十分な安心が得られる「安全基地」が確保されていると、次第に「安全基地」から遠く離れていようと、あまり不安を感じることもなく、探索行動、つまり仕事や社会的な活動に打ち込めるようになる。

安全基地は、いざという時の避難場所でもある。

必要な時に助けを与えてくれるという安心感があれば、いつもそばにいなくてもよいのである。

しかし、何か特別な事態が生じて、ストレスや不安が高まったときには「愛着行動」が活発になる。

それが健全な状態であり、自分を守るために重要なことである。

愛着行動には、さまざまなヴァリエーションがある。

幼い子どものように、愛着している人物と一緒にいようとしたり、体に触れようとしたりといった直接的な行動だけでなく、愛着する人物について考えたり、かつてその人物が言ったことやしてくれたことを思い出したりする精神的な活動も含まれる。

愛着行動は、ストレスや脅威が高まった状況で、愛着システム(愛着を担う脳内の仕組み)が活性化された結果、誘発する

誘発のされ方には、人によって大きな違いがあり、そこに、各人の愛着スタイルの特性がはっきりと示される。

安定した愛着においては、ストレスや脅威に対して、愛着システムが適度に活性化され、ほどよく愛着行動が増加することで、ストレスの緩和や安定の維持が図られる。

ところが、人によっては、ストレスや脅威を感じても、愛着行動がほとんどみられないことがある。

そこでは、愛着システムの不活性化が起きていると考えられる。

これは、愛着システムができあがるころに、愛着行動を抑えた方が生き残りに有利だった結果、不活化戦略をとるようになったためだとかんがえられる。

つまり、愛着を求める行動をとっても、拒絶されたり、何の反応もかえってこないことが繰り返された結果、最初から求めない行動スタイルを身に付けたと理解される。

また、ストレスや脅威に対して、過剰なまでの愛着行動が引き起こされた人もいる。

このタイプの人の場合、愛着システムが過剰に活性化しており、少しでも愛着対象が離れていきそうな気配を感じただけで、強い不安を覚える。

そのため大騒ぎをして、愛着対象が自分のそばにいるほかないようにする。

これは、愛着システムが育まれる時期に、過剰活性化戦略が自分の安全や安心を守るのに有利だった結果、そうした行動スタイルを身に付けたと考えられる。

たとえば、養育者の関心が薄く、大げさに騒いだときだけ、かまってもらえたというような状況である。

もっと複雑な反応がみられることもある。

ストレスや脅威が高まったときに、愛着行動とは一見正反対な行動が引き起こされる場合である。

本当はそばにいてほしい人を拒否したり、攻撃したり、無関心を装ったりするというものだ。

これも愛着行動の過剰活性化戦略の一つだとも言えるが、こうした逆説的な反応は、愛着の問題が深刻なケースほど強く、また頻繁にみられる。

求めても応えてもらえず、逆に傷つけられることへの不安や怒りが、アンビバレントに同居する結果だと考えられる。