愛着障害を抱えた人がそれを克服する為に、安定した愛着スタイルばかりを課題として追い求めることは、必ずしも得策でない。

それよりも、自分がやるべき役割を担い、それを果そうとして奮闘するうちに、まず周囲の人との関係が安定する。

そうなることで、もっとも親密な人との愛着関係においても、次第に安定していくことも多いのである。

親密さをベースとする愛着関係というものは、距離がとりにくく、愛着障害を抱えた人にとっては、もっとも厄介で難易度の高いものである。

その点、社会的な役割とか職業的な役割を中心とした関係は、親密さの問題を棚上げして結ぶこともできるし、仕事上の関わりと割り切ることもできる。

そうした気楽さが、親密さへの心理的なプレッシャーを軽減し、気のおけない関係を生み出すことにもつながる。

このように、社会的役割、職業的役割という枠組みが、愛着不安や愛着回避のジレンマから、ある程度、守ってくれる。

そうして、社会的、職業的役割を果たす中で、対人関係の経験を積み、ほどよく親しい関係を増やしていくことは、愛着不安や愛着回避の克服に、またとない訓練の機会となるのである。

役割を持つこと、仕事をもつこと、親となって子どもをもつことは、その意味で、どれも愛着障害を乗り越えていくきっかけとなり得るのである。

どんなに愛着回避が強く、人付き合いが苦手な人も、必要に駆られて関わりをもつようになれば、対人スキルが向上するとともに、人と一緒に何かをする楽しさも体験するようになるものである。

愛着不安が強い人の場合、役割をもつことが、しばしば心の安定につながる。

愛着行動にばかり神経を傾けることから救ってくれるのである。