人付き合いが苦手を自己実現で克服する

人付き合いの苦手意識の強い自分の性格と戦って一生を終わるのでは、虚しい人生になってしまいます。

人付き合いの苦手意識をむしろ成長へのエネルギーとして生かすことを考えるほうが賢明です。

そこで、自己実現を目指しながら、人付き合いの苦手意識を乗り越える方途を考えます。

人付き合いが苦手を生かして成長しよう

人は誰でも多かれ少なかれ苦手意識を抱えながら生きています。

しかし、なかには、苦手意識との闘いに疲れるほどのエネルギーを消費してしまう人がいます。

人付き合いの苦手意識が強いために、自分が望む人生をあきらめてしまう人がいます。

人付き合いの苦手意識に負けるのではなく、また、人付き合いの苦手意識を克服することにもっぱら目を向けるのでなく、自分がやりたいことに目を転じることです。

苦手意識を抱えながらでも、自分の夢の実現に向かって進むことです。

人付き合いの苦手意識の強い人にとって、この苦手意識こそが夢の実現を後押ししてくれるエネルギーともなります。

人付き合いの苦手意識を持つ作家たち

作家の鈴木弘樹氏は、『グラウンド』という作品で新潮新人賞を受賞し、その後、芥川賞の候補になりましたが、人付き合いの苦手意識が強いために電話にも出られないそうです。

ましてや人前に出られません。

そのために、新潮新人賞の授賞式さえ欠席しています。

『Webマガジン幻冬舎』に、朱川湊人氏の『スピーチは苦手です』という文が掲載されていました。

朱川氏は、『フクロウ男』でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、『白い部屋で月の歌を』で日本ホラー小説大賞短編賞を受賞しました。

さらに『花まんま』で直木賞を受賞した才能溢れる作家です。

朱川氏の『スピーチは苦手です』という文を読むと、本当にスピーチ恐怖症であることが伝わってきます。

たとえば、日本ホラー小説大賞授賞式では、「短編賞なので、ご挨拶も短編で失礼いたします」と、15秒ほどで終わらせたというエピソードを紹介しています。

ノーベル文学賞を受賞した川端康成にしても、自分のことを「山里にかくれたい者」とか「非社交的な日本の作家のうちでも非社交的」と書いています。

実際彼は小学校入学からしばらくの間学校に一人で行けないで、お手伝いさんに授業が終わるまで教室で付き添ってもらっていました。

このために、四年生頃までは毎年40日ほど欠席するなど不登校気味でした。

作家という仕事は、一人でこつこつ文章を作るということで、むしろ人付き合いが苦手の人に適する仕事なのかもしれません。

人付き合いが苦手という特性が有効に作用しているように思われます。

個性を糧にして何をするかが大事

むろん他の領域で活躍する有名人にも、人付き合いの苦手意識を強く感じている人は数多くいます。

インド独立運動の指導者マハトマ・ガンジーは、強い人付き合いの苦手意識を抱えていたといわれています。

ガンジーが選択した無抵抗主義(非暴力・不服従)という戦術は、彼の人付き合いが苦手という性格と結びついているのかもしれません。

動物と人間との壁についての認識に衝撃的な事実を提供した天才ゴリラ「ココ」の育ての親パターソン氏は、研究費の援助を依頼する電話をかけるとき、震えが止まらないということです。

多くの永続的な成功を納めた人々(ビジョナリー・ピープル)を取材し、成功の要因を分析したジェリー・ポラスらは、次のように結論しています。

「筆者は、ビジョナリーな人の個性は千差万別だということに気が付いた。

彼らはフィル博士(アメリカのメディアで人気のある心理学者)の解説に委ねたほうがよいような、あらゆる種類の心理的な課題を抱えている。

極端に内気な人もいれば、どうしようもなく強引な人もいる。

個性によって永続的な成功がおさめられるかどうかが決まるのではない。

重要なことは、その大切な個性を糧にして何をするのかということだ。

しかし、ビジョナリーな人は、彼ら自身が生きがいである何かを見つけ出し、しかも、非常な情熱を注ぎ込んで没頭することによって、まかり間違えば自分をだめにしてしまうような心理的課題を乗り越えている。」

