がんばりすぎない人生プラン

仕事を背負い込まない生活づくり

自分を受け入れ、そのままの自分を評価して自尊心を高くもてれば、上手に時間を管理して釣り合いのとれた生活を送ることは、以前ほど難しくなくなるだろう。

とはいえ、まだ簡単ではないかもしれない。

とくに自分がなにをすべきか決まっていない人や、生活に必要なのは善意と自発性だとずっと思い込んできた人はそうだろう。

いい人でいれば、生活は自然にうまくいくと信じている人はかなり多い。

そういう人が仕事を背負い込み、燃え尽き症候群に陥るのは、計画性がないためかもしれない。

そうだとしたら、人生設計はぜいたくでも余分なことでもない。

必要不可欠なサバイバル術だ。

もちろん、人生は時間管理だけではない。

だが自分の生活を管理できないと、今の世の中で生きていくための生活のバランスがとれないだろう。

バランスには二つの面があるがどちらも自転車にたとえて説明できる。

まず倒れないで走るためには、右にも左にも傾きすぎないようにハンドルを操らなくてはならない。

人生にもさまざまな両極端があって、理性的と感情的、多すぎと少なすぎ、早すぎと遅すぎ、保守的と革新的、慎重と軽率、重大なこととささいなこと、暑すぎと寒すぎ、強すぎと弱すぎなど、あげればきりがない。

