他者との上手な交流のコツ

他者との上手な交流の心得

今の自分はどういう人と親しくするべきか

頭のいい人間関係のコツは、仕事で成果を出すという目的にも有効です。

そのために知っておきたいのは、次の三つのアプローチです。

  1. 達成目標を明確にして、成果の出るチームを作るアプローチ
  2. 好きな仕事を追求して、そこで出会うキーパーソンたちと協力するアプローチ
  3. 仕事で出会った「おもしろい人たち」と、得意分野を提供し合うアプローチ

まず、一口に「成果」と言っても、人によってイメージする形は違います。

「パーティーを楽しむ」
「スピーチを成功させる」
「友達を作る」

など、人それぞれでしょう。
しかし、いずれにしても自分一人の力では限界があるということについては、誰も異論はないはずです。

そこで、一人でするよりも大きな成果を得られるようなチームで仕事をする。
そのチーム作りに活かしたいアプローチが、今挙げた三つなのです。

一つずつ、説明していきましょう。まず、

1.達成目標を明確にして、成果の出るチームを作るアプローチ

このアプローチでは、まず、どういう分野でどういう成果を出したいのかを具体的にイメージしてください。

大まかな方向性でもいいでしょう。

そのときのポイントは、あまり無理すぎない目標を設定すること。
最初は現在している仕事の延長線上にあるもののほうがいいでしょう。
つまり、自分にしっくり来る目標でありながら、一人で実現するのは難しいと思われる目標です。

そして目標が決まったら、その目標を達成するために必要なチームメンバーを想像します。
自分だけの最強チームのメンバー構成を考えるということです。

どういう人が必要なのか―。

そして、自分はそのチームの中でどのような役割をするのか―。

これらについて、じっくり考えます。
あなたの周りにいる人だけでなくてもかまいません。
「マーケティングに強い人」「食品業界に精通している人」など、目標を達成するために必要な人材を挙げていくことです。

そうすると、徐々に二つのことが見えてきます。

A.どういう人と親しくするべきか
B.そのチームでの自分の役割は何か(自分の得意分野は何か)

この二つは、どちらも大切です。

Aを考えた場合、社内の人もいれば社外の人もいるでしょう。

どちらが先という順番はありません。
職種によっては、社内で認められるより社外で認められるほうが簡単な場合もあります。

Bもまた、見過ごせません。
親しくしたい人から認められるためには、自分の得意分野がなければ難しいからです。

2.好きな仕事を追求して、そこで出会うキーパーソンたちと協力するアプローチ

目標を明確にしてそれを実現するための計画を立てると良いのですが、そこでより取り組みやすいのが、このアプローチ。
まず好きな仕事や業界で、自分の専門性を高めていきます。

