森田療法でみる対人恐怖症(引っ越し神経症)

結婚してまもないのですが、主人の転勤で東京から大阪に引っ越しをしなければならなくなりました。

でも、関西出身の人達とはいままであまり付き合いがなく、移転してから隣近所の奥様たちとうまくやっていけるかどうか、不安でたまりません。


ある新聞社の調査によると、最近の若い夫婦は隣人となるべく接触を少なくして暮らしたいと望んでいるということです。

また彼らは、いざというとき、「遠くの親戚ではなく、隣人の世話になりたい」という、一見矛盾したことも答えています。

この傾向は、団地やマンション住まいの人達に、特に顕著だそうです。

不安をもったまま引っ越すと、隣の奥さんがのぞいているのではとか、近所の奥さん同士で私の悪口を言っていると感じてしまい、実際に近所づき合いから逃避してしまうことが多いようです。

こういう奥さんにしても、不安な半面、本心では近くの人達とうまくやっていきたいのです。

ところが、逃避することによってきっかけを失って、疎外されているのではないかと考えるようになってしまうのです。

「人間は人間がわからない」ものです。

夫婦でも親子でも恋人でも、まったく別の「個」同士ですから、ほんとうは分からなくて当然なのです。

あなたに「うまくいくかどうか分からない」という不安はあってよいのです。

古来、引っ越しの挨拶には、そばやハガキ、石鹸などを配るという慣習がありますが、その慣習に従って「よろしく」と挨拶すればよいのです。

最近では、こうした慣習は無用なこととして遠ざける若い人達が多いようですが、深く考えずに一つのきっかけとして利用すればよいのです。

そして、相手がどう思おうが、「おはよう」「行ってらっしゃい」「いいお天気ですね」と声をかければ、よほどのへそ曲がりでない限り、答えが返ってくるはずです。

ここからコミュニケーションが生まれ、あなたの悩みは杞憂に終わってしまうでしょう。

なにも引っ越しのときに限らず、隣人、近所づき合いのコツは、人の噂とか相手の心をおもんぱかることではなく、不安はあるがままにして、挨拶など具体的行動に出ることに尽きるのではないでしょうか。