バランスを保つためには、この両極端のどちらかに片寄りすぎるのではなく、両方をあわせもって、その中間を生きる必要がある。

どちらかに片寄ればバランスを崩し、倒れてしまう。

バランスのもう一つの側面は、自転車に乗った曲芸師を想像すればわかりやすい。

ハンドルから手を離し、重さも大きさもつくりも違ういろいろな物を空中に投げたと想像しよう。

その一つひとつは、費やされる時間もエネルギーも違う日々の活動だと思えばいい。

歯磨き、通勤、食事、仕事、休息、植物の世話、読書、ニュースを見る、支払いをする、セックスをするなど。

自分にとっての重要度に応じて、それぞれの活動に必要な注意を向け、時間とエネルギーを費やす。

私たちの生活は、カーブや坂のあるがたがた道を、自転車に乗り、バナナや風船やボウリングの玉をお手玉のように操りながら走るようなものだ。

曲がり角をいくらうまく曲がり、落とし穴をいくら上手に避けても、ときにはバランスを崩してボールやバナナを落としたり、自転車から転げ落ちることは誰にでもある。

でも幸いなことに、私たちは起き上がり、できるだけ早くバランスを取り戻そうと、また一生懸命自転車をこぎだせる。

要は、ときにはバランスを崩しても、基本的なバランスを保ちながら、毎日、何週間も何カ月も生活することだ。

それにはまず、人間として基本的に必要なこと―家族や友達も含めて―にきちんと対処しよう。

遊び、仕事、創造的表現、身体的・精神的な休息、楽しみ、みんなの幸せに役立つこと、運動、情報、知恵、計画などに力を注ぐのだ。

これらの基本的ニーズを満たせれば、釣り合いのとれた生活の基盤がしっかり築ける。

もちろん、現代生活に欠かせない日常的な事柄にも対処しなければならない。

銀行に行く、生活必需品を買う、美容院に行く、車の手入れをする、人に親切にするなど、これもあげればきりがない。

がんばりすぎを防ぐ計画の立て方

人間として基本的に必要なことと日常的なこと、どちらの要素もバランスよく実践する秘訣が三つある。

要は人生設計をできるだけし、目的もなく時間をむだに過ごしたり、世間が投げてよこすものを片っぱしから打ち返すだけの生活をしないことだ。

人生に、めざす価値のある長期目標を立てる

最終的にどういう人生にしたいかを決める。

まず、自分がいちばんやりたいことを見つけ、それを人生の中に位置づける。

いちばんやりたいことは、いちばん楽しいことだ。

人生のよりどころ、力、目標でもある。

エンジンをスタートさせ、最優先事項を追求する原動力になる。

いちばんやりたいことを、仕事にできる人は幸運だ。

好きなことと、生活の糧を稼ぐ道とが一致しているのだから。

そうでない人は、それほど生きがいを感じる仕事でなくてもがまんし、生きる目的を別にもつことになる。

たとえば、生活を豊かにする、生活を楽しむ、ボランティア活動をする、あるいは世間に認められることをしようと努力するなど。

いちばんの情熱を何に向けようと、それがみんなの幸せに役立ち、社会をよりよくするかぎり、人生に生きがいと方向性を与えてくれる。

具体的に目標を立てる

いちばんやりたいことに向かって進むためには、一生を視野に入れた具体的な目標が必要だ。

ある人からこんな真理を聞いたことがある。

目標をもたないで進むと、行きたくないところに行ってしまい、残念な結果になるだろう。

ただ時間を無駄に使い、つまらない人生を送ることになるかもしれない。

長期的な目標がないと、人生の焦点がぼやけ、バランスも崩れ、今の自分の生活がこれでいいかどうかの判断基準ももてない。

自分が歩んでいる道に自信がもてず、そのために物事の優先順位もあやふやになり、がんばりすぎにもなる。

いい人たちはしばしば、過去を振り返って悔やむ癖がある。

私たちには、「ほんとうの自分としての生き方」に必要なことを実行する責任も力もあるのだから、そのチャンスを生かそう。

人には、自分のいちばんの関心事を追求する責任があるのだ。

別の言い方をすれば、私たちは、こういう人間になると決めた人間になっていくから、しっかりした価値観をもたなければならない。

ときどき立ち止まって自問自答してみよう。

私の本当の価値は?それをいちばんよく表現する方法は?残りの人生で何をする必要があり、何をしたいのか?

どれだけできるか、と問うのではなく、今、自分は現実的で希望のあることを追求しているか、と問おう。

人生は短く、むだに過ごしがちだが、これらの質問に正直に答えることで、人生に限りがあるという現実を受け入れ、これまでになく生き生きと生きられるようになるだろう。

いちばんやりたいことを実現するには、まず、それにふさわしい、自分が満足する将来を思い描くことが重要だ。

それに照らして目標を設定し、エネルギーを蓄えてそれに向かって進み、ときどき進み具合をチェックする。

その未来や目標が具体的であればあるほど、物事の優先順位もはっきりし、がんばりすぎも避けられる。

たしかに、未来はいつも幻だ。

手にすることのできない未来は、その意味ではけっして現実ではない。

さらに人生があと何年あるか自分では決められないし、明日のことさえわからない。

だから将来のことなど考えず、今に生き、その日のことしか考えないのだという話をよく聞く。

しかしここで言いたいのは、未来に生きることでも、しかるべき未来になるということでもない。

これなら望ましいという未来を思い描き、それによって今、この時点で、希望をもとうという意味なのだ。

希望とは、現実的で満足できる未来図を描いたときにわいてくるプラスのエネルギーのことだ。

完璧な未来図である必要はない。

今日、この日に立ち向かう力を与えてくれる程度であれば、それでよい。

ビジョンや目標は、現実になるのはずっと先でも、毎日の生活に方向性とエネルギーを与えてくれる。

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人生プランを立てる

人生の目標を立てる用意ができたら、次に必要なのは人生プランだ。

骨組みとして保険会社の表を使うといい。

不測の事態がないとして、自分があと何年生きるか考える。

専門家は、女性の平均寿命は約八十五年、男性は約八十年だという。

これに、各自の健康状態、習慣、体型、考え方、物の見方の広さ、家族の病歴、緊急の場合のサポート、経済状態、退職の見通し、住んでいる場所の気候や地形、その他、寿命に影響を及ぼすと思われるプラス、マイナス両方の要素を加味して自分の寿命を算出しよう。

