人の中にいるのが苦手な人は、過度の自己意識を持っています。

過度の自己意識は、監視する自己が強固に形成されたことに原因があります。

エリクソンは、「自意識とは、両親が、そして子どもとしての自分自身が信頼できる存在か否かということに関わる原初的な疑惑が新しいかたちをとったものである」(岩瀬庸理訳『アイデンティティ』金沢文庫 一九七三)と述べています。

過度の自己意識をもたらす養育環境とは、基本的信頼の形成が困難な環境でもあるのです。

具体的には、次のような養育環境がこれにあたります。

1.遠慮が強いられる養育環境が過度の自己意識をもたらす

他の家にあずけられて育つとか、親戚の家で育つなどが過度の自己意識をもたらします。

この場合、たとえ幼い本人は明確に意識していなくとも、行動の根底に遠慮が入り込み過度の自己意識をもたらします。

遠慮とは、自分の行動を相手がどう思うかを推し量り、自分をおさえることです。

すなわち、自分を監視することで過度の自己意識をもたらします。

ある過度の自己意識の男性は、自分が人間関係のなかにストレートに入り込めず、いつでも半分外から見ているような疎外感を感じていました。

親戚の家で育ったために、その家族に入っているような、入っていないような、そういう中途半端な集団参加の姿勢が身についたため過度の自己意識をもたらしました。

過度の自己意識に悩む女子学生は、次のような思い出を語ってくれました。

過度の自己意識に悩む彼女は両親が共働きだったために、幼い頃、近くの母の実家にあずけられていました。

過度の自己意識に悩む自分はそこで遠慮しているつもりはなかったけれども、母親がよく「遠慮しなくていいのよ」と言っていたのを思い出したのです。

そして、いま振り返ると、祖母や母親が、過度の自己意識に悩む私が遠慮しがちであることに気付いていたのだろうと言うのです。

父方の祖父母と同居して育った場合にも、過度の遠慮が強いられることがあり過度の自己意識をもたらします。

この場合、母親が祖父母に気を使います。

このために、子どもにも気をつかうことを求める養育がなされがちで過度の自己意識をもたらします。

とくに母親を受け入れない祖父母である場合には、子どもが母親を守るために、過度に良い子でいる必要があり過度の自己意識をもたらします。

2.自己意識を過度に向けるよう求める養育

この過度の自己意識をもたらす養育は、次のような母親によってなされがちです。

細かいことに常に気を配る神経質な母親、人の目、世間体を過度に気にする母親、競争心が強く、子どもを自分の自我の一部であるかのようにふるまう母親が過度の自己意識をもたらす原因となります。

こうした親は、いずれも早熟なしつけを求めてしまい過度の自己意識をもたらします。

しつけには適切な時期があります。

子どもの身体と心の発達に適合したしつけをする必要があるのです。

適合した時期であれば、子どもはしつけを自然なかたちで受け入れることができます。

ところが、あまりにしつけを急ぎ過ぎると、子どもの自然な発達が阻害されて過度の自己意識をもたらしてしまいます。

たとえば、「友達に優しくする」とか「他の人のことを考えてあげる」などは、まず「自分を大事にすること」がしっかりと身についていない過度の自己意識をもたらし、本当のものにならないのです。

そうでないと、「優しさ」とか「思いやり」は、自分を大切にすることではなく、自分を犠牲にすることであると過度の自己意識をもたらし、誤解してしまいます。

自分の心の内から発する本当の「優しさ」「思いやり」ではなく、「優しくしなければならない場面だから、優しくする」という義務的な行動となって過度の自己意識をもたらしてしまうのです。

注意しなければならないのは、これが厳しい躾のみによってもたらされるものではないことです。

ソフトではあるが、真綿で首をしめるようなしつけによってもなされるのです。

たとえば、なにか悪いことをしても、「あなたはいい子だから、そんなことはしないわよね」とか、「お母さんはあなたを信じています」などと言い、絶対に怒鳴ったり、体罰を用いたりすることはないけれども、明らかに大きな落胆の様子であり、言葉とは裏腹の疑惑が示されているというような躾の仕方は過度の自己意識をもたらします。

むしろ、厳しいしつけがされる場合は、母親自身がさっぱりした性格であることがすくなくありません。

そのために、母親が求めることさえきちんとやっていれば、しつこく真の自己に侵入することはありません。

ソフトな躾けをする母親のほうが、しつこく真の自己の世界に入り込み、独自の世界をつくることを妨げがちになり過度の自己意識をもたらします。

3.葛藤を内在しながら、表面は安穏を装う家庭は過度の自己意識をもたらす

表面上は幸せな家庭でありながら、深い葛藤を内在している家庭で育った場合過度の自己意識をもたらします。

父親に別な女性がいるために母親はひどく嫉妬しながら、表面上、何事もないかのようにすごしているとか、完全に心が離れているのに、お互いにそのことには触れず家庭生活を営んでいる場合などは過度の自己意識をもたらします。

こうした雰囲気のなかでは、子どもはしじゅう親の様子にアンテナを張り、くったくのなさを演じなければならず過度の自己意識をもたらします。

そのためには、自分の行動を注意深く監視していなければならず、過度の自己意識がつくりあげられていくのです。