緊張するときは本来の課題を確認する

人間関係がストレスになるのは、いろんな場面を、自分が評価される場面ととらえてしまうことに一因があります。

そのために、課題をやり遂げることに注意が集中するのではなく、いかに自我を守るかということに思い悩むことになるのです。

注意とエネルギーが自分に向いてしまうのですから、課題の遂行に向けられる注意とエネルギーがそれだけ妨害されます。

このために、実際に失敗しやすくなるのです。

講演や発表の順番を待っているときのように、ものごとは始まる前が一番ストレスです。

始まってしまえば課題に集中せざるをえないので、むしろ精神的には楽になるものです。

こうした傾向があることを知って、不安が強くなったら、意識して課題に注意を向け直すことです。

そのためには、とにかく課題にとりかかること、実務的に必要な仕事を遂行することです。

ものごとが負担に感じられるときに、「今現在の本来の課題はなにか」を自分に問いかけてみることです。

そうすると、本来の課題は、自分をよく見せることではないことが分かります。

自分がうまくやるかどうかが、求められていることではないことが分かります。

皆の前で報告しなければならないということであれば、「関連する情報を収集して、分かりやすくまとめること」「きちんと内容を伝える事」「そのために分かりやすい説明をすること」などが、本来、求められていることです。

この本来の課題を、ただきちんと成し遂げようとすることです。

本来の課題を遂行するなかで、ありのままのあなた自身が表現されます。

ありのままのあなたで誰も拒否はしないのです。

拒否しているのはあなた自身です。

百歩譲って、たとえ拒否する人がいても、それによりあなたが被害をこうむることはほとんどないはずです。

それにより生命が危うくなることなど、絶対にないのです。

学校で発表しなければならないときとか、結婚式のスピーチなど、人前でなにかをしなければならないとき、大多数の人が緊張します。

あがりを避けるためには、まず第一に自信を持てるよう十分に準備することです。

あがりやすい人はそのことばかり心配して、意外に準備に時間をかけないものです。

準備しようとすると不安になるので、避けてしまう心理が働くからです。

第二に、意識を自己に向けるのではなく、目的の遂行に向けるようにすることです。

本来の目的をしっかりと確認することです。

カラオケなら、自分が下手でないことを示すための場ではなく、みんなで気楽に楽しむための場であることを確認するのです。

発表なら、自分がうまいことを見せるのが目的ではなく、内容をきちんと伝えることが目的です。

この目的に専心するようつとめることです。

第三に、どんな人でも多少はあがるのですから、あがりをおさえようとしないことです。

舞台に立つ前は超ベテランのタレントでも緊張すると言います。

たとえば、何百回となく公演をこなしている森光子さんでも、新作に取り組むときは歯茎がはれたり、偏頭痛が起きるほど緊張するそうです。

島倉千代子さんは歌手を四年以上やっているいまでも、ステージに上るときは階段をスムースに上り下りできないほど緊張することがあるそうです。

素人があがるのは当たり前、そう割り切ることです。

そう割り切って、あがっている自分に注意を向けるのではなく、何を伝えるべきか、と本来の課題に意識を集中することです。