秘密はいらない、役割はいらない

[過去の秘密に縛られなくなるには?役割を手放した私は、いったい誰?]

家族というのは、たくさんの部屋がある家のようなものです。

この家の数々の部屋は、過去の世代の家族や、新しく作られた家族を表わしており、すべてが直接あるいは間接的につながっています。

ドアを通じて部屋から部屋へと伝わっていくのは、家族の秘密であり、家族の物語であり、何が正しくて何は誤りかという考え方や、人がすべきこととすべきでないことについての信念です。

ここでは過去を再び検証し、現在の自分へ、そして未来へとつなげていきます。

インナーアダルトの力を手にすることで、過去をさらに深いレベルで探っていくことが可能になったのです。

アダルトチルドレンと家族の秘密

深いレベルで過去を探る作業の一つ、それは家族の秘密を覆っているベールを取りのけていくことです。

秘密は、ひとつの世代から次の世代へと受け渡されます。

秘密とは、他人には知らせないでおく一片の情報であり、それは、恥辱感がともなうためでもあるし、自分自身や他の誰かを守ろうとする意図によることもあります。

アダルトチルドレンを抱えたケヴィンは、母親の秘密をその死後に知りました。

母の両親はスイスからアメリカに渡ったと聞かされていたのですが、実はオーストリア出身でした。

宗教的な迫害を恐れて、彼らは名前を変えただけでなく、どこで生まれたどんな人間なのかということも隠していたのです。

アダルトチルドレンのケヴィンにとって母親の怖れは理解できたものの、家族の歴史をまったく共有できなかったことが心の痛みとなりました。

母親と本当に親密になるための道を閉ざされてしまったのでした。

マールの場合、男の子を産めば不治の障害が遺伝する可能性があることを、母親が隠していました。

娘がこのことを知らずにいれば、結婚の選択肢が狭まらずにすむと考えたのです。

やがてマールは結婚しましたが、生まれた男の子はこの遺伝的障害のため幼くして亡くなりました。

母親の気遣いは愛情による心からのものでしたが、こうしたやり方で娘を守ろうとしたことで、マールが自分で大切なことを決めるチャンスを奪ってしまったのです。

彼女は情報を知られず、親が彼女のためにした決断の結果をその身で体験することになりました。