抱っこからすべては始まる

人は、生まれるとすぐに母親に抱きつき、つかまろうとする。

逆に言えば、育っていくためには、つかまり、体に触れ、安らうことができる存在が必要なのである。

そうしたことの重要性が知られていなかったころ、孤児となった子どもは、スキンシップの不足から食欲が低下し、衰弱死してしまうことが多かった。

子どもが成長する上で、母が子を抱っこすることは、乳を与えることと同じくらい重要なのである。

いくら栄養を与えても、抱っこが不足すれば、子どもは上手く育たない。

抱っこをし、体を接触させることは、子どもの安心の原点であり、愛着もそこから育っていく。

抱っこをすることで、子どもから母親に対する愛着が生まれるだけでなく、母親から子どもに対する愛着も強化されていく。

何らかの理由で、あまり抱っこをしなかった母親は、子どもに対する愛着が不安定になりやすく、子どもを見捨ててしまう危険が高くなることが知られている。

子どもが泣くと、すぐに抱っこする母親の場合、子どもとの愛着が安定しやすいが、放っておいても平気な母親では、愛着障害になりやすい。

抱っこという実に原始的な行為が、子どもが健全な成長を遂げるうえで非常に重要なのである。

それは、子どもに心理的な影響だけでなく、生理的な影響さえ及ぼす。

子どもの成長を促す成長ホルモンや神経成長因子、免疫力を高める物質、さらには、心の安定に寄与する神経ホルモンや神経伝達物質の分泌を活発にするのである。

抱っこは、スキンシップという面と、「支え、守る」という面が合わさった行動である。

よく抱っこされた子は、甘えん坊で一見弱々しく見えて、実のところ、強くたくましく育つ。

その影響は、大人になってからも持続するほどである。