親をうしなうという場合も、その影響は離別の時期により違ってくる。

とりわけその時期が、臨界期に重なっていると、決定的とも言える影響を受けやすい。

同じきょうだいでも、離別時期の違いから、その後の成長にもたらす影響が異なることになる。

愛着障害のK君の母親が、家族のもとを去って、遠く離れた実家に戻ってしまったのは、K君が一歳になったばかりのときであった。

まだ離乳を終えていない時期だったので、しばらくは成長が止まってしまったほどである。

父親は働かねばならず、K君と二つ年上の兄は昼間保育所に預けられた。

兄は間もなく保育所に慣れたが、愛着障害のK君は一向になじめず、家でも夜泣いてなかなか眠らなかった。

乳の出ない父親の乳房を吸いながら、ようやく眠ることもあったという。

二人が5歳と3歳になったとき、どうしても母親に会いたいと兄が言い出した。

父親はそれを許し、ふたりだけで遠く母親のもとまで旅をし、会いに行った。

こうして母親と対面した愛着障害のK君だったが、母親の記憶がまったくなかったらしく、なかなかなじもうとしなかった。

しかし、はるばる自分に会いに来た息子たちの姿を見て心を動かされた母親は、夫のもとに戻ることを決意する。

翌年、兄の小学校入学の前に、母親が家に戻ってきた。

兄は大喜びだったが、愛着障害のK君は、どんなふうに接していいのか、わからない様子だったという。

その後の成長も、兄弟で対照的だった。

兄は活発かつ社交的で、母親にも遠慮なく甘えることができたが、愛着障害のK君は無気力で友達付き合いも少なく、母親にいつも遠慮して、本心から打ち解けることはなかった。

しかし、ごく幼い頃に母親との離別や死別を経験した場合でも、代わりの養育者によって愛情が十分補われれば、その影響は軽微となる。

逆に過保護に育てられたリ、複数の養育者が関わったりすることによってマイナスの影響が生じるケースも少なくない。

母親の代わりをするということは容易なことではない。