今に集中する
どんな人でも、何かに心から集中した体験があると思います。
一般に「時が経つのも忘れた」と言われるような時間です。
そんなときには、頭も心も澄みわたり、余計な思考もなく、生産性が最も高まるもの。
それは、「今」に集中しているとき、と言えます。
まさに今、自分が取り組んでいることだけに集中しているからです。
このように「今」に集中しているときは、「あのとき、あんなふうにしなければよかった」と過去のことをクヨクヨ考えたり、「うまくいかなかったらどうしよう」と未来のことを思い煩ったりすることもありません。
「自分はダメなのではないか」などという余計な思考も浮かびませんので、自虐の世界に陥っていくこともないのです。
「今」に集中しているときには、自分の能力が最大限に発揮されます。
ですから、全般に、「自分についての感じ方」もよくなるのです。
この、「今への集中」は、「DO」ではなく「BE」です。
どれほど「今に集中できたか」という成果は問題ではありません。
「過去や未来ではなく、今を大切にしたい」という気持ちでいることが大切なのです。
「私は「今」に集中できているだろうか」などと「成果」を気にしてしまうと、間違いなく「今」への集中が妨げられるでしょう。
「自信がない」と思うときは、「今」に集中できずに気が散ってしまっているとき、と言えます。
気が散れば当然「成果」も下がりますし、その結果「やっぱり自分はダメだ」ということになるとますます自信を感じられなくなる、と「自分についての感じ方が悪くなる」悪循環に入ってしまうのです。
ポイント:「過去」や「未来」を考えない方がうまくいく
「完璧」を手放す
例:ミスしないで書類を作る自信がなくて、焦って余計ミスしてしまう。
完璧な「BEの自信」を目指さないでくださいということについてですが、なんであれ、「完璧」を目指す限り、自信を感じることはできません。
そもそも、いろいろな限界を持った人間に「完璧」はあり得ないので、目標として不適切です。
そしてそれ以上に問題なのは、「完璧」を目指そうとすると、常に自分に対して批判的な目を向けなければならない、ということです。
「まだどこか足りないのではないか」「ミスがあったらどうしよう」という目で自分を見ることは、決して自分についてのよい感じ方をもたらしません。
つまり、「完璧」を目指している限り、自信を感じられないのです。
そして、この例でもそうですが、結果としては焦って余計にミスをする、などということが起こってきます。
なぜかと言うと、「完璧」を目指す気持ちは、「今」から気を散らすものだからです。
「今」に集中するときこそ、集中力が最も高まり、能力も最大限に発揮できるのですが、「まだどこか足りないのではないか」「ミスがあったらどうしよう」ということを考えているときは、自分の思考に目が向いてしまっていて、とても「今」目の前にある仕事に集中しているとは言えないのです。
当然、ミスも増えることになります。
つまり、ポイントは、「ミスしないで書類を作る自信」にあるのではなく、「完璧」を手放すことにあるのです。
それが、「今」に集中するということです。
この構造をよくわかっておかないと、「またミスをしたらどうしよう!」ということで頭がいっぱいになってしまい、ますます「今」に集中できなくなってしまいます。
そしてもちろん、ますます「自信がない」という感覚が強まってしまうのです。
結果としてミスも増えてしまうでしょう。
もちろん、さらに自信が失われます。
例:がんばっているけれども、いつもコンスタントによい結果を出す自信がなくてつらい。
これも「完璧」を手放すことについての話と見ることができます。
「いつもコンスタントによい結果を出す」というのは一種の「完璧」ですね。
しかし、結果はいろいろな要件によって左右されるもの。
つまり、状況によって左右される「DO」の「成果」なのです。
そこに自信を求めていくと、もちろんどんどん追い込まれてしまいますから、つらいですね。
「BEの自信」に支えられない「DOの自信」は、「もっと、もっと」とどんどん不安にからめ取られていくもの。
ですから、ここでつらい感じ方になっているのは当然なのです。
