心理的に健康な学生と悩んでノイローゼになっている学生の違いははっきりしている。
心理的に健康な学生は、自分が学生であるということをわきまえている。
だから学生と教授という関係から始まる。
その学生のアイデンティティーはしっかりしている。
学生と教授として付き合っているうちに次第に親しくなり、関係が変化してくる。
人間として親しくなるのは、その後である。
しかし、悩んでいる学生は、いきなりわたしとの関係は「親しい友人」になってしまう。
いきなり「私とあなた」なのである。
悩んでいる人の手紙は、「私もあなたと同じ」というものである。
初めての手紙から「親しい友人」が書くような手紙を書く。
決して初めての人の手紙にはならない。
悩んでいる人は、見知らぬ人でも、自分がその人と付き合おうとすると、その時から二人の間にはホットラインが引かれてしまう。
相手にとって自分は特別な人間になる。
そうなればすぐに傷つく。
なぜなら、相手が自分を特別な人間としか扱わないからである。
相手が連絡用に二つの電話を引いているとする。
一つは個人的に親しい人用、昔なじみとか、親友とか恋人用のものである。
もう一つは仕事用の一般公開のもの。
すると、悩んでいる人は親しくなくても、一度もあっていなくても、親友とか恋人用の電話にかけてくる。
すると断られる。
そこで傷つく。
相手はこちらを親友とは思っていないということが理解できない。
悩んでいる人は、人間関係における自分の位置がわかっていない。
この人と自分は「花屋さんとお客さん」とか、この人と自分は「タクシーの運転手さんとお客さん」とか、この人と自分は「親子」とか、この人と自分は「高校の友人」とか、この人と自分は「たまたま喫茶店で隣に座った人」とか、そういう人間関係が理解できていない。
人は誰でもすぐに親友になるわけではない。
時間をかけて親友になっていく。
少しずつ信頼関係を築いていく。
じかんをかけてお互いが特別な人間になっていく。
しかし悩んでいる人は、自分が「ある人と会いたい」と思うと、すぐに心理的に「親しい人」になってしまう。
親しい人のつもりで接すると、相手がこちらを親しい人として扱わない。
だから傷つく。
対人恐怖症、社交不安障害を克服するには、人との位置関係を再度見直してみることである。