「発達障害と診断されることも少なくない」

愛着の問題が、発達にも影響するということは、いくぶん複雑な状況を生んでいる。

本来の発達障害は、遺伝的な要因や胎児期・出産時のトラブルで、発達に問題を生じたものであるが、愛着障害にともなって生じた発達の問題も、同じように発達障害として診断されているのである。

両者を区別するのは、症状からだけでは難しい場合も多い。

しかも、ごく幼い頃に生じる愛着障害は、遺伝的要因と同等以上に、その子のその後の発達に影響を及ぼし得る。

愛着パターンは、第二の遺伝子と呼べるほどの支配力をもつのである。

つまり、社交的に育つ遺伝子をもって生まれてきた子どもでも、幼いころに、親から捨てられたり、あるいは虐待やネグレクトを受けて育てば、人嫌いの人物に育ち得るのである。

アスペルガー症候群として診断された人が、実は、愛着障害だったというケースにも少なからず出会う。

それは、診断が間違っていたというよりも、愛着の問題によっても、すぐに見分けがつかないような発達の障害を生じるということなのである。

しかし、アスペルガー症候群が、遺伝的な要因に基づく障害だという、一般的な理解に従うならば、その人を、アスペルガー症候群と診断するよりも、愛着スペクトラム障害と診断した方が、事実をより正確に反映することになるだろう。

発達障害という診断が普及したのはよいが、本来の定義を超えて広がりすぎ、過剰適用される問題も起きている。

愛着障害によって生じた二次的な発達の問題のケースも少なくないことを考えると、より慎重な扱いが必要に思える。

というのも、愛着障害のケースと発達障害のケースでは、対処やアプローチの仕方が異なる面もあるからだ。

愛着障害のケースに、発達障害の方法をそのまま当てはめようとしても、なかなかうまくいかない。

ところが、どれも発達という視点だけで対処しようとする傾向がみられる。

愛着障害から発達障害を呈しているケースがある一方で、逆のケースもある。

発達障害があって育てにくいために、親との愛着形成がうまくいかず、愛着の問題を来しているという場合である。

実際、自閉症の子どもの場合、母親との愛着の安定性を調べると、健常児の場合よりも、不安定型愛着の割合が高いことが知られている。

しかし、より症状が軽度な自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群も含まれる)では、健常児と比べて不安定型愛着の頻度には、違いが認められていない。

つまり、発達障害があっても、愛着への影響は小さく、両者は別の問題として理解した方がよいということである。

もちろん、両者が併存するケースでは、対応もそれだけ難しくなる。

こうしたケースに対応できるためにも、発達の観点だけでなく、愛着の観点が重要なのである。