子どもの数が減り、一人一人の子どもが、手厚く大切に育てられているはずの現代において、愛着の問題を抱えた子どもだけでなく、大人までも増えているという現実がある。

それを示すもっとも端的な事実は、子育てに困難を感じる親が増え、虐待や育児放棄が社会問題化していることである。

愛着の問題はもっとも子育てを直撃しやすいのである。

子育ての困難は、裏を返せば、子どもが育つことの困難でもある。

発達の問題を抱えた子どもたちが急増しているが、その一部には、不安定な愛着の問題が関与している。

比較的マイルドな愛着の問題は、愛着スタイルが確立するとともに、自立への圧力が高まる青年期以降にさまざまなトラブルとなって現れ始める。

大人にひそむ愛着障害の増加を間接的に示しているのは、たとえば境界性パーソナリティ障害の増加であるし、依存症や過食症の増加である。

これらは、愛着不安の強いタイプの愛着障害が増えていることを示唆していると考えられる。

その一方で、淡白な対人関係を好む「草食系男子」や結婚になかなか踏み切れない人の増加は、愛着回避の傾向を示す愛着障害が、若い世代に広がっていることを示している。

日本がまだ貧しかったころに比べて、今一人一人の子どもに分け与えられる愛情や資源は、けた違いに増えているはずだ。

不幸な境遇に生れても、それなりの支援が受けられる仕組みも整えられている。

また医療、福祉、教育といった分野には、何十倍もの資金が投入されている。

ところが現実をみると、愛着の問題を抱えている子どもだけでなく、大人までが、この社会にあふれているという事実は、何を意味しているのだろうか。