そうして「このテーマについては自分」という認識がある程度広がってくると、出会う人も同じようなタイプが増えてきます。

そこで、その人たちと協力して取り組めるプロジェクトを企画するのです。

1のアプローチが「自分の目標」を起点としているのに対し、2は専門性の高い「人」を起点とするアプローチです。

「専門性」という土俵のうえで同じレベルの人たちと組むことで、ほかの人たちと組んだのでは出せない成果も期待できるはずです。

最後に、3仕事で出会った「おもしろい人たち」と、得意分野を提供し合うアプローチ

前の2が専門性の高い「人」を起点としたアプローチなら、3は、もっと「一緒に楽しいことをやろう」という「人」を起点としたアプローチです。

ここでは、「何をするか」の前に「誰とするか」を決め、その相手の顔を見ながら「何をするか」を考えます。

ここでも、一人ではできないことに取り組むことがポイントです。

ただ、ここで注意してほしいことがあります。

それは、成果を出せる仕事を中心にチームを組むこと
成果が出ない仕事には、誰も協力しつづけてくれないからです。

多くの人は、まず好きな仕事があって、そのためのチームを作ろうとします。

それでは成果が出にくいので、誰も幸せにはなりません。

誰もが幸せになるためには、成果を出せる仕事で、周りの人を巻き込むことが大切なのです。

と言っても、いきなり大勢のチームを組むことは、非常に困難です。

まずは、二人でチームを組むことから始めてください

たとえば、企画セールスの人と技術者など、違った職種の二人でチームを組みます。

同じ職種でないほうが、より効果的に成果を出せるからです。

二人のチームで成果を出せるようになったら、少しずつ人数を増やしていきます。

すると、最終的に自分が得意な仕事に特化したチーム体制が作られてきます。

苦手なことは、ほかの得意な人がしてくれるチーム体制ができてくるのです。

もし自分が成果を出せる分野があるのなら、自分のチームを作る。

もし、そういう分野が見つけられないようなら、他人のチームに入り、サポートする立場から始めてみればいいでしょう。

自分が手伝える部分は、必ずあるはずです。

あいさつの大切さ

仕事ができる人とできない人の違いは、意外なところに現れます。

それは、あいさつをするときです。

なんと、できる人は、あいさつにも目的を持っているのです。

まだいっしょに仕事をしていない段階、お互いの関係がまだできていない段階で、日々できることはあいさつくらいしかありません。

だから、ひたすらあいさつをすることが大切です。

相手から「あの人はあいさつをしてくれる人なんだ」と思われるようになるまで、しつこくあいさつします。

「自分の行動」を変えれば、「相手の行動・感情」まで変わる典型的な方法です。

ただ、「おはようございます」「こんにちは」という決まりきったあいさつだけをしていても意味がありません。

たとえば、何かに困っているようであれば、「大丈夫ですか?」「何かお困りですか?」と声をかけることもあいさつの一つです。

楽しそうにしていれば、「何かいいことがあったのですか?」と聞くのもいいでしょう。

相手は、自分のことを気にかけてくれたことを喜んでくれるはずです。
そこから、何気ない会話に発展して、お互いのことを知る機会が訪れるのです。
これが信頼や好感の元になります。

それもこれも、

あいさつには人間関係を「強化する」という目的がある

からです。

目的を持つだけでも、あいさつの仕方が変わってきます。

だから、偶然出会ったときにあいさつをするのではなく、わざわざ機会を作ってあいさつすることが大切です。

たとえば、同じ時間、同じ場所であいさつをすれば、相手の記憶に刷り込むことができます。

決まった時間に、必ず電話をかけるのでもいいでしょう。

あるベンチャー企業の経営者は、創業当時から自分の思いや考えを毎朝全社に向けてメールしていました。

また、ある企画マンは、週に2~3回は、役員室の前で役員を待ち伏せし、朝のあいさつと報告をしていたそうです。

つまり、自分の存在を相手に印象づけることを習慣にする―。

そうすると、どうなるでしょうか?

ひんぱんにあいさつをしていると、急なアポでも取りやすくなります。

たとえ役員などの偉い人であっても、いつも忙しくしている人であっても、すぐに会ってくれるようになるのです。

たかがあいさつだと思ってはいけません。
人間関係を強化するためには、あいさつがもっとも重要なのです。

そのためには、目的を持ってあいさつをする習慣を身につけましょう。

他者との上手な交流の技術

雑談の大切さ

あなたは、知り合ったばかりの人と15分以上雑談ができますか?

雑談ができるのは、人間関係を強化する大きなチャンスです。

このチャンスを逃さないことが大切です。

では、どのようにすれば、雑談で人間関係を強化できるのでしょうか?

最初は、天気や季節の話題、お互いの共通テーマから雑談を始めると思います。
しかし、それだけではあなたの印象を相手に植えつけることができません。

雑談で重要なのは―、

相手と自分の違いを浮き彫りにすることです。

発想の違い、習慣の違い、言葉の違い、好みの違いなど、相手に「そんな話を聞いたのは、初めてですよ!」と言われるような雑談を探すことが重要なのです。

最近、こういうことがありました。

三歳の子どもがいるお母さんと話していたときのことです。
彼女は、「子どもに文字を教えるのは、できるだけ大きくなってからにしたい」と言ったのです。

私は、彼女がそう考える理由に興味が湧きました。
聞いてみると、「絵本を見たとき、文字情報ではなく、絵だけから受ける印象や感受性を大事にしたい」という答えでした。

私には思いつかない考え方だったので、彼女にますます興味が湧きました。
彼女の印象はいつまでも残っています。

このような雑談が、相手に自分の印象を残す雑談です。

これは、仕事上での雑談でも同じです。

まずは、次のように、何気ないことから話題を振ります。

「上野で国宝展をやっていましたよ」
「最近は投資銀行がまた調子いいみたいですね」
(電車の中で)「あの広告のコピーはどうですかね?」

そして、話が広がりそうであれば、自分の意見や考え方など、もっと踏み込んでいけばいいのです。

すべての話題が相手にヒットするわけではありません。
あいまいな返事しか返ってこなければ、また別の質問をすればいい。
ひたすら話を振るようにして、ヒットする話題を探るということです。

雑談ですので、思い切った意見も言えます。
誰もが言うような意見ではなく、少し尖った意見のほうが、相手の印象に残りやすいということを覚えておいてください。

相手の話題に耳を傾ける

人から好感を得られるかどうかは、何かを「おすすめ」されたときの対応で決まる―。

その理由を、具体的な例を挙げて説明しましょう。

たとえば、知人からおすすめのレストランを教えてもらった場合、あなたはどのようにしていますか?

