希望をイメージして気持ちを切り替える

私たちの心は、同時に複数の感情を深く体験することはできません。

テレビでは、その番組がつまらなければ、チャンネルを切り替えることで、瞬時に楽しい番組に替えることができます。

心もこれと似ていて、意識が楽しいイメージに占領されているときは、つらいイメージは意識から排除されています。

このメカニズムによって乱された気持ちを静める方法を、イメージリラックス法といいます。

イメージリラックス法にはいくつかの方法があります。

楽しい思い出をイメージする

これから面白い話をしようとすると、自分で笑ってしまって、なかなか話せないことがあります。

楽しい話をしようとすると、話す前から笑い顔になっています。

このように、意識的に心地よいイメージを思い浮かべることで、いやな気分、うつ的な気分を排除し、快適な気分をもたらすようにするのです。

・子どものころの楽しかった思い出
・学生時代の仲間との思い出
・仲間と行った海外旅行
・子どもが幼かった頃の楽しい思い出

できるだけ鮮明に。

できるだけリアルに。

細部もこと細かに思い出そうと意識します。

すると、「あ、そうだ。こんなこともあった」などと、思いがけない再発見もあります。

そうすることで、どんどん楽しい思い出の中に没頭するようにします。

実は、日常、私たちは無意識のうちにこれを使っています。

なにかつらいことがあったとき、あのときは楽しかったなとか、あのころはよかったな、などと自然に過去の思い出に浸っていることがあります。

このように心は、イメージでバランスを取り戻そうとするメカニズムをもともと備えているのです。

このメカニズムがより機能しやすいように、意識的にイメージを呼び込むのです。

自分の好きな、心休まるイメージをいくつか用意しておくと、いざというときに役に立ちます。

自信が揺らぐような体験で傷ついたときには、成功体験を思い浮かべるのも有効です。

欧米では職場に家族の写真を置いている人が少なくありません。

家族の写真を見れば、心が明るくなり、エネルギーが湧いてきます。

楽しいイメージを誘導する写真を置いておくのも有効だと思います。

未来の希望をイメージする

過去ではなく、未来の希望をイメージすることでも落ち込んだ気分を変えることができます。

夢や希望への道を現在進みつつあると確認すると、元気が出て、前進する力が湧いてきます。

このとき、現実性のない夢ではなく、現実的な希望や夢である方が効果的です。

単なる夢では現実逃避に終わってしまう恐れがあるからです。

夢の中にいる間は気持ちが救われますが、現実に戻ったとたんに、現実の厳しさに無惨に打ち砕かれてしまうということになります。

ある人は雑務に追われて本当にしたい仕事ができずに焦燥感を感じるとき、手帳にかかれた人生計画表を見ることにしています。

これまでの歩みを確認し、これからつくる生活スタイルをイメージすると、希望に満ちて現実に立ち向かい、今をしっかり生きようとするエネルギーが戻ってくる実感がします。

つらい気持ちを放り投げる

イメージ法のもう少し組織立てられたやり方を紹介します。

1.椅子に座り、心がかき乱される原因となった出来事を思い浮かべて、心を思い切り重くします。

2.そのつらい心を「フー」と息と一緒に、両手を器の形にしたなかに、吐き出します。

3.つらい気持ちが両手いっぱいになったら、それを硬く握って玉にします。

4.その「つらい気持ち玉」を、思い切り遠くへ放り投げます。

5.「すっきりした」と、セルフトークします。

6.お腹に手を当てて、手を当てた温かさを心地よく感じるようにします。

7.温かい心地よさがしだいに全身に広がっていくとイメージします。

8.心地よさを味わいながら、「とても気持ちが落ち着いている」と何度も何度も頭の中でゆっくりと繰り返します。

また、そのときの気持ちに応じて、自分が楽になる言葉を繰り返します。

たとえば、「ありのままの自分で大丈夫」とか、「大丈夫、また元気になれる」などと。

こうしていると、心地よさのなかで、安心感が全身に広がっていきます。

イメージには私たちが考える以上の力があります。

イメージの力によって、氷を触っても火ぶくれが起きます。

イメージ力によって、修行者は火を踏んでもやけどをしません。

イメージ力の強さは、とくにスポーツの世界で利用されています。

いまや一流のスポーツ選手でイメージトレーニングを用いない人はいない、と言っていいでしょう。

ですから、イメージ法などばかげていると思わずに試してみて下さい。

そもそも社交不安など、あなたのイマジネーションがつくり出したものなのですから。

●まとめ

イメージで不安になっているのだから、イメージで心を落ち着けよう。