愛着障害の人は、性的な問題を伴いやすい。

愛着は対人関係の基本であると同時に、性愛も愛着を土台に発達するのである。

愛着障害は対人関係に影響を及ぼすのと同じように、性愛にも、さまざまな形でシワ寄せがくる。

性的な問題を伴いやすい理由は他にもある。

愛着障害が生じる環境では、母親は妊娠中から、あまり恵まれた状況にいないことが多く、高いストレスによって、妊娠中のホルモン環境が胎児の成長に悪影響を及ぼす危険が増大するのである。

たとえば、男児の妊娠中に、母親が強いストレスを浴びたり、ある種の薬物を服用していると、胎児の精巣から分泌される男性ホルモンの量が少なくなる。

これは、性同一性障害や同性愛傾向を生む要因となる。

また、愛着障害の子どもでは、混乱した性的刺激を幼い頃から受けてしまうというケースもすくなくない。

母性的な愛情への憧れと性愛の混乱がみられたり、男女の役割の倒錯がみられたりしやすい。

愛着障害だったジャン・ジュネもそうした一例である。

「私は、ごく小さい頃から、自分が他の男の子たちに惹かれていることを意識していた。

女性に魅力を感じていたことは、一度もない」

その正確な時期について、8歳ごろから、遅くても10歳ごろだと述べている。

愛着障害だったジャン・ジュネよりずっと恵まれて育ち、一見性愛的な問題とは無縁に思えるような人にも、意外な痕跡が認められることが多い。

謹厳実直そのものに見える漱石に、女装癖の気があったことは、妻鏡子が口述した『漱石の思い出』から知れる。

そこには、養父の愛人やその娘と暮らした、7,8歳ころの体験の痕跡が残されているのかもしれない。

愛着障害だった漱石は、女性のきれいな着物を着るのが好きで、妻が脱いだままにしてある着物を羽織ったうえに、褄をとって、女っぽい風情で部屋の中を歩き回ったという。