人付き合いが苦手な人の例

人前に出るのが苦痛。

雑談の輪に加わるのにさえ勇気がいる。

授業や会議では指名されないかと、いつもビクビクしている。

なんでもないことでも、つい人の目が気になって緊張してしまう。

人付き合いが苦手な人とは、このように、人と交わることに関して抱く苦手意識や恐れのことです。

人付き合いが苦手な人は、若い人はいうまでもなく、中高年齢層にも広がっており、ひどく苦しんでいる人も稀ではありません。

このために、医学においても、社交不安障害(社会不安障害・社交恐怖)として治療の対象とされるようになりました。

しかし、いつまでも薬に頼りきることはできません。

いつまでもカウンセラーに頼ることもできません。

また、医者にかかるほどではない人が大部分です。

ですから、どうしても自分で対処できる力をつける必要があります。

「心配しないで大丈夫」

「失敗は笑って受け流せ」

「嫌なことは忘れてしまえ」

そうアドバイスされるのですが、人付き合いが苦手の人はあれこれと心配してしまいます。

嫌なことばかり思い出してしまいます。

こうした心の特性は、心構えだけで抜け出すことは困難です。

心をコントロールするための具体的な技法を獲得する必要があります。

ここではその人付き合いが苦手な人の例を紹介します。

私たちは、人と交わるときや人前で、何かしなければならないときなど、いささか苦手意識を感じます。

この苦手意識が強くて苦しんでいる人も少なくありません。

そうした人の声を聞いてみましょう。

人の目が気になり自然に振る舞えない

【女子大学生・Kさんのケース】

いつでも、人の目が気になってしまいます。

バスや電車に乗ったときなど、他の人が見ていると思うと、つい、本当は座りたくない手近の空いている席に座ってしまいます。

歩いているとき、後ろをついて来る人を意識すると、下半身が硬直してしまって、不自然な歩き方になってしまいます。

授業は、受講生が大勢いる授業を選んで取っています。

先生が一方的にしゃべる授業が一番安心できます。

それでも、指名されることがないようにと、できるだけ先生と視線を合わせないようにしています。

英語の授業など、どうしてもしゃべらなければならないときには、声がうわずっているのが知られないようにと、意識的に低い声を出すようにしています。

卒業論文のゼミで、中年の男性の先生と接するときが一番気づまりです。

何を話せばよいかわかりません。

ゼミ生は三人しかいないので、他の二人が出席少なく出席するかどうかをメールで確かめてから、授業に出るようにしています。

授業に出るときも、他の二人のうちどちらかは先にゼミ室に入っているように時間調整します。

他の二人が実習や就活のために欠席することがあります。

それで、出席が自分一人になりそうなときには、「体調が悪い」とか、「病院に行く」とか、「母親の具合が悪い」などと理由をつけて欠席します。

ゼミでは明るく振る舞っているので、先生は私を「明るい子」と受け取っているようです。

でも、どうやら先生がこのことに気づき始めているようなので、ゼミを考えると、気が重くなってしまいます。

誰にでもいい顔をして、明るい自分を印象づけようとしています。

クラスの友達とは演技で接することができますが、それも長い時間になると苦痛になってきます。

それで、何か用事があると言って、適当にグループの輪から離れます。

毎日、言い訳の中で生活しているようでつらいし、自分が嫌になりそうです。

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人に頼むのが苦手で仕事を抱え込みがち

サラリーマン・Sくんのケース

入社以来、命じられた仕事をしっかりとやってきました。

人が嫌がる仕事も、自分の成長のためと思って、逃げずに引き受けてきました。

同僚からでも頼まれると断れません。

それなのに、同僚に手伝ってもらうことができません。

自分一人で抱え込んでしまいます。

残業して、それでも終わらないときは、家に持ち帰ってやっています。

上司はとても理解のある人なのですが、上司の機嫌を損ねるような情報を伝えることが苦痛です。

それで、進行が遅れていたり、途中でトラブルがあっても、ぎりぎりまで上司に報告できません。

報告しても、「たいしたことではないので、私の方でなんとか処理します」と、その場を取り繕ってしまいます。

こんなことで、どんどん自分を追い詰めています。

取引先に訪問のアポイントメントを取る電話がすごく苦痛です。

とにかく気が重くて、それでずるずると延ばしてしまい、せっぱつまってから電話するということが多いです。

