離婚の心理学

“ものごとの解釈が人を不幸にする”

イソップ物語に「ラクダとゼウス」という話がある。

ウシが自分の角を自慢していたので、それを見たラクダが羨ましくなって、自分にもああいうものが欲しいと思う。

そこでラクダは、ゼウスのところへ行って、角をくださいと頼む。
ゼウスは、ラクダが体も大きく力もあるのに満足しないで、余計なものまで欲しがるのに腹を立てて、角をやらなかったばかりか、耳をとってしまったという話である。

ラクダに角があったら、ラクダはラクダでなくなってしまう。

それなのに、ウシが自分の角を自慢しているのを聞くとラクダは角が欲しくなる。

人が何かを自慢しているのを聞いて、それが羨ましいと思うときは、「自分が自分でなくなる」危険にさらされている時なのである。

あなたは今、何かを欲しいと思っているかもしれない。
しかし、よくそのことを考えることである。

誰かに自慢されているからそれを欲しがっているのではないか。

もしそうなら、あなたはその「欲しいもの」を得たら、あなたはあなたでなくなってしまうかもしれない。
あなたの人生は、それがないから救われているのかもしれない。

あなたは、あなたの人生で何か格好が悪いと思っていることがあるだろう。
誰にでも「格好が悪い」と思っていることはある。

しかし、じつはその「格好が悪い」ということがあるからこそ、あなたはあなたなのである。

たとえば、あなたは離婚したとする。
世間ではこれを「バツイチ」というらしい。

しかし、じつはあなたは離婚をしているからこそあなたなのである。
離婚をしていなければあなたはあなたではない。

離婚をする理由はいろいろとある。
あなたが離婚したのには、あなた固有の理由がある。
結婚生活は「こうあるべき」と思う妻は、結婚生活に絶望するだろう、そして、離婚するだろう。
また、人と親しくなれない夫は、結婚生活が苦しくて離婚するだろう。

離婚は、あなたがそれまでに歩いてきた人生の結果なのである。

だから、もし離婚をしていなければあなたがあなたではなくなる。

あなたは、あなたが日々してきたことの積み重ねの結果として離婚をしているのである。

また、同じ離婚という体験をしても、ある人は長く苦しみ、別の人は長く苦しまない。
離婚そのものが人を不幸にするのではなく、りこんをどうかいしゃくするかということや、その人がどのようなパーソナリティかということが、人を不幸にするのである。

ハーヴァード大学の心理学のエレン・ランガー教授によると、離婚後も長く苦しむ人は、離婚の原因を相手のせいにする人だという。

離婚も、離婚後の辛さも、全てその人の、それまでの生き方の結果である。
だから、離婚をした人は、離婚をしたからこそ、そのひとなのである。

対人恐怖症、社交不安障害を克服するには「格好が悪い」ということがあるからこそ、あなたはあなたなのであることを受け容れることである。