親の保護や導きも期待できず、親代わりの存在も身近にいないという場合、愛着障害を克服する為の究極の方法は、「自分が自分の親になる」ということである。

ある女性は、大学生のとき、何かに躓くととたんに自己嫌悪にとらわれ、落ち込んでしまう自分に気づいた。

「なぜ、私はこんなにすぐ自分を否定してしまうのだろうか」と考え続けた末にたどり着いた結論は、親からいつも否定され虐待されて育ったことにあるのではないか、ということだった。

しかし、どうすれば、そんな自分を変えることができるだろう。

その女性は、悩みぬいた末、ある決心をした。

親に期待するから裏切られてしまうのだ。

親に認められたいと思うから、親に否定されることをつらく感じてしまうのだ。

もうこれからは親に左右されるのはやめよう。

あの人達を親と思うのはやめよう。

その代わりに、自分が自分の親になるのだ。

自分が親として自分にどうアドバイスするかを考え、「自分の中の親」と相談しながら生きていこう―。

その女性はそうすることで、自暴自棄な考えや否定的な気分に陥るのを避けようとしたのだ。

実際、その方法は、非常にうまくいった。

理由のない自己嫌悪に陥ることがなくなり、常に前を向いて生きていけるようになったのである。

不思議とチャンスが開けて来て、仕事でも対人関係でも認められるようになった。

自分を振り返る習慣がついたことも、大きな助けとなったのである。

「自分が自分の親になる」という考えは、愛着の苦しみを知らない人には、突飛なものに思えるだろう。

しかし、親に認められないことで苦しんできた人、安全基地を持たない人には、心に訴えるものがあるはずだ。

愛着障害だったエリク・H・エリクソンが行ったのも、まさにこれであった。

彼は、義父からもらった名前、ホンブルガーをミドル・ネームのHにして、エリクソンという名前を自分でつけたのである。

エリクソンは「Ericのson」、つまり「エリクの息子」という意味を含んでいる。

彼もまた、自らが自らの親となることで愛着障害を克服し、真の意味で自立を遂げたのである。