対人恐怖症、社交不安障害の認知行動療法

認知行動療法とは、簡単に言うと認知のゆがみを正して行動していくという治療方法で、その治療効果は抗不安薬と同等以上、また薬を使った治療よりも疾患の再発率もかなり低いといったデータが出ています。

その方法の流れとしては

①まず自分の置かれている状況と自分の思考を記します。

②それに不安度合いを点数にしてつけます。

③認知のゆがみのタイプを記します。

④認知のゆがみの正した後の考えを記します。

⑤それに再度不安度合いを点数にしてつけます。

具体的にどうやるかを記すその前に、③の認知のゆがみとは何かということをお話します。

認知のゆがみとはすでに専門のドクターたちによって決定されたもので、主10パターンに分類されます。

1.全か無か思考
 ほとんどの問題は, 白か黒かのどちらかに決めることはできず、事実はそれらの中間にあるものですが、物事を見るときに、「白か黒か」という2つに1つのの見方をしてしまうことを「全か無か思考」といいます。

             

2.一般化のしすぎ
 1つの良くない出来事があると,「いつも決まってこうだ」、「うまくいったためしがない」などと考えること。

3.心のフィルター
 1つの良くないことにこだわってくよくよ考え、他のことはすべて無視してしまうこと。
 ちょうど1滴のインクがコップ全体の水を黒くしてしまうように。「心のサングラス」ともいう。

4.マイナス化思考
 単によいことを無視するだけでなく、なんでもないことやよい出来事を悪い出来事にすり替えてしまうこと。

5.結論の飛躍
 特に確かな理由もないのに悲観的・自分は良くないんだ・悲しいというような結論を出してしまう。

 a. 心の読みすぎ(mind reading):ある人が自分に悪く反応したと早合点してしまうこと

 b. 先読みの誤り(the fortune teller error):今の様子は確実に悪くなると決めつけること

6.誇大視と過小評価
 自分の短所や失敗を大げさに考え,逆に長所や成功したことをあまり評価しない。
 「双眼鏡のトリック」とも言う。

7.感情的決めつけ
 自分の感情が現実をリアルに反映して、事実を証明する証拠であるかのように考えてしまうこと。

8.すべき思考
 何かやろうとする時に「~すべき]「~すべきでない」と考える。

9.レッテル貼り
 ミスや失敗をした時に,「自分は負けだ」、「とんまもの!」などと自分にネガティブなレッテルを貼ってしまうこと。

10.自己関連づけ
 何か良くないことが起こった時、自分に責任がないような場合でも自分のせいにしてしまうこと。

これらが認知のゆがみのパターンになります。

それでは、認知行動療法の具体的なやり方を説明します。

例えば、休日に職場のみんなで会食に出かけたとする。

①会食時にナイフとフォークを持つ手が震えてしまって、きっとみんなそれを見て変な人だと思っているに違いない。
②不安度:80

③認知のゆがみ:マイナス化思考、結論の飛躍、誇大視と過小評価、レッテル貼り
④他の人たちは自分の食事や他の人たちとの会話に集中していて、自分の震えに特に注視していない。
⑤不安度:40

といった具合に客観的にものごとを見直すことで不安度合いが下がったのである。

また、こういった不安場面にチャレンジする順序として、不安が小さくて自分でチャレンジできそうな場面からチャレンジして少しずつ成功体験を重ねていくことが望ましいとされる。

まずは一人で喫茶店に行く。→仲の良い友人と喫茶店に行く。→職場の人達と会食する。

といった感じだ。

私自身も経験したことだが自分でも思ったより、客観的に見て認知が歪んでいて更にそれに気付かない場合が多いので、ぜひこれを機会に自分の認知について考えてみてください。