「親を求めるがゆえに」

愛着を脅かす、もう一つの深刻な状況は、守ってくれるはずの親から虐待を受け、安全が脅かされるという場合である。

この場合、子どもは親を求めつつ、同時に恐れるというアンビバレントな状況におかれる。

しかも、親がいつ暴力や言葉による虐待を加えてくるかわからないといった状況は、子どもにとって予測も対処も困難である。

ただ「自分は無力で悪い存在だ」という罪の意識や自己否定の気持ちを抱えさせられてしまう。

どんな理不尽な仕打ちをされようと、子どもは親を愛し、求めようとする。

そのため、深く傷つきながらも、親を責めるのではなく、むしろ自分を責める方向に気持ちが向かう。

自分がダメな子だから親は愛してくれないのだ―そう考えて納得しようとする。

外の世界を知り、親と自分との関係を客観的にみられるようになったとき、子どもは初めて、それが決して当たり前の状況ではないことに気づく。

しかし、それまでは、子どもにとって、それ以外にはない唯一無二の現実なのである。

親に認められたいという気持ちは、それがほどよく満たされた状態で成長していけば大人になるころには、自然と消えていく。

しかし、その思いを満たされずに育った人は、いくつになっても、心の奥底で「親に認められたい」「愛されたい」という思いをひきずることになる。

親に過度に気に入られようとしたり、逆に親を困らせたり反発したりするという形で、こだわり続けるのである。