感情を考えるツール

感情を「下げる」「触れる」などのアプローチを試みたのち、もし嵐が去ったと感じるなら、対象について「考える」ことをしてみる。

というのは、感情は落ち着いても、感情の影響が強い時に出した答えが変わっていないことが多いからだ。

偏った答えをそのままにしておくと、防衛(恨み)記憶に育ってしまう。

Fさんは、お母さんとのトラブルがあった夜、感情に触れてさらに冷静になった時に、もう一度お母さんのことを冷静に思考してみた。

あれが「考える」の段階だ。

ここでは二つの「考える」ツールを紹介します。

七つの視点

感情は、原始人的危機の感覚で、視点をゆがめる。

偏った視点で考えられた答えは、当然かなりゆがんだものになる。

通常は、今の感情は、ある人のせい、ある問題のせい、自分だけ不幸、とても大きな被害を受けているなどと感じている。

しかも本人は、それが偏っているとは思っていない。

自分で書いた文章のミスは、自分で見つけにくいのと同じだ。

そこで、意識的に、次の「七つの視点」を使って、対象について、改めて考えてみるという方法だ。

自分視点

自分というキーワードで思いつくことを考えてみる。

まずは、「〇〇だよね(感情を認める)」。

他にも「何をしようとしているのだっけ?(目的)」、「疲れている?(体調・蓄積疲労)」と、自分に問いかけてみる。

相手視点

相手の立場から考察してみる。

「彼はあの時何をしていた?」「あれから何をするところだった?」「何を伝えたかった?」「彼は何が不安?」など。

怒りの場合など、相手の立場に立とうとするだけで腹が立ってくることが多い。

その場合、中断して深呼吸を複数回行なうなどする。

第3者視点

感情は、自分と相手のことだけに意識を向けさせる。

そこで「他の人から見たらどう見える?」など、当事者でない、第三者の立場から考えてみる。

宇宙視点

これも空間的に視野を広めるための視点。「宇宙人から見たら、この出来事はどんな風に見えるか?」「グーグルマップのように、グーンとひいてから、今のトラブルを見ると?」など。

大きい視点で見ると、とても小さな人間関係であることに気が付きやすい。

時間視点

「一カ月後はどうなっている?」「一年後はどうか?」など、時間軸で物事をとらえる。

感情は今のことに集中している。

もっと時間的な視野を広げてみると、違う見方ができることがある。

感謝視点

感情はこの出来事を、とても悲惨でかつ命がかかるほど重大なことというトーンでとらえている。

あえて、「もし、この対象に感謝できるとすれば?」という観点で考えてみる。

被害者意識が緩むことがある。

ユーモア視点

同じく、過剰な危機感と被害者意識を緩める視点。

「コントにするとすれば?」「川柳にできないかな」など、笑える出来事になるように考えてみる。

そんな見方ができると、かなり危機感が薄れる。

七つの視点は、必ず全部、上手にやらなければならないというものではない。

自分にとって使いやすい視点と、そうでない視点があってもいい。

苦手を克服する訓練ではないので、使いにくいツールにこだわることはない。

これも、もし視点が広がったらラッキーという程度で試してみてほしい。

モデルの力

「感情のケア」と「現実問題解決」は別とはいえ、実際に「疲れる人物(自分を疲れさせる人)」にどう対応すればいいのか、その具体的な方法論が見えれば、気持ちもかなり収まってくる。

そこで、考える段階では、現実問題への対応を具体的にイメージする方法も有効だ。

実際に行動に移す時のヒントにもなるし、行動しなくても「こう対処すればうまくいくんだ」というイメージが持てれば、自信が回復し、感情も落ち着いてくる。

感情ケアには、イメージを使うスキルが有効だが、ここでは、同じ場面でも他の人だったらどうふるまうかをイメージする方法を紹介しよう。

1.対象となるトラブルに対して、うまく対処できそうな人(モデル)を考えてみる。

2.今回のトラブルになった出来事(過去)や、今後その人とどう付き合うか(未来)のどちらかで、モデルはどう対処するかを、映画を見るように想像してみる。

この時モデルのしぐさ、言葉、表情などできるだけ具体的に想像するのがコツ。

自分だと想像できないような意外な解決方法を思いつくこともある。

3.その人の何が良いのか、具体的に言葉にしてみる。

4.その人の良い点がつかめたら、その人と自分が重なるイメージを持つ。

5.問題状況の中で、うまくふるまえる、ふるまえた自分をイメージする。

一人のモデルでうまくいかなかったら、違うモデルで試してもいい。

繰り返しているうちに、この種のテーマならこの人、というように、あなたの専属モデル集団が出来上がってくる。

モデルを試す時は、理想的な人、身近な人、場面にふさわしい人などから候補を考えるとやりやすい。

「タレントのローラのように、何でも”オッケー!てへっ”って笑い流すイメージになった」「先輩の〇〇さんのように、穏やかにやり過ごした」など、それぞれに自由にイメージを飛躍させている。

クレヨンしんちゃんや、ドラゴンボールの孫悟空などの、アニメキャラクターもよく登場する。

「理想のモデルのようになりたくても、実際はそうはいかない」「現実は、そのモデルでも無理だ」などと、考える必要はない。

重要なのは、現実問題にどう対処しようかという検討そのものよりも、やはり感情をどう収めるかだ。

現実とは別に、あなたの中で感情がわだかまっている。

あなたが誰かについて必死にあれこれと悩んでいる時、当の相手は、あなたのことなどお構いなしに、自分の生活を満喫していることが多いのだ。

感情はあなたの中で膨らみ、それを放置することで、結局現実にも影響する。

まずは、自分の中の感情のケアをすることだけを考えてみよう。

嫌なことがあっても、楽しい映画を見ると、すっきりしていることがある。

あれと同じだ。

相手に関する嫌なイメージが走っていたとすれば、それを少しでも楽なイメージに操作してみる。

それによって記憶は、「彼の件はそれほど重大で危険なことではなかった」と認識してくれる。

すると、覚えている必要性も薄れ、自然に忘れられるようになるのだ。

楽しい映画を見て気分を変えるなら、「忘れてしまう対処」ではないかと反論する人もいるだろう。

自分の感情やトラブル自体を全部なかったことにしてしまうのが、「忘れてしまう対処」。

それだけで終始すると、自己否定と問題保留の印象が大きくなる。

だから、モデルの力を使う際には「手順」が重要になる。

まずは、「認める」こと。

問題の存在や感情を決して否定しない。

そして体を緩めてそのことに「触れる」。

そのうえで、イメージを操作し、「大したことのない出来事」として記憶に収めるのだ。

この手順を踏むことによって、自然に忘れていけるプロセスに乗せることができる。