多くの人は、「いいですね。今度行ってみます」と言うでしょう。
それは、何も問題ありません。

でも、本当にそのレストランに行きますか?

ここで大きな差がついてしまいます。

好感を持たれる人ほど、実際におすすめのレストランに足を運ぶのです。

しかも、それだけではありません。

さらにできる人は、おすすめのレストランに行ったことを、ちゃんと相手に伝えるのです。

そうすると、相手はどう思うでしょうか?

非常にうれしいですよね。
おすすめだと思って紹介しているわけですから、実際に試してもらえたら、うれしくないはずがありません。

ところが、ほとんどの人が試さない。
仮に試したとしても、コメントを伝えない。

だからこそ、そこにチャンスがあります。
誰もしないことなので、相手はものすごく喜んでくれます。

立場を逆にして考えてみれば、この効果はわかりやすいと思います。

たとえば、「どこかおすすめの店知りませんか?」と尋ねられて、何軒か紹介したのに、その後何も言ってこなかったら、少なからず寂しい思いをしますよね。

「あそこ、行ってきましたよ」という一言でもあれば、「あぁ、紹介して良かった」と思うはずです。
「またおすすめしよう!」とも思います。

これは、レストランだけでなく、すべてのおすすめに当てはまります。

会話の中で、おすすめが出てきたら、どんなものでも試すようにしましょう。
「おすすめの本」「おすすめのスイーツ」「おすすめの映画」「おすすめの音楽」「おすすめのバー」「おすすめの子ども用品」など試してコメントを返す。

相手が忘れてしまわないうちにコメントを返すことが重要です。
だから、すぐできることは、すぐ試すことです。

何かをおすすめされたら、すぐに試す。

そして、試したことを相手に伝える。

人からおすすめされたら、できるだけ意識して試し、報告する。
あまりそういう人が少ないのか、必ず相手は喜んでくれます。
次から次へとおすすめを紹介してくれるので、ひんぱんにやり取りができるようになります。

このコツが、人間関係を強固なものにしてくれることを、日々実感しています。

良かったものリスト

まずは、仕事ではなく、ささいなことで頼られる人になる―。

社内で信頼を築くなら、ささいなことから始めるのが一番です。

ささいなことで、まずは日常でのコミュニケーションを増やす。

すると、その積み重ねが土台となって、いざ仕事となったときにもスムーズに協力し合える関係が、知らず知らずのうちにでき上がっているというわけです。

では、その「ささいなこと」とは、いったいどんなことでしょうか?

それは、「良かったものリスト」を作ること―。

具体的な例を挙げて説明していきましょう。

たとえば、取引先にお土産を持っていく場合を考えてみます。

ちょっと気の利いたお土産を持っていきたい場合、あなたはどうしていますか?

ネットで調べる人もいれば、くわしい人に聞く人もいます。

しかし、ネットで調べるのは時間がかかります。

時間をかけても、情報が溢れているので「よくわからない」ということもあります。

だから、たいていの場合は、いつも同じお土産を持っていくか、くわしい人に聞くか、このどちらかになってしまうでしょう。

このような状況を考えると、人から頼られる方法は、簡単に想像できます。

お土産にくわしい人になればいい―ということです。

「〇〇さんに聞けば、いいお土産を教えてくれる」という存在になれば、みな頼ってくれます。

そのためにも、「良かったものリスト」を作ることが大切です。

もちろん、これは、お土産だけに当てはまることではありません。
あらゆることに応用ができます。

たとえば、「ランチがおいしいカフェ」「接待に最適なレストラン」「出張先で良かったビジネスホテル」など、どんなことでも「良かったものリスト」を作っておけば、「頼られる人」になれるのです。