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人付き合いの苦手な人の長所

内気な性格のままでも成功できる

成功した人々は、内気な性格を直してから、成功への取り組みを始めているのではありません。

内気な性格のままに、人付き合いの苦手意識を抱えながら、それを糧にして、建設的な方向に自分の情熱を注いでいるのです。

あなたは、人付き合いの苦手意識のために、他の人に迷惑をかけているわけではありません。

自分が苦しいだけなのであり、自分さえその苦しさを受け入れてしまえば、何ごともありません。

また、突き詰めていくと、そのつらささえ、自分で勝手に作りだしているものが大部分です。

ですから、「自分は人付き合いの苦手意識が強い人」と、割り切って受け入れてしまえば、問題は消滅してしまうのです。

人付き合いが苦手な人には、以下のような長所があります。

1.細やかな感受性

人と接することに負担を感じているので、人と人の内面についての感受性が磨かれていることが少なくありません。

また、社交場面に没入しないで一歩退いて見ていることが多いので、観察眼が優れていることもあります。

このために、人の細やかな心の動きに敏感で、人に共感でき、人に優しくできる素養があります。

2.他の人に尽くすことが喜び

人付き合いの苦手意識が強い人は、控えめで遠慮がちです。

パーティでも、招かれた客として会話に加わっているよりも、何か手伝いをするほうが好きという人が少なくありません。

人付き合いが苦手な人は、表で目立つ活躍を望むよりも、陰で役立つことで満足できます。

このために、人に尽くすことを喜びとすることができます。

3.仕事が丁寧

人付き合いが苦手な人は、苦手意識ゆえに常に先々のことを考えて仕事ができます。

そのために、やっつけ仕事ではなく、丁寧な仕事ができます。

また、責任感が強いので、安心して仕事をまかせられます。

4.成長への強い意欲

人付き合いが苦手な人の多くは、「こうありたい」「こうでなければならない」という自分に対しての強い意欲を持っています。

この度が過ぎて、完璧主義として苦しめられる人も少なくないのですが、この意欲を成長へのエネルギーとすることです。

自己成長、自己実現に向けて活動することで、人付き合いの苦手意識を乗り越えていくことを目指すことです。

5.一人で仕事ができる

人付き合いが苦手な人は、一人で耐える我慢強さがあります。

これは、組織や集団に依存しないでも仕事が出来る貴重な能力です。

多くの人が独立を夢見ています。

そして、大部分の人はその夢とは裏腹な人生を生きています。

しかし、会社を辞めて好きな金工の道に進んだ人、農業へと転身した人、陶芸を選んだ人などがいます。

いずれも一人でも仕事ができる能力を持った人たちです。

インターネットによって、世界中の人と、いながらにしてつながり合うことができるようになり、仕事の可能性は限りなく広がっています。

遠隔地の人と共同して仕事ができます。

田舎に住みながら最先端の情報を得て、仕事をすることができます。

不安を感じやすい性質をそのまま受け入れ、これらの長所を生かす手だてを考えることです。

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苦手意識を希望に変える方法

夢の実現計画を立てる

若い方には自己実現と結び付けて人付き合いの苦手意識を乗り越える視点をぜひ持って欲しい、と思います。

そのためには、夢の実現計画を立てることです。

それに沿った生活をすることです。

各種調査によれば、きちんとした人生設計を持っていない人のほうが圧倒的に多いそうです。

そうした人は、海図なしに大海を航行するように感じられます。

人生の海図なくしては、社会の大波小波に揺られ、苦手意識の中に漂うことになります。

夢の実現計画を持ち、その実現を目指して努力することです。

そこに人生の喜びがあり、苦手意識を乗り越えていく勇気が生まれます。

多くの人のライフヒストリーを分析したレビンソンという研究者は、若いときに抱いた夢への態度が、その人のその後の人生の豊かさと結びついていることを明らかにしています。

