

あなたが今まで「そのように」生きてきたということが、そのままあなたの固有の人生なのである。
あなたの過去を肯定するということはそういうことである。

だから、あなたは自分が今までしてきたことの中に「自分」を発見することである。
自分の過去を肯定的にみられるときに自分を発見できる。

私達は「できない」ということを「よくないこと」と思いがちである。
しかし、できないことが何でもかんでも悪いことではない。
時にはできないということが、その人がこれから長く生きていくことにとって望ましいことも多い。

イソップ物語風に説明すれば次のような寓話になる。

カエルが水際で楽しそうに飛び跳ねていた。
それを見たザリガニが羨ましくなって必死になって飛び上がった。

なんとか飛び上がれたが、一つできないことがあった。それは、水の中では跳ね上がれたけれども、カエルのように陸で跳ね上がれないことであった。

そこでザリガニは練習を重ねて、必死で飛び上がり、ついに陸の上に落ちた。

そして、ザリガニは水に戻れなくなって干からびて死んでしまった。

ザリガニは陸で跳ね上がれないからザリガニなのである。
できないことが自然なことなのである。
陸で跳ね上がれたらザリガニはザリガニでなくなってしまう。

あの長いしっぽ、たくさんある足、それを考えれば陸よりも水の中の方がいいに決まっている。
ザリガニはカエルのまねをすることで、どんどん自分らしさを失っていったのである。

ザリガニが飛び跳ねられないのを知ったときには、自分は何者であるかを知る機会であったのである。

自分が何かをできないときに、それは何事かを教えているのである。

「大概の人は、いわゆる不運とか失敗とかいう者に対する愚かな恐怖の中に生きて、そうしたものがどんな善きものでありうるかを知らない」

対人恐怖症、社交不安障害を克服するには時にはできないということが、その人がこれから長く生きていくことにとって望ましいことも多いので、それを探すことである。

※参考文献:自分の受け入れ方 加藤諦三著