ポイント:「ミスしたらどうしよう」と思えば思う程、つらくなる
自分なりの「BE」を考える
「BEの自信」がなければ、どんなに「DOの自信」を積み上げていっても、不安になるでしょう。
こんなつらさから脱するために、自分なりに「BE」(どうありたいか)を考えてみましょう。
「仕事は誠実にがんばりたい」「心をこめて日々の暮らしを送りたい」など、「ありたい自分」を考えてみてください。
「BE」の状態は、あくまでも自分自身の心の姿勢の話ですので、「よい評価を得たい」などということは不適切です。
今思いつく「BE」があれば、紙に書いていってみましょう。
自分が大切にしたい「BE」は、日々発見していくものでもあるからです。
もしも「仕事は誠実にがんばりたい」という「BE」を決めたら、それを大切にする自分を愛おしく思ってみましょう。
これが「BEの自信」です。
状況がどうなろうと、自分は誠実に仕事をがんばりたい。
そんな自分が誇らしく愛おしい。
そう感じることができれば、結果は完全に「二の次」となります。
そうは言っても、誠実にがんばるとき、仕事の「成果」は最高のものとなるでしょう。
ですから、「DOの自信」も感じることができると思います。
もちろん、「成果」は状況によるもの。
場合によってはよい「成果」が上がらないことがあるかもしれません。
でも、誠実な仕事ぶりは、多くの人に理解してもらえるでしょう。
ポイント:ありたい自分を決め、愛しく思う
目標を小さく設定する
例:仕事を完璧に仕上げる自信がなくて、いつも先送りし、納期に間に合わない。
これもやはり「完璧」に関するはなしなのですが、「仕上げ」という要素があると、どうしても思考が「完璧」寄りになってしまいがちですね。
そして結果として納期に間に合わなくなる、という実害がでていますので、事態は深刻です。
ここで言われている「仕事を完璧に仕上げる自信がない」ということは、「なりすましの自信のなさ」です。
「仕事をきちんと仕上げられるかどうか不安なので、いつも先送りし、納期に間に合わない」と言い換えてみると、その本質が見えてきます。
不安は、安全が確保されていないときに持つ感情です。
そして、「仕事が仕上がるか」は未来の「成果」ですので、安全が確保される性質のものではありません。
未来の結果には常に「未知の要素」があるからです。
ですから、仕事の仕上がりに不安を感じるのは、人間として当然の反応だと言うことができます。
その上で、未来の不安にどう向き合っていくか。
ここで自信を感じるためのポイントは、「今」に集中することです。
つまり「未来」を考えないこと。
未来の結果を考えている限り、常にそこには不安があります。
ついつい「もしも間に合わなかったら・・・」などという思考に陥りがちですから、自分についてよい感じ方をすることは難しいものです。
「未来のことを考えなかったら、今、何をやっていいかわからない」という人もいるかもしれませんね。
もちろん、「仕事の全体を見る」という意味では未来のことを考える必要があるのですが、重要なのは「未来はどうなるだろう」という結果にとらわれないこと。
それよりも、だいたいの計画を立てたら、「今、手をつけること」を決めましょう。
「仕事の仕上がり」という大きな山を無力にみているのではなく、「今踏み出せる一歩」をみつけるのです。
よく、「やるべきことを書き出してみよう」などといわれますが、これも目標をできるだけ細分化するために役立ちます。
目標はできるだけ小さく設定した方が手をつけやすくなります。
そして、小さな目標に向かうほど、「今」に集中することができます。
「今」に集中して仕事をすれば、仕事をしている最中にも「自分についてのよい感じ方」を維持することができます。
そしておそらく、その日の仕事を終えた後には達成感も得られるかもしれません。
達成感は「DOの自信」と同時に、「自分についてのよい感じ方」ももたらしますから、自信をさらにかんじられるでしょう。
納期に間に合わず、自分についての感じ方も最悪、などという事態は、まず避けることができるはずです。
ポイント:納期までの目標を細かく設定すると、「今」に集中できる