夢をそのままに実現できる人は少ないので、大多数の人は人生の比較的早い時期に夢と現実との折り合いをつける必要性に迫られます。

このときに早々と夢をあきらめてしまった人は、人生の意味を見いだせず、葛藤の多い人生を送ることになりがちです。

これに対し、夢を現実的なものに修正しながら、なんらかの形で自分の人生の中に位置づけてきた人は、より満足できる人生を送っていたというのです。

もっとも、さらに付け加えておくほうがよいかもしれません。

それは、夢の実現とは、人生の到着点ではないということです。

夢を実現すると、その先には、また新たな世界が開けてきます。

そして、その新たな世界で次の夢が必然的に提起されてくるのです。

人生設計を持つことのメリット

いかなる人生を望むのか、その夢の人生を実現するためにいかなる努力をするのか。

そうした計画を立てて実行していけば、自分で望む人生を作っていけるのです。

夢の目標を設定し、計画表を作成すると、次のようなことが生じます。

  1. 人生という大海を航海する海図が与えられることで、浮草的な不安定感や将来への不安など根底的な不安から開放されます。

    すぐには実現できないことでも、時間をかければ実現できるという見通しが得られます。

    人生計画とは、苦手意識を希望に転換する技術です。

  2. 目指すものが明確になれば、我慢せずに捨ててよい場面と、つらくとも全力で立ち向かわなければならない場面とが区別できるようになります。

    努力すべき事項と、関与せずに流せばよい事項とが明確になるので、時間とエネルギーの有効な配分が可能になります。

  3. つらさに耐えることが希望へとつながる意義ある体験であることが実感できます。

    立ち向かわねばならない事態には、向かっていく勇気とエネルギーが湧いてきます。

    その結果、望む人生に必要な能力が効率的に形成されます。

  4. つらさのみでなく、自分が成長しつつあるという実感や、目標へと近づきつつあるという自己実現の喜びを体験できます。

    人生設計を持つということは、「自分を生き、自己実現する」ことに他なりません。

    自分の人生を生きているという確かな感覚を持って生きることができます。

夢の実現計画を持つ

人生で何が大切かを確認する

人生設計をするためには、何に価値を置いて自分の人生を作ろうとするのかをはっきりさせる必要があります。

つまり、どのような人生を送りたいのか、いかなる夢を実現させたいのかを確認することです。

人生のイメージや実現したい夢がはっきりしている人は、それを改めて確認すればよいでしょう。

明確に描き切れていない人は、自分の人生で価値を置くものをはっきりさせる作業から始めることです。

そのために、以下のような作業をすると有益です。

1.自分が欲するものを列挙する

A4の白紙に、自分が欲しいものを思いつくままに書いていきます。

とにかく、思いつくままにどんどん書き出していきます。

大金持ちになりたい、マンションが欲しい、恋人が欲しい、車が欲しい。

あるいは、趣味の〇〇で上手になりたい、友達に好かれたい、もっと安定した仕事に就きたい、資格を取りたい、漫画家になりたい、有名になりたい等々。

2.生きるのに必須でないものを削除する

上記で書き出したもののうち、「なくても生きていけるもの」を二重線で消していきます。

おそらく、削除されるのは、物質的なものや、有名になりたいなど自分の外面的なものが圧倒的多数になります。

このことで、自分がいかに物質的欲求と承認欲求(顕示欲求)とにとらわれているかが実感できます。

3.生きるのに必須のものを確認する

上記の作業を行うと、生きるために必須なものはごくごく少数になります。

例えば、健康、収入、愛、そして夢(自己実現)などです。

レビンソンが指摘しているように、夢を持ち、夢の実現を目指して自己成長することは、人生を生き生きと生きていく上で必須のことです。

このように、一度余計なものを切り捨ててみると、余計な望みで苦労することなどばかばかしいと思えます。

人生に必須のものだけを大事にしていけばいいではないか、そんな覚悟が定まります。

人生価値の確認をすることによって、自分の人生を貫くべき太い骨格が浮かび上がります。

それを柱に人生設計を描くことができます。

人生計画の設定

1.長期計画の設定

時間と人生価値の二次元の表として人生計画を作成します。

時間は自分なりに見通せる先までとします。

2.年間計画と月間計画

5年間の目標が定まると、今年一年でどこまで達成するかの目標も定まります。

年間の目標が定まると、各月の目標が設定されます。

これを毎年、年始めに2,3日費やして作り、システム手帳に蓄積します。

また、いつも持ち歩くハンディな手帳の年間計画表にも記入します。

月の初めの日には、その月の目標を手帳に記入します。

年間計画や月間計画は、「〇〇をする」という行動としての目標・計画を書くことがポイントです。

「〇〇をする」という目標・計画は、自分の努力のみで達成可能な目標だからです。

3.週計画

週の初めに、今週の目標・計画を決めて、手帳に列記します。

実行したら、週目標の当該項目に二本線を引き、「済」と書いておきます。

週末に近づくにつれ、二本線が引かれる事項が増えていきますので、前進している様子がわかって、手帳を見るのが快感になります。

その週に済まなかった事項は、次の週の目標・計画として再び記入することにします。

4.実行・点検・修正

できるだけ計画通りに実行するように努力します。

実行状況を、毎日、週、月間計画の実行状況について点検します。

大体は希望的な計画を立てがちなので、必ずしも計画通り実行できるわけではありません。

ですから、実行状況に応じて、計画を適宜修正していきます。

また、あまり厳格に計画通りにしようとすると、潤いのない、狭い生活になってしまいます。

柔軟性を持ちつつ、長期的に見れば目標達成に向けて進んでいる、という状態がいいようです。

「精神的に強くないと、目標に向けて長期的な努力などできない」と言う人がいます。

逆なのです。

心が弱いからこそ計画が必要なのです。

計画がなかったら、日々の出来事だけに心を向けていくことになってしまうからこそ、計画が必要なのです。

計画がなくても実行できる人は、よほど心の強い人です。

何事も行動しなければ変わらない

「幸不幸は心の持ち方次第だ」と言われます。

部分的には真実ですが、部分的には誤りです。

幸不幸は私たちの心の持ち方のみで決まるのではなく、いかなる人生を作り出すかで決まるのです。

自分を成長させ、よりよい人生を作る努力をすることで、幸福と安心がもたらされるのです。

自分が勝手に作った苦しみ、こんなことで苦しんで、自分の人生を楽しめないなんてバカバカしいことです。

一度しかない人生。

自分があと数年で死んでも、満足できると思う人生を今作ることです。

満足できる人生を今、送ることです。

「そうしたいのはやまやまだが、それができないほどつらい」

それなら医者に行って、薬の助けを借りましょう。カウンセラーの力を借りることにしましょう。

とどまることなく前進しましょう。

行動しなければ、何ごとも変わりません。

「心は自転車と同じ」。

自転車も心も、止まったら不安定になります。

視線を適度に前方に向けて、適度な速さで進むことで心も安定するのです。

夢の実現に向かって、自分の望む人生に向かって、勇気をふるって進みましょう。