相手と対応しているときは、これは話してよいか、これは言わないほうがよいかなどと、いつも迷いながらやっています。

訪問が終わって、会社に戻る途中は、繰り返し、あれを言ったのはまずかったかな、ああ言えばよかったなどと、後悔ばかりです。

会社がひけて、インターネットカフェで一人で過ごす時間が一番幸せです。

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生理現象を人に知られるのが恥ずかしい

【OL・Mさんのケース】

事務の仕事をしていますが、何か物を作る工場に移りたいと思っています。

工場ならいつも大きな音がしていて、お腹の音も聞こえないので、きっと自分に合っていると思うから。

高校でも短大でもアルバイトをしたこともなかったので、社会に出てやっていく自信がありませんでした。

他の人は就職活動しているのに、自分は動けませんでした。

それで、他の人がどんどん決まっていく中で、自分だけが置いてけぼりという感じで、さすがに心細くなって、就職試験を受けました。

二つほど受けて不採用でしたが、父の知り合いの会社で採用してくれることになりました。

ところが、いざ決まると「これでよかったのかな」と、不安になりました。

かといって、自分がやりたい仕事はないし、それ以上に就職活動を続けるエネルギーがありませんでした。

それで今の会社に入ったのですが、最初は無我夢中で、なんとかやっていけそうな気がしました。

でも、慣れてくると人間関係が重荷。

大部分の人はいい人だけど、意地悪な先輩がいます。

その人は、能力もあって、しっかりした仕事をしているので、何か言われるごとに傷ついてしまいます。

きっと、その人の言葉が当たっているからだと思います。

もともと消化器系統が弱かったのですが、入社半年頃から頻繁に下痢と便秘を繰り返すようになりました。

おしっこも近くなって頻繁にトイレに行きたくなります。

それで、水分を控えたり、食事の量を減らしたりしました。

すると、余計お腹の具合が悪くなって、医者に行って薬をもらって飲みましたが、効き目がありません。

仕事中静かなほど、お腹のグルグル鳴る音が聞こえてしまうのではと、緊張します。

緊張するほどに、お腹の調子がおかしくなります。

途中トイレに行きたくなるという不安で、快速電車には乗れません。

それで、通勤が同じルートの人がいるのですが、退社時間間際に仕事を始めたり、机の上を片付けたりして、その人と一緒にならないように退社時間をずらすようにしています。

もしも一緒になってしまったら、途中のコンビニに寄って、先に行ってもらうなどします。

朝は、その人は電車の前のほうに乗るので、私は後ろのほうに乗るようにしています。

電車の中では、スマホを操作しているか、眠ったふりをしています。

こんな私を会社の人は変な人と思わないかと、気になります。

最近は、他の人が話しをしていると、私のことを噂しているのではないかと思ってしまいます。

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年をとってから人前に出るのが苦痛に

【会社役員・Sさんのケース】

もともとあまり神経の太いほうではありませんでしたが、仕事で鍛えられ、神経もそうとう図太くなったように思っていました。

ところが、50代になり役員になると、次第に気弱になってきて、苦手意識を感じやすくなりました。

「失敗は許されない」という思いが強いためです。

たとえば、取引先の接待でも、若い頃は、自分が下っ端で、相手は年長者だったので、精一杯尽くせばよいという気楽さがありました。

ところが、今は同年代で同じような地位の人との付き合いが多いし、会社を代表しているという意識もあって、緊張してしまいます。

人前でスピーチする機会も多くなって苦痛です。

社の内部での発表は、客観的な数値などを紹介しながら話を組みたてればよいのでわりあい平気ですが、仕事を離れた場面でのスピーチが苦痛です。

私は若い人たちが仕事しやすいようにと配慮してやってきたつもりなので、部下には信頼されています。

それで、結婚式のスピーチを依頼されることが少なくないのですが、若い頃は、そうした機会をむしろ自分をアピールする場のように感じていました。

ところが、今はなんとか遠慮したいという思いです。

もっと苦痛なのは会社を代表しての葬儀などへの出席です。

とにかく緊張してしまい、焼香のときに手が震えてしまって、こんなことは初めてだったので、我ながらショックを受けました。

責任ある立場で失策が許されないという思いが強いのです。

自分で自分をがんじがらめに縛ってしまっているように感じます。