「子ども時代の不足を取り戻す」

愛着障害の人は、子ども時代に満たされなかった大きな欠落を抱えている

その克服は、ある意味、子ども時代を取り戻し、そこでできなかった甘えを甘えなおし、やりそこなった子どもらしい体験をやり直すことかもしれない。

回復の過程で、子ども返りをしているように甘えたり、子どもがするような遊びや空想に夢中になったりすることもある。

あるケースでは、母親が看護師として忙しく働き、夜勤も多かったため、夜も幼い娘を祖母のもとに残していかねばならなかった。

成長して問題を抱えるようになった愛着障害の娘に向き合う中で、小さい頃に寂しい思いをさせてきたことを思い起こした母親は、すでに二十歳をすぎた愛着障害の娘に幼い子にするように添い寝をし、童話を読んでやった。

それを半年ほど続けたとき、愛着障害だった娘の状態は落ち着きを取り戻し、希死念慮や自傷行為も消え、やがて子ども返りした状態もなくなっていったのである。

今まで品行方正だった人が、あまり道徳的でないことをしたり、何かにのめり込んだりしているときというのは、じつは不足しているものを取り戻し、愛着の傷を少しでも和らげようとする自己治癒の試みであることも多いのである。

アルコールや薬物に溺れることも、買物やセックスに依存することも、そこに求めているのは、その興奮や陶酔に自分を忘れることであり、オッパイをたっぷり与えられて眠りに落ちる赤ん坊のように充足を感じることなのである。