
回避型愛着スタイルの行動における特性のもう一つは、「面倒くさがり」だということだ。
興味あること以外に時間やエネルギーを使うのを極力避けるのである。
それは、多少時間やエネルギーの無駄でも、人との交流や経験を増やすという”投資”を行ない、そこから情報や支えといった”利益”を得る「拡大再生産的な経済学」ではなく、「投資」を避け、「利益」も得られないが、同時にリスクもない「回避型の経済学」とでも言うべきものである。
そこには、「現状維持が一番安全」というリスク回避の思想がある。
また回避型愛着スタイルの無気力な傾向も、面倒を避けるという傾向に拍車をかけている。
無気力とは、言い換えれば、エネルギーが乏しいということである。
無駄なエネルギーを使えば、乏しいエネルギーがさらに減ってしまうことになる。
現状を変化させるには、大きなエネルギーが必要である。
しかし回避型の人は、エネルギーが乏しいので、現状に少々問題があっても、自分が心から望んだ状況でなくとも、それを変えようとはしない。
現状に耐えた方がましだと思うのである。
だが、心のエネルギーは、物理的なエネルギーと違って、使えば減るというものではない。
ほどよく使うことによって、さらに生み出されるものである。
回避型愛着スタイルの人の場合、外からの刺激が不足していることが、エネルギーの枯渇を招いている面もある。
心のエネルギーとは、心の外と内との交互作用によって生み出されるものだからである。
回避型の人に心のエネルギーが乏しいのは、幼いころから安全基地をもたず、安心して探索行動をとることができなかったためである。
大人になってもなお探索行動を避け、外界からの刺激を減らし続けたのでは、過去の轍を踏むばかりで、心のエネルギーを増すことには、まったくつながらない。
リスクを避け、現状維持をよしとするだけでは、心のエネルギーは、ますます弱々しいものになってしまうのである。