「良かったものリスト」を作るコツは、それを試した人に”驚き”を提供できるものと意識すること―。

そのため、自分で実際に試すことが重要です。
「とても良かったものリスト」「話題にできるものリスト」など、リストをよりレベルアップさせていきます。

おすすめを試した人に”驚き”を提供できると、「こんなものを〇〇さんから教えてもらったよ」と、口コミであなたの評判が広がるようになります。

これが、このコツの一番の狙いです。

だから、相手の口から別の人に自分を紹介してもらえるようなおすすめリストにすることを目指します。

たとえば、東京から大阪に出張した場合、経費の範囲内でいいホテルに泊まりたいと、誰でも思うのではないでしょうか。

ただ、求める要素は異なります。

天然温泉がついているビジネスホテル
得意先が近いビジネスホテル
夜遅くまで遊べるビジネスホテル
朝食がおいしいビジネスホテル
チェックアウトが遅いビジネスホテル

など、相手が求める要求に対して、適切なビジネスホテルをおすすめします。

いろいろな選択肢を用意して、相手の要望に応じて提案できるのが理想です。

相手が驚いてくれそうなビジネスホテルをおすすめするのです。

そのためにも、いつも同じビジネスホテルに泊まるのではなく、いろいろなビジネスホテルに泊まるようにする。

「私は、ビジネスホテルにくわしくなる」という意識を持っていれば、自然とそのビジネスホテルの特徴をチェックするようになります。

すべてのことに精通する必要はありません。
あなたが興味のあることを一つ決めて、くわしくなるようにすればいいのです。

多くの人に頼られるためには、できる限り汎用性があるものがいいと思いますが、好きなもの、自分が気になるものなら何でもいいでしょう。

「良かった家電製品のリスト」「良かったダイエット法のリスト」「良かったマンガのリスト」「良かったiphoneのアプリのリスト」「良かったベランダ菜園の育て方リスト」「良かった文房具のリスト」・・・など、どれか一つくらいは気になるものがあるはずです。

これらは、後々自分の得意分野になる可能性があります。
ほかの人よりも圧倒的な知識量を誇れば、それが自分の強みになります。

戦略的に考えるならば、仕事のことのほうがより理想的です。

「良かったビジネス書のリスト」「良かった勉強会のリスト」「良かった(相手に印象が残る)名刺のリスト」「打ち合わせで使える喫茶店のリスト」・・・。

まずは、興味があることを自分で試して、リストを作ることから始めてください。

すると、いつの間にか、そのことについて、知らない人からでも聞かれるようになります。

自然と誰からも頼られる存在になるのです。

ささやかなことから人間関係を役立てる

あなたは、使わなくなったパソコンやプリンター、家具をどうしていますか?

部屋の片隅に眠らせているか、不良品回収に出しているのなら、これほどもったいないことはありません。

何もリサイクルしないことが、もったいないと言っているのではありません。

人間関係にとって、もったいない。

どんなものであっても、人間関係に役立てることができるのです。

それは、自分が使わなくなったものでも言えます。

まだ使えるならば、人にあげることをおすすめします。

自分で使いたいという人もいれば、オークションをやっている人もいます。

そういう人にパソコンやプリンター、家具を譲れば、とても喜ばれます。

これは、ヤクザの人心掌握術と同じ原理です。

具体的な例を紹介しましょう。

ヤクザの親分が高級な時計をしています。
それを見た子分が言いました。
「ボス、いい時計をされていますね」
「おお、これか。じゃ、やる」
そう言って、親分はおもむろに時計を外して、子分にあげてしまいました。

ヤクザの親分は、このようにして子分の心を掌握するのです。

何もヤクザの真似をして高価なものをあげろと言っているわけでもありません。

まだ使えるけれど、自分が使わなくなったものを譲るだけでいい

そういったものは、かなりあるのではないでしょうか。

たとえば子ども服。
子どもはすぐに大きくなるので、まだ使えるのに、服や靴はいらなくなってしまいます。

だから、段ボール単位で別の家からまた別の家に移動しています。

そういう家族ぐるみの付き合いができるようになると、人間関係は強いものになります。

このように仕事上で使うものだけでなく、本や服、家電製品、家具など、使わなくなったものをあげるのでもいいのです。

たとえば、お中元やお歳暮などの贈り物でお酒をたくさんいただくことがあります。

そういう場合は、誰かにあげるのもひとつの選択肢です。

自分「お酒は飲みますか?」
相手「よく飲みますよ」
自分「ウィスキーがあるんですけど、飲みますか?」
相手「いいんですか!とてもうれしいです」

また、次のようなことがありました。

相手「ゴルフはやらないのですか?」
自分「いえ、やらないですね」
相手「ゴルフセットがあったら、やりますか?」

この人は、ゴルフセットを誰かに譲りたいようでした。
おそらく、相手は新しいゴルフセットを買いたかったのだと思います。

つまり、相手が本当に欲しいものかどうかを考える必要はないということ。
気軽に聞いてみればいいのです。

使わなくなったものをあげるというのは、その人と話をするチャンスでもあります。

つまり、この「使わなくなったものを人にあげる」というコツは、「話しかけるキッカケ作り」としても使うことができるということ。

ですから、相手に拒まれても、問題はありません。

「会話をした」「接点を探った」ということに意味があるのです。