次に、人生で大事だと思う項目を選ぶ。

家族、友達、収入、仕事、住宅、地域社会への奉仕、レクリエーション、教育、旅行、退職時期、趣味などだ。

そしたら、ノートを用意し、文頭にこれらの項目名を入れたページを、各項目ごとに何枚かつくる。

仮に余命を三十五年と設定したとしよう。

各項目の最初のページに今日の日付を記入し、「今年」と書く。

次のページに二~五年後、その次のページに五~十年後・・・というようにつくっていくと、できあがったノートは、あなたの人生を項目の最期の時間的区切りのページに、人生の最期の時期に、この分野で何を経験したいか、あるいは達成したいかを書き込む。

ここに記入したことが、広い視野で見た人生の長期目標だ。

それぞれの項目について最善をつくして同じ作業をしたら、その前のページを開ける。

この分野の最終目標を必ず達成しようと思ったら、この時期に何をする必要があるかを書き込む。

これを、それぞれの項目で行う。

こうしてそれぞれの項目で、現在に向かって前へ前へとページをめくりながら、最終目標を達成するためには、それぞれの時期に何をする必要があるかを考えて記入していく。

それがすんだら、全項目の目標を見比べ、何にいちばん関心やエネルギーや時間、お金を注ぎたいかを考えて優先順位をつける。

お金がかかる目標に対しては貯蓄計画を立て、いつなら資金が準備できるか特定する。

たとえば旅行の項目で、ヒマラヤ登山、カナダのルイーズ湖への列車の旅、パリのルーブル美術館見学、毎年一月にマウイ島あるいはマイアミへ逃避する、インドのタージ・マハルの前に立つ、あるいは、サハラ砂漠の中心を探すなどを考えたとしたら、旅行のページに、すべてを推定予算とともに書き込む。

そして、自分にとっての価値を考えてみる。

あまりにも空想的だったり、経済的に絶対無理だと思ったら削除し、忘れてしまおう(あまりのも非現実的な計画は負担を重くし、結局、実現できずに悔やむことになる。これはそういうことを避けるための作業なのに!)。

残った旅行案の費用を収入やほかの分野で必要な費用と比べ、残しておく価値がないと思ったらそれも削除する。

選ばれた旅行を、実施したい時期のところに記入し、それまでにいくらずつためる必要があるか、各ページに記入する。

もし、タージ・マハルをどうしても見たいが、費用が高くて簡単にたまらないなら、時期をずらし、時間をかけなければならない。

もし、今年、預金できないと思ったら、いつから始められるかを考え、それに合わせて貯蓄計画を調整しよう。

重要なのは、具体的な長期目標を立て、それを実現しようと思うことで、現時点での生き方が変わるということだ。

紙に書くことで目標が見えてきて、人生に意図的な方向性が加わり、優先順位の低い事柄に時間と費やさなくなる。

もちろん、目標はいつでも変えられるが、いずれにしろ目標を設定し、それを自分の目の前にはっきり見えるようにおくことで、現在の活動を評価し、自分が描いた未来の役には立たない事柄を排除できるようになる。

言うまでもなく、何もかも思い通りにはいかないが、めざす価値のある目標を設定し、実現可能な計画を立てることで、人生の重要な側面を管理できる。

このような長期計画をもつと、現在の生活のバランスをとり、目標なし状態、がんばりすぎ、燃え尽き症候群を防げるのだ。

まとめ

仕事などで燃え尽きてしまう人は計画性がないのである。それを解消するには人間として基本的なことをきちんと対処することだ。

最終的にどういった人生にしたいか考えることは大切だ。

一度きりの人生で一番楽しいことは何かを考えることである。

目標を持たないで進むと後々失敗する可能性がある。それに対し、描いた未来像に近づいて行くことで希望のエネルギーが与えられる。

人生プランを紙に書くことで余分な行